すべてのランナーが知っておくべきランニングと血栓症の関係

10月13日は世界血栓症デーということで、スカイツリータウンで行われたバイエル薬品主催のイベントに行ってきました。血栓症は生活習慣病によって発症しやすいことから、ランナーには関係ない病気と思われがちですが、実はマラソンとは無関係とは言えない病気でもあります。

今回は少し専門的な話になりますが、血栓症防止を目的に掲げたイベントで学んだこと、そしてランナーとして気をつけるべきことについてお話しします。とても大切なことですので、難しい話ですが、最後まで目を通してください。

目次

血栓症って何?

それではまず、血栓症がどのような病気なのか説明します。血栓症は何らかの原因で血栓と呼ばれる血のかたまりが血管中にできて、血管を詰まらせてしまう病気です。血管が詰まるとその先に血液を送れなくなりますので、様々な症状を引き起こします。

●エコノミークラス症候群
●脳梗塞
●心筋梗塞、狭心症

これらが血栓症で見られる代表的な症状で、血栓が足や肺の血管で詰まるとエコノミークラス症候群になり、心臓の血管の場合は心筋梗塞や狭心症、そして脳の血管の場合は脳梗塞を引き起こします。

もし血栓症が起きて、そのまま放置していると2時間で死に至るとされています。ただし、適切な対応ができれば、多くのケースで命を救えるような環境も整いつつあります。

このため、心臓や肺が苦しいと感じたら、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

また、発症した後の対応も重要なのですが、もっと重要なのが発症させないための予防です。ポイントは「適切な運動」と「十分な給水」です。そういう意味ではランニングというのは血栓症予防に効果的だとされています。

ところが、一歩間違えるとランニングが血栓症を引き起こすこともあります。勘のいい人はどういうことなのか気づいているかと思いますが、ランニングと血栓症にどのような関係があるのか、次章で詳しく説明します。

ランニングと血栓症の関係

血栓症がどういうものか分かってもらえたかと思いますが、知れば知るほどランナーには関係なさそうですよね。

でも、マラソンでは毎年多くの人が心筋梗塞で亡くなっています。もう記憶から消えかけているかもしれませんが、タレントの松村邦彦さんが東京マラソンを走っているときに心筋梗塞で倒れました。

彼は肥満だったということもありますが、過去にフルマラソンの完走経験もあるランナーです。そんなランナーでも血栓症のひとつである、心筋梗塞になってしまいます。

なぜ、マラソンのようなゆっくり走るスポーツで心筋梗塞が起こるのでしょう?松村邦彦さんだから起こったことなのでしょうか?

いろいろ疑問があると思いますが、血栓症はすべてのランナーに起こりうる可能性があります。症状として出ていないだけで、かなり際どい状態になっているランナーさんもいます。

それではなぜ健康であるはずのランナーがレース中に血栓症を起こすのでしょう。その理由は3つ考えられます。

●脱水状態
●動脈硬化
●ラストスパート

これだけでは何のことか分からないかと思いますので、それぞれの理由について、詳しく説明していきます。

脱水状態

マラソンを走ると極度の脱水状態になることがあります。体内の水分が減ると血液内の水分も減ってしまいます。そうなると血液の粘度が上がり、血栓ができやすい状態になってしまいます。さらには血管も詰まりやすくなります。

マラソン大会なら給水所がありますので、きちんと水分を摂っていれば問題ないのですが、普段の練習で給水を意識していない場合には、練習中に血栓症を起こしてしまう可能性があります。

動脈硬化

動脈硬化は血管の老化で、加齢とともに血管のしなやかさが失われていくことによって起こります。ただし、加齢だけでなく小型LDLコレステロールの摂取や、肥満などの生活習慣病によっても起こるとされています。

毎日運動をしている人なら動脈硬化になる確率は低いのですが、高齢になってくると血管の老化は避けられません。血管のしなやかさが失われると血栓が詰まりやすくなり、血栓症を引き起こします。

もちろん運動不足の人であれば動脈硬化になっている可能性は高く、小さな血栓でも血管を詰まらせてしまいます。動脈硬化だけで血栓症になるわけではありませんが、脱水状態と合わさると発症リスクがかなり高くなります。

ラストスパート

血液を体中に送っているのは心臓ですが、実はランニング中には筋肉も血液を送る役割を果たしています。特にスピードを上げて走るときには、心臓の動きだけでは血流が足りないため、足の筋肉を使って体の隅々にまで酸素を送っています。

ところが、ラストスパートをしてゴールしたら、そこで動くのを止めるので、筋肉が血液を送らなくなってしまいます。そうなると心臓の負担が一気に大きくなり、さらには十分な量の酸素を送れなくなってしまいます。

このケースでは血栓症ではなく、心臓の負担が大きくなって倒れる危険性のほうが高いのですが、酸素が足りなくなるという点では血栓症と同じ症状を引き起こしますので、気をつける必要があります。

ランナーが気をつけるポイント

ランニングは適度な負荷で行えば血栓症にはならないものの、フルマラソンはどんなランナーにも負担が大きく、どうしても血栓症のリスクから完全に逃げることはできません。

でも、いくつかのポイントを意識することで、発症リスクを大幅に減らせます。ランナーとして気をつけたいポイントについて、最後にご紹介しておきます。

給水はこまめに行う

言うまでもないことかもしれませんが、練習でもレースでも給水はこまめに行なってください。特にフルマラソンでは、エイドでのロスタイムを嫌って給水しない人もいますが、基本的にはすべてのエイドで1口分の水分を摂りましょう。

血栓症予防というだけでなく、パフォーマンスを下げないためにも必要です。飲むのはできるだけスポーツドリンクにしてください。血栓症予防だけなら水でもいいのですが、体にかかる負担を少しでも減らすために、塩分補給のできるスポーツドリンクを飲んでください。

ちなみに、普段から水は1日1.5リットルくらい飲む必要があります。ランナーの場合はさらに多くの水分が必要ですので、日頃から体が水不足にならないように気をつけましょう。

スピードを出した後はすぐに止まらない

ラストスパートの危険性をお伝えしましたが、あと少しで自己ベスト更新になったり、関門に引っかかりそうになったりしたら、どうしても必要以上にスピードを上げてしまいますよね。そういうときに、すぐに止まらないようにしましょう。

できれば、息が整うまでゆっくりとスピードを落としながら走り続けるようにしましょう。そうすることで体が酸素不足になることを防げます。血栓症のリスクだけでなく、疲労回復を促すためにも重要なポイントです。

スピード練習をするときにも同様で、全力に近いスピードを出したときには、すぐに止まらないでジョグや屈伸などをして、心臓の負担を減らしましょう。

体に異変を感じたら病院で診てもらう

もっとも重要なのは自分の体を知っておくということです。血栓症はいきなり起きるように感じるかもしれませんが、血栓ができやすい状態にある人は、実はその兆候がすでに出ていることがほとんどです。

●足がむくみやすい
●呼吸困難になる
●胸が痛くなる

こういう症状を感じたら、必ず病院で診てもらいましょう。大げさと思うかもしれませんが、この段階でちゃんと診察を受けていることで、血栓症リスクがかなり下がります。

血栓症はそれほど頻繁に起こる病気ではありませんし、ランナーは「自分は運動をしているから大丈夫」と思いがちで、上記のような症状が出ても、一時的なものだと思って何もしないでいることがよくあります。

マラソンは思った以上に体に負荷のかかるスポーツで、毎年何人もの人が血栓症でレース中や練習中に倒れています。自分だけは大丈夫だと思わずに、ランナーだからこそ危険があると考えて、体に異変を感じたら、必ず病院で診てもらいましょう。

血栓症は他人事ではありません

ランニングと血栓症の関係についてご紹介しましたが、ここまで読んでもやっぱり他人事のように思えてしまうのが血栓症の怖いところです。確かに発症率はそれほど高くありませんが、ゼロではありません。

誰にでも起こる可能性があるわけで、でもきちんと予防をしておけばリスクをかなり下げることができる病気でもあります。

いずれもそれほど難しい予防方法ではなかったかと思います。どんなときでも水分はこまめに摂り、負荷をかけて走った後はいきなり止まらない。この2点をしっかりと意識して、なおかつ日常生活でおかしいなと思ったらすぐに病院に行きましょう。

四六時中ずっと血栓症について考える必要はありませんが、まずはそのリスクを知り、そして予防を習慣化しておくようにしてください。それで守られる命があるということを頭に入れてランニングを楽しんでください。

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