ランナーの多くが、お正月は箱根駅伝の中継に夢中になったのではないでしょうか。私は9区から10区への中継のシーンだけを見ましたが、そのシーンを見ながら気になった点がありました。
それは襷をつないだ後に、崩れるように倒れる選手が何人もいたことです。全力で走りきった証拠と思うかもしれませんが、それでは倒れ込まずに動くことを止めなかった選手は全力ではなかったのでしょうか?
箱根駅伝のような人生を賭けているレースなら、そういう状況になってもおかしくはありませんが、少なくとも私たち市民ランナーは絶対にそのような状態になってはいけません。
ゴール直後に倒れ込むというのは、ランナーにとってひとつもメリットはありません。それどころか、非常に危険な状態を引き起こします。
なぜゴール直後に倒れ込んではいけないのか。その理由について説明していきますんで、これからフルマラソンを走るというランナーさんや、レース後にすぐに座り込むことが癖になっているランナーさんは、理由をしっかり頭に入れておいてください。
転倒してケガをしてしまう
ゴール後に倒れ込んでしまうレベルの選手の多くが薄着です。足も腕もむき出しになっていますので、転倒したら単純にケガをします。ランナーは上半身に筋肉が少ないので、骨折することもあります。
箱根駅伝では倒れそうになった選手が、必死に芝生がある場所にまで体を持っていってから倒れました。倒れること自体は褒められたことではありませんが、きちんと体を守ったことは賢いなと感じました。
アスファルトはかなり硬く、42kmを走った体はかなり弱っている状態です。そんなところで転倒をして大丈夫なわけがありません。すり傷だけならまだいいのですが、それでも体の回復を遅らせる原因にもなります。
さらに、後続のランナーには邪魔になってしまいます。十分なスペースがあればまだいいのですが、昨年の横浜マラソンのようにゴールの先で大渋滞しているところで倒れると、その場がさらに混乱してしまいます。
間違って踏んづけてしまった人が、捻挫をする可能性だってあります。
いずれにしても、ゴール直後のスペースは決して安全なエリアではありません。市民ランナーがラストスパートしたところで記録は1分も変わりません。そこで絞り出しても対して結果は変わりませんので、余力を残してゴールエリアから速やかに離れましょう。
急な停止は心臓に負担がかかる
転倒して怪我をするくらいなら「痛い」で済みますが、実はもっと大きなリスクがゴール後の倒れ込みにはあります。
ランニングをしているとき、体に血液を送り出しているのは心臓だけだと思われていますが、実際にはふくらはぎなどの筋肉も使って血流を高めています。ふくらはぎは第2の心臓とも言われていますが、ランニングの動きに合わせて血液を送り返しているわけです。
なのに走り終えたときに、倒れ込んだらどうなるかは容易に想像できますよね。
ふくらはぎはポンプの役割を果たせなくなり、血液を送り出すことを止めてしまいます。そうなると、心臓が血液循環のすべてを負うことになりますが、いきなり高い負荷が心臓にかかりますので、心不全などを引き起こす可能性もあります。
これがゴール直後の倒れ込みをしてはいけない、最大の理由になります。
箱根駅伝に出ている選手などは、トレーニングによって心臓がかなり強い状態にあるので、倒れても心不全を起こすようなことはないのかもしれませんが、少なくとも私たち市民ランナーにとっては危険極まりない行為です。
全力を出し切って倒れ込むというのは、すべて出しきった美しい行為に見えますが、実際には命にかかわる危険なことだということを、理解してもらえたかと思います。
ゴール後は止まらずにそのまま1kmゆっくり走る
理想だけを言えば、ゴールしたあとには1kmくらいをそのままジョグのペースで走り続けてください。実際には、完走メダルやタオルの配布、チップの回収などがありますので、どこかで立ち止まる必要がありますが、それでも動き続けることを意識しましょう。
それだけで、心臓への負担はずいぶんと軽くなります。心臓への負担が軽くなれば、それだけ回復も早くなります。体の隅々に血液を送り込むことができるため、レース直後に気持ちが悪くなることも減るはずです。
レース後に何も食べられなくなってしまう人もいるかと思いますが、全力を出し切った後に急に止まっていることでその症状を招いているケースもあります。レース中は内臓に血液が流れにくくなっているので、一刻も早く血液を戻してあげる必要があります。
ところが、倒れ込んだり座り込んだら、心臓だけしか血液を送り出せません。それですと内臓に血液を戻すことができません。結果的に内臓疲労が発生してレース後の打ち上げにも行けなくなってしまいます。
ゴール後に走り続けることは自分を守ることでもあります。もし、ランナーとして長く走り続けたいのであれば、箱根駅伝の選手のように倒れ込むのではなく、少し余裕を持ってゴールをして、そのまま1kmのクールダウンを行いましょう。