スポーツブランドのアンダーアーマーの日本代理店である株式会社ドームは、スポーツアイテムの販売を手掛けるだけでなく、スポーツを通じて社会がよりよい方向に向かうように、さまざまな活動をしています。先日開催された「UA MISSION RUN」もそんな活動のひとつになります。
「UA MISSION RUN」は「走ること」に対して悩んでいる学生アスリートの中から選ばれた3名に、スプリントコーチの秋本真吾氏が指導する全3回の企画で、先日その1回目が開催されました。その1回目を取材する機会をいただけましたので、コラム形式でその内容やアンダーアーマーの考え方などをご紹介していきます。
UA MISSION RUNとは
まずは「UA MISSION RUN」について説明しておきましょう。
アンダーアーマーには「UAリワードメンバー」という会員プログラムがあります。会員になると買い物やトレーニングイベントへの参加でポイントが付与されたり、メンバー限定イベントに参加できるようになったりするだけでなく、購入金額の1%を「1% FOR THE ATHLETES」として、スポーツの普及・発展に役立ててもらえます。
「UA MISSION RUN」はこの「1% FOR THE ATHLETES」の取り組みのひとつになります。具体的には「走る」ことに対して悩んでいる学生アスリートを募集し、選ばれたメンバーに対して、スプリントコーチである秋本真吾氏が指導するというものになります。
参加者は「UA MISSION RUN」に参加することで、あらゆるスポーツの基本となる「走る」という動作をスムーズに行えるようになり、それぞれの競技において高いパフォーマンスを発揮できるようになることを目指します。
1% FOR THE ATHLETES
https://www.underarmour.co.jp/feature/1-for-the-athletes/
まずは「速く走る」というのはどういうことかの説明から
第1回目となる「UA MISSION RUN」で行われたことは、「速く走る」について理論的に説明し、それを実現するために、何をすればいいのかについて指導がありました。アスリートにとってあたり前の「走る」という動作ですが、トップレベルのアスリートであっても感覚で走っていることが多々あります。
まずはこの「感覚」の部分を、理屈や理論に置き換えていく作業から始まります。私たちランナーでも、走り方は自己流の人が少なくありませんが、学生アスリートでも陸上競技の選手でもないかぎり、どうすれば速く走れるようになるのかその理屈までは把握していません。
むしろ足の速さは天性のモノという認識も頭のどこかにあり、おそらくトレーニング前の段階では、自分が速く走れるようになると信じきれていないところもあったはずです。だからこそトレーニングを始める前に、まずは速く走るイメージをしっかり持ってもらうことから始めるわけです。
せっかくなのでこのコラムを読んでいる方にも、速く走るために何が必要なのかについて、シェアしておきましょう。秋本真吾氏が説明したのが下記3つのポイントになります。
- 姿勢:正しい姿勢で走る
- 歩幅:ストライドを伸ばす
- 回転:回転数を上げる
まず大前提なのが正しい姿勢で走るということです。これはマラソンでも同じことですね。そして歩幅を伸ばすこと、回転を上げることがすべてだと秋本氏は説明していました。シリアスランナーの方ですと「そんなこと知っている」と思うかもしれませんが、知っているのと出来ているのは違います。
そしてどうすれば歩幅が伸びるのか、どうすれば回転が上がるのか、理論的に把握している人は多くありません。だからほとんどのランナーが、速く走ろうとすると前傾姿勢になってしまったり、歩幅を伸ばそうとすると踵着地になってしまったりします。
「UA MISSION RUN」では、秋本氏の経験やノウハウを元に「どうあるべきか」を示し、理想に近づくために理論的に何をすればいいのかを具体的に提示してもらえるので、吸収力の早い学生アスリートはその場で修正し、自分の走りをどんどん変えていきます。
繰り返すことと映像を確認することの大切さを伝える
「UA MISSION RUN」のトレーニングで面白いと感じたのは、何度も動画で走り方の撮影を行い、それを自分の目で確認して、再度走ってみるということを繰り返していた点です。すでにお伝えしましたように、アスリートの多くが「感覚」に頼って走っています。
だから「前傾姿勢にならないように、体をまっすぐに立てて」とアドバイスしても、自分なりの「まっすぐ」にしかなりません。実際に今回の参加メンバーの中には前傾姿勢が体に染み付いていて、「これまでにないくらい体を反った」つもりで、ようやく前傾のない理想の姿勢になった人もいました。
これを読んでいるランナーの方にも実践してもらいたいのですが、スマホを使って自分の走りを撮影してみてください。そして動画をスロー再生し、客観的に自分の走りがどうなっているか、どんなクセがあるのかを把握しましょう。それを認識しないことには修正もできません。
正しい動きを覚えたら、それを何度も何度も繰り返す必要があります。「UA MISSION RUN」で教えているのは「技術」であり、技術は繰り返さないと身につきません。逆に言えば、正しくない動きを繰り返していると、それが身に付き、結果的に効率の悪い走りになってしまうわけです。
また、技術も大事だけど土台づくりも大事であることも、トレーニングの間で何度も説明されていました。いくら技術があっても、土台となる筋肉ができていなければパフォーマンスが上がりません。そしてどの土台をつくるのには長い時間がかかることも伝えていました。
ちなみに土台を作るうえでおすすめなのは「縄跳び」だそうです。歩幅を広げるのに大事なのは足のバネ(アキレス腱)で、そのバネを強化するのに縄跳びが最適とのこと。スピードが出ない、ストライドが伸びないという課題を持っているランナーの方は、毎日の練習の中に縄跳びを入れてみてください。
アンダーアーマーがサポートしたアスリートが社会で活躍する未来
今回とても興味深かったのは、時間が経過するごとに3名の学生アスリートの目が変わってきたことでした。最初は何をするのだろうという不安や、自分が速くなることへの疑問もあったのか、どことなく迷いを感じられる目をしていました。
ところがレッスンが進むにつれて、明らかに自分の走りに変化が現れているのを感じたことで、その目が真剣になり、秋本氏の言葉をひと言も聞き逃さないように集中していくのが、周りで見ていて伝わってきました。きっとそれぞれに、トレーニングをしながら成功する未来を思い浮かべたことでしょう。
同じように学生時代に真剣に競技と向き合っていた身としては、ただただ羨ましくもありました。こんな経験を学生時代にできたら、自分の未来は違ったものになっていたのでは?そんなタラレバが頭を浮かぶほどに、技術的にも精神的にも大きく成長していったわけです。しかもトレーニングはあと2回も残っています。
そしてこれからも継続して「UA MISSION RUN」が開催されるなら、もっと多くのアスリートが自信を持ってそれぞれの競技と向き合えるようになるはずです。その中には世界で活躍するアスリートも出てくるかもしれません。
もしアスリートとしての未来を掴めなかったとしても、「UA MISSION RUN」での経験は大きな財産になります。「速く走る」ために繰り返されるトライアンドエラーは、そのまま何かを学ぶときのスタンスとして活用できます。それに参加者が来づければ、どの分野に進むにしても間違いなく社会に出てから活躍することになるはずです。
もちろん3名がそれぞれのフィールドで活躍することも期待していますが、それ以上に期待するのが「UA MISSION RUN」の活動がさらに広がっていくことです。スポーツにはもっと大きな可能性がある。それを強く感じたからこそ、「UA MISSION RUN」の今後の展開にとても期待せずにはいられません。