春のマラソンシーズンが終わると、しばらくランオフにしてしまうランナーの方も多いはず。シーズン中にしっかりと追い込むようなレースをした人は1ヶ月くらいのオフを設けて、リカバリーさせることを優先してもらいたいのですが、まだ走り足りないと感じている人はハーフマラソンを走ってみてはいかがでしょう。
ハーフマラソンの距離じゃ満足できないと思うかもしれませんが、実はハーフマラソンは思っている以上に奥深い種目で、走れば走るほどハマっていく種目でもあります。そこでここでは、ハーフマラソンの魅力や攻略するためのポイントなどを詳しく解説しています。
ハーフマラソンをおすすめする5つの理由
まずはハーフマラソンの魅力がどこにあるのかについてお伝えします。RUNNING STREET 365でハーフマラソンをおすすめする理由は下記の5つになります。
ハーフマラソンをおすすめする理由
- フルマラソンよりも疲労が残りにくい
- 観光もグルメも全部楽しめる
- 走力に不安があっても最後まで走りきれる
- 小さな大会が多く近所で参加しやすい
- 知識やノウハウ、経験を活かしやすい
それぞれの理由について詳しく解説しています。
フルマラソンよりも疲労が残りにくい
フルマラソンはトップレベルのランナーでも、初心者ランナーでも完走したあとに大きな疲労を抱えることになります。高い負荷をかけて走り続けた場合、1ヶ月は休養期間に充てなくてはいけなくなりますので、その期間は当然のことながら走力が落ちます。
走力が落ちるのを嫌って練習を入れる人もいますが、その場合は故障リスクが高まり、ランナー寿命が短くなってしまいます。でもハーフマラソンの場合にはそこまでの疲労はなく、人によっては翌日からまた練習を再開できます。もちろん追い込む練習は2週間くらいやめておくべきですが、ジョグなら問題なく出来ます。
このようにハーフマラソンは疲労が残りにくいので、安定して練習を積み重ねることができます。これこそがハーフマラソン最大の魅力です。
観光もグルメも全部楽しめる
最初の理由と少し内容が重なりますが、ハーフマラソンは疲労の蓄積だけでなく、その日の疲労感もフルマラソンと比べるとかなり軽く、フルマラソンを走ったあとは食欲もなくなるという人でも、ハーフマラソンのあとにはきちんとお腹が空いてきます。
フルマラソンで遠征して後泊もしたのに、レース後に観光もグルメも楽しめなかったという経験をした人もいるかと思いますが、ハーフマラソンであればそのような状態になる可能性が低く、しかもレース時間も短いので、たっぷりと観光もグルメも満喫できます。
走力に不安があっても最後まで走りきれる
30kmの壁という言葉がありますように、フルマラソンはかなりの練習を積んでこないと、30km以降に失速し、残り数キロは歩いてなんとかゴールするなんてことがよくあります。でも、ハーフマラソンの場合には、その壁が来る前にレースが終わるので、走力に不安がある人でも最後まで走りきることができます。
ただし、走力がある人は反対にオーバーペースになりやすく、最後は失速してしまうこともあります。そのあたりについては、後ほど「レース戦略」の項目で詳しく解説していきます。いずれにしても21kmちょっとの距離ですので、普段の練習で10kmくらい走れていれば、大抵の人が完走できるのもハーフマラソンの魅力です。
小さな大会が多く近所で参加しやすい
あまり知られていませんが、ハーフマラソンは河川敷などで定期的に開催している大会がいくつもあり、関東エリアであれば、ほぼ毎週のようにどこかでハーフマラソンを走ることができます。しかもそのような小さな大会は参加費が安く、気軽に出られるといった魅力があります。
気軽に出られるということは、何度も出場できるということを意味し、トライアンドエラーをしやすいといったメリットもあります。フルマラソンを全力で挑めるのは年間で2回がいいところなので、反省を次に活かすのが難しいのですが、ハーフマラソンならこまめに軌道修正ができ、理想の自分に近づきやすいといったメリットがあります。
知識やノウハウ、経験を活かしやすい
5kmや10kmは走力の高さで乗り切ることができますが、フルマラソンは走力だけでなく知識やノウハウ、経験も求められます。ただ走力が足りないと知識やノウハウ、経験を活かすことができません。もちろん反対もしかりで、とにかく高いレベルでそれらを求められます。
でもハーフマラソンは圧倒的な走力が必要なわけでもなく、それでいて知識やノウハウ、経験を活用することで自分のポテンシャルを100%引き出すことが出来ます。ただ走ればいいというわけでなく、知的な部分もレースタイムに影響するので、上手に走れたときの満足度が高いのもハーフマラソンをおすすめする理由になります。
ハーフマラソンを攻略するためのトレーニング
ハーフマラソンの魅力やメリットを把握できたところで、次はハーフマラソンを攻略するためのトレーニングについて解説していきます。
ハーフマラソンを攻略するためのトレーニングのポイント
- まずは21kmを走れる体力をつける
- 練習回数は1週間に3〜4回
- 1週間に1〜2回の筋トレセッションを実施する
- 記録を狙いたいならインターバルトレーニングを入れる
- 練習をした日は1時間多く寝る
ハーフマラソンだからといって特別な練習があるわけではありません。まずは走れる体をつくること、そこにスピードに対応できるように筋力や心肺機能を向上させる流れになります。そのうえで上記のポイントをしっかりと頭に入れておいてください。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
まずは21kmを走れる体力をつける
どの距離を走る場合でも、まずは走れる体になるための土台づくりがとても重要になります。ここでやるべきことはとにかく距離を積み上げることになります。どこを目指すのかによって積み上げる距離は異なりますが、本当の意味での走れる体をつくりたいなら、理想は1週間で160kmです。
もちろんいきなりそんな距離を走る必要はありません。あくまでも自分のポテンシャルを100%引き出すための距離がそれで、1時間10分台で走りたいとかでなければ、そこまで走る必要はありません。ただ、走り込んだ距離がそのままタイムに繋がるということだけは頭に入れておきましょう。
練習回数は1週間に3〜4回
1週間で160km走ろうと思うと、1日23kmを毎日走る必要があります。繰り返しますがこれは理想であり、しかも最初からそんな距離を走れる人はいません。ですので、ハーフマラソンを気持ちよく走り切るレベルという意味では、練習回数は1週間に3〜4回でOK。1回のトレーニングは10kmくらいが目安になります。
ハーフマラソンを走るなら20km走とかも必要では?と思うかもしれませんが、10kmを苦しむことなくイーブンペースで走れるようになったら、ハーフマラソンの距離も歩かずに走り切れます。もちろん余裕があるなら長い距離を走っても構いませんが、無理に長い距離を走らなくても構いません。
1週間に1〜2回の筋トレセッションを実施する
カラダづくりの期間中は走るだけでなく、筋トレも実施してください。下半身の筋トレをすることで、走りが安定するだけでなく、出力が上がるのでナチュラルなスピードも上がります。筋トレメニューは何でも構いませんが、手軽にできるのは下記の3つです。
ハーフマラソンを攻略するための筋トレ
- 縄跳び(片足跳び)
- スクワット、ランジ
- プランク
この中で必須なのは縄跳びです。これは毎回のトレーニング前に取り入れても構いません。1〜2kmくらい走って、体が温まったら、「両足跳び→片足跳び→後ろ跳び→後ろ片足跳び」をそれぞれ20〜50回行ってください。ジャンプをすることでアキレス腱の強化につながり、ストライドを伸ばせるようになります。
スクワットやランジは出力アップと体幹を整える効果があり、効率のいいブレない走りが手に入ります。プランクもインナーマッスルが強化されて、体幹が安定するので、自宅でテレビを見ながらでもいいので実施してください。
記録を狙いたいならインターバルトレーニングを入れる
もしハーフマラソンで1時間30分以内を目指したいなら、心肺機能を強化するためのインターバルトレーニングを入れてください。ただし、インターバルトレーニングをしたいなら、カラダづくりの基準が上がります。少なくとも1週間に70kmを走るようにして、土台をしっかりと整えてください。
1週間に70kmを無理なく走れるようになったら、1kmのインターバルトレーニングを入れましょう。
ペース:レースペース – 10秒/km
距離:1km
レスト:60秒
回数:7回
厳密でなくても構いません。大事なのはレストでしっかりと心拍数を整えるということです。レストで心拍数が上がりっぱなしになっている場合にはペースが速すぎます。設定ペースを落として、きちんと7回を最後まで走り切るようにしてください。
練習をした日は1時間多く寝る
ハーフマラソンに限らず、トレーニングの基本は睡眠です。とにかく寝ないことには成長はないと考えてください。寝ないとその日の練習がすべてムダになると考えても構いません。それくらい睡眠は重要です。睡眠は質も大事ですが量も重要で、トレーニングをした日はいつもよりも1時間早く布団に入ってください。
もちろん食事も重要で、練習後はカラダづくりの材料となるたんぱく質と、翌日以降のトレーニングのエネルギーとなる炭水化物をしっかりと摂取してください。ただし食べ過ぎはNG。マラソンのタイムは体重で決まりますので、体重管理もしっかり行っておいてください。
ハーフマラソンを攻略するためのレース戦略
ハーフマラソンのタイムはスタートラインに立つまでの準備で決まります。このため、レースでランナーにできることは自分のポテンシャルを100%引き出すことだけです。ではどうすれば自分のポテンシャルを引き出せるのか、そのためのレース戦略について説明していきます。
ハーフマラソンを攻略するためのレース戦略
- 距離を3分割して考える
- 前半は抑え気味に入る
- エイドでは必ず給水する
- 最後は気合と根性
ハーフマラソンを攻略するために、ランナーができることは実はそれほど多くありません。意識すべきはこの4点のみとなります。こちらもそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
距離を3分割して考える
まずハーフマラソンの距離を3分割してください。
序盤:0〜7km | その日のコンディションを確認しペースを決める |
中盤:7〜14km | 序盤で決めたペースでクルージングする |
終盤:14〜21km | 気持ちを切らさずペースダウンを防ぐ |
それぞれのブロックの役割はこのようになっています。まずは序盤でその日の自分がどれくらいのペースで走りきれそうかを確認します。そして設定ペースが決まったら、7〜14kmはそのペースを維持しながら淡々と走ります。ここで大事なのはペースの上げ下げをせずに耐えることです。
そして最後はペースダウンしそうになりますが、ここはメンタル勝負になります。同じようなペースの人に引っ張ってもらうか、自力でペースを維持して、そのままゴールへと向かいましょう。大事なのはブロックごとに意識を切り替えるということです。自分がやるべきことを明確にして、それを忠実に遂行してください。
前半は抑え気味に入る
序盤でペースを決めるとお伝えしましたが、できれば序盤は設定ペースよりも抑え気味に入ってください。レースにもよりますが序盤はコースが混雑しやすく、無理に追い抜きをしようとすると消耗してしまいます。その消耗が後半の失速に繋がりますので、前半はフルマラソンのペースくらいで入るのがおすすめです。
そして7kmから本来のペースに戻して、14kmで余力があるならギアをもう1段上げてペースアップしてください。いわゆるビルドアップの形にするのがハーフマラソンのおすすめの走り方になります。一定のペースで走るようにアドバイスしている人もいますが、そうするとほとんどの人がオーバーペースで入ってしまい、終盤に失速します。
ある程度レースに慣れてイーブンペースで走れそうだと感じたなら、一定のペースで走っても構いませんが、レースになれるまではビルドアップを意識して走りましょう。
エイドでは必ず給水する
ハーフマラソンは短いからといって、給水をおろそかにすると、間違いなく後半に失速します。ハーフマラソンでもフルマラソンと同じように、すべてのエイドで給水してください。ただし、コップ1杯の水分をすべて飲む必要はありません。エイドごとに1〜2口くらいを飲んでください。
またレース前半はスポーツドリンクがおすすめです。14kmを超えてからの給水は体内に取り込む前にゴールしてしまうので、何を飲んでも構いません。気温にもよりますが、14km以降は水を取って2口ほど飲み、残りを首や太ももにかけて、体内に溜まっている熱を発散させてください。
最後は気合と根性
身も蓋もないことを言いますが、ハーフマラソンも最後は気合と根性の世界になります。特に残り3kmは体が重くなってきて、ペースを維持するのが難しくなってきます。そこで自分に負けずにペースを維持することができるかどうかで、結果が大きく変わります。
きちんとビルドアップしてきたなら、苦しくなってもまだ体の奥底に余力が残っているはずです。その余力を信じて粘りの走りをすること。こうなると戦略でも何でもなくなりますが、最初から「ラストは根性」と思っておくだけでも、最後の失速を防ぎやすくなるので、しっかり頭に入れておきましょう。
ハーフマラソンは総合力が求められる競技
走力が高いランナーでも自分なりの戦略性がない場合、行き当たりばったりのレースとなって、ほとんどのケースで後半に失速することになります。仮に上手く走れたとしても再現性がなく、タイムが安定することがありません。それゆえにハーフマラソンが苦手と感じる人もいますよね。
でも頭を使って走るということを覚えるとハーフマラソンの面白さがわかってきます。なぜ自分が失速したのか、思うようなタイムにならなかったかを反省し、次にどうすればいいのかを考え実践することで、プラスのスパイラルが生まれ、走るのがどんどん面白くなります。
フルマラソンにあってハーフマラソンになりのは、周りの人の「すごい」という声だけ。実際にはハーフマラソンのほうが奥深く、安定して自分のポテンシャルを発揮できるようになると、そんな周りの声はどうでもよくなります。そしてハーフマラソンを上手く走れるようになると、フルマラソンの成績も上がってきます。
ハーフマラソンを走ることで「賢いランナー」「総合力の高いランナー」に近づいていけるので、マラソンをもっと深く楽しみたいという人は、ぜひ積極的にハーフマラソンを走ってみてください。そしてワンランク上のランナーを目指しましょう。