ニューバランス×三村仁司で挑むランニングシューズの限界

トップランナーはもちろんですが、シリアスランナーであれば三村仁司さんの名前を聞いたことくらいはあるかと思います。世界に誇れる日本の靴職人である三村仁司さんは、これまで数々のランナーを世界のトップへと導いてきました。

オリンピックで金メダルを獲得した高橋尚子さんや野口みずきさんも、三村仁司さんが製作したシューズを履いて世界を制しています。

三村仁司さんは、アシックスを退職後「M.Lab(ミムラボ)」を設立し、アディダスと専属契約を結んでいました。その契約は昨年2017年3月で解消され、そして2017年の年末にビッグニュースとしてニューバランスとの専属契約が発表されました。

目次

ニューバランスは世界のトップブランドを目指す

ニューバランスはすでに日本国内で15%程度のシェアを持っています。アシックスやミズノ、アディダス、ナイキがひしめき合う中での15%というのは決して小さな数字ではありません。

その15%を20%に引き上げたい。それがニューバランスが描いたビジョンのひとつです。もちろん日本国内だけではなく、世界的なシェアを拡大し、多くのランナーにとってのファーストチョイスとなるトップブランドを目標に掲げています。

その目標を達成するためには、ニューバランスに1つだけ足りないピースがありました。それが、世界のメジャーマラソンのでニューバランスのシューズを履いた選手が活躍するということです。

ワールドマラソンメジャーズと呼ばれる、世界の大きなマラソン大会で上位に入ってくる選手の多くはナイキかアディダスのシューズを履いています。そうなると市民ランナーも、ファーストチョイスとして世界を制したメーカーのシューズを選ぶようになります。

大きな大会でニューバランスのシューズを履いた選手が活躍すれば、それだけ世界でのシェアを広げることができるというのが、ニューバランスの思惑です。

ニューバランスが三村さんを必要とした理由

ニューバランスの世界戦略と、三村さんとの契約にどのような関係があるのか。ニューバランスがアフリカなどからいい選手を見つけてきて、契約をすればそれでいいじゃないかと思うかもしれませんが、現代マラソンにおいてはランナーの能力だけでは勝てません。

三村さんも指摘していますが「シューズによって順位が決まる」状態にあるのが、いまのマラソン界での常識になっています。

ニューバランスのシューズが悪いというわけではありませんが、世界の舞台でトップ争いをするだけのシューズという点では、他のメーカーから見劣りするのも事実です。

それだけではなく、これまではトップアスリートに提供するシューズの最適化もされていませんでした。市民ランナーにはあまり知られていませんが、トップアスリートのシューズは市販品をそのまま使うのではなく、その選手に合った状態にして提供されます。

実業団の選手などは、きちんと足型を計測して、走り方の癖や筋力バランスなども考慮して、最高の状態のシューズを履いています。私たち市民ランナーにとって、ランニングシューズは道具でしかありませんが、トップランナーにとっては体の一部と言えるほどフィットした状態で履くことができます。

ところがこれまでのニューバランスには、そのようなトップランナーのための体制が整っていませんでした。世界のトップブランドになるためには、契約選手に最高のシューズを履いてもらうことが必須条件になります。

そこで白羽の矢が立ったのが、アディダスとの契約がなくなった三村さんだったというわけです。三村さんにニューバランスのランナーのためのシューズを作ってもらうことで、世界舞台でより良い成績を残せるようになることを期待されています。

市民ランナーにはどのような影響がある?

ニューバランスと契約するトップランナーにとって、三村さんとの契約はとてもいい知らせなのは理解できたとして、私たちが知りたいのは、それがどう市民ランナーに影響を与えるのかということですよね。

アディダスが匠シリーズを出したように、ニューバランスも三村さんが開発に携わる市販のシューズが作られるのか気になるかと思います。

ニューバランスによると、2018年中に新開発されたシューズが発売できる予定ということです。もちろん契約したばかりですので、まだ影も形もない状態です。これからコンセプトづくりをしていくというような段階かもしれません。

早ければ来シーズンには市民ランナーも、勝負のできるニューバランスのランニングシューズを手にすることができるかもしれません。これはちょっとワクワクしますよね。どんなシューズが出来てくるのか楽しみです。

ただ、三村さんが最優先でしなくてはいけないのが、トップランナーのシューズづくりです。さらにソールなどは、ニューバランスが開発したものを使うことになりますので、開発にどれくらい三村さんの声が反映されるのかはわかりません。

予想できるのは薄型の超軽量シューズ

三村さんはトレンドとなりつつある、厚底シューズには「あまり賛同できない」としています。厚底になりクッション性が高まることで、選手が疲労しやすくなると考えています。このクッション性については、アディダスとの契約を解消するひとつの要因にもなっています。

三村さんが理想とするシューズは、足を鍛えることでケガをにしくくするというものです。かつて日本がマラソン大国だった時代、ランニングシューズはもっと薄底で、走るだけでランナーの足が鍛えられました。

ところが、そのようなシューズは市民ランナーにとってはケガをしやすいということで、徐々にソールは厚く衝撃吸収性の高いものへと変わってきました。市民ランナーに買ってもらうためにメーカーは開発しますので、契約選手もそのソールを使ったシューズを履くことになります。

その結果、選手の足が弱くなる。ケガをしやすくなり、長い距離を踏めなくなった結果、世界に取り残されているというのが、三村さんの考え方です。

それをベースにすると、ニューバランスで作られる新しいシューズは、軽量薄型になるのは間違いありません。おそらくは匠シリーズの初期型、ブーストフォームの入っていないものに近いシューズになるはずです。

ニューバランスのシューズは世界を制することはできるのか

ニューバランスとミムラボが協力し合うことで、ニューバランスは世界で戦う体制が整いました。あとは実際に、契約選手が結果を残せるかどうかということです。これに関しては、まだ誰にも分かりません。

ただ、現在のアディダスとナイキの2強状態に、風穴を開ける可能性はかなり高いと考えられます。三村さんのすごいところは、シューズを作る腕だけではなく、選手の弱点を見つけて、そこの改善を促すというとことにあります。

靴職人でありながら、体の作りに関しても精通していますので、ランナーを体づくりの部分からも速くすることができる。三村さんのシューズを履いて世界を制したトップランナーの多くが、この部分を強調しています。

ただシューズを作るだけではなく、速くなるための知識と経験が他者を圧倒している存在です。それがニューバランスのノウハウとして活かされれば、自然と結果が伴ってくるはずです。

この1年、マラソン業界での大きな話題となっているのがランニングシューズです。そこにまた新しい風が吹いたことで、2018年はさらに話題性が高まるはずです。

ランニングシューズにはまだまだ可能性があり、自分自身もまだまだ限界ではないと語る三村さん。

目に見えるところでは、私たち市民ランナーには大きな影響は与えないかもしれません。それでも来シーズンは多くの人にとってシューズの選択肢がひとつ増えることになります。

それまではニューバランスと三村さんの挑戦を楽しみつつ、新しいシューズへの期待感を高めておきましょう。

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