
スントから2025年6月16日に発売される「Suunto RACE 2」は、ランニングウォッチとしてはやや高額な85,800円という価格設定になっており、気になっているけど、そこまでの金額を出す価値があるのかどうかで迷っている人も多いはず。
そこで、今回は発売前に2週間ほどしっかり使い込ませていただいたので、そのメリットやデメリットをお伝えしつつ、高価格であっても手に入れるべき理由をレビューしていきます。購入検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Suunto RACE 2を2週間使ってみてわかったメッリトとデメリット

Suunto RACE 2はスントのランニングウォッチの中ではハイエンドモデルになり、最新のテクノロジーを搭載した妥協のない製品になります。それゆえにどうしても価格が高くなってしまい、スペックが同等のスマートウォッチと比較すると割高感は否めません。
ただし、2週間の試用期間を経て、今では手放せない相棒となっています。実際にRUNNING STREET 365スタッフの私の手元には、いくつかのランニングウォッチやスマートウォッチがあるのですが、あるシーンを除いてSuunto RACE 2ばかり着用するようになっています。
「あるシーン」が気になるかもしれませんが、まずはSuunto RACE 2のメリットやおすすめポイントについてレビューし、「あるシーン」については、デメリットの項目で詳しくレポートしていきます。
Suunto RACE 2のメッリトは位置測定精度の高さと視認性にあり

「Suunto RACE 2の魅力はどこにありますか?」と聞かれると、もしかしたら実際に使用した人は返答に困るかもしれません。Suunto RACE 2はストレスなく使えしてまうため、慣れてくるとそれがランニングライフに溶け込んでしまいます。
だから使っているときはそのメリットに気づきにくいのですが、慣れた頃に他のランニングウォッチやスマートウォッチに切り替えると「あれ?なんか少しストレスかも」と感じ、そこでようやくSuunto RACE 2の魅力に気づきます。
とはいえ、レビューのためにSuunto RACE 2のどこにメリットがあるのかを意識しながら2週間も使っていたので、ここが素晴らしいと伝えられるポイントがいくつかあります。どのようなメリットがあるのか、どこが他のランニングウォッチよりも優れているのかを見ていきましょう。
デュアルバンドGNSSだから丸の内・銀座でも位置測定が高精度

低価格帯のランニングウォッチやスマートウォッチは、シングルバンドGNSS(GPS)を採用しており、東京マラソンのように高層ビルの間を走ると計測精度が落ちてしまいます。下記リンク先の動画はSuunto RACE 2を使ってランニングを計測したものですが、空がほとんど見えないような環境にもかかわらず、それなりに高い精度で計測できていることがわかります。
実際にシングルバンドGNSSのランニングウォッチでも計測しながら走りましたが、同じペースで走っていても12分/kmみたいに、明らかに間違っている数字が表示されました(なぜかログが残っていません)。ところがSuunto RACE 2は自分の感覚に近いペースが安定して表示されていました。
しかもシングルバンドGNSSのランニングウォッチは、スタート地点にするつもりだった丸の内エリアでは、そもそもGPSを拾ってくれず、皇居付近まで移動してようやく計測できました。一方のSuunto RACE 2は、10〜20秒程度の待機時間はありましたが、ビルとビルの間でもきちんとGPSを拾ってくれました。
最近は1万円台のスマートウォッチでもデュアルバンドGNSSを搭載しているモデルがあるため、Suunto RACE 2だから優位というわけではありません。ただ、ペース表示も心拍数表示も安定していて、必要ないことでストレスを抱えずに済むというのは大きなメリットのひとつです。
最大輝度2000nitで圧倒的に視認性が高い

Suunto RACE 2はとにかく画面が見やすくて、最初は見やすいことに慣れていなくて何度も2度見してしまいました。あまりにも視認性が高いため、「なんでこんなにくっきりはっきりしているの?」と不思議に思ってしまったわけです。
日差しの強い炎天下でも表示が見えないということはなく、むしろどんな状況でもくっきりはっきり見えることが当たり前になってしまって、少し古いランニングウォッチを使ったときにストレスを感じるようになりました。これまでそんなことを感じたことなかったのに、自分の中でSuunto RACE 2の視認性が標準になったわけです。
視認性が向上したのでランニングウォッチで情報を確認する時間が短くなりました。チラッとしか見ていないので、ディスプレイデザインはほとんど気になることもなく、標準状態で使い続けています。配置を変えられるそうですが、その必要性は今のところまったく感じていません。
ただ、この視認性の高さも、最近のスマートウォッチでは最大輝度3000nitというモデルも出ており、やはりSuunto RACE 2だけの強みというわけではありません。とはいえ定番のランニングウォッチと比較した場合には、その視認性の高さは頭ひとつ抜け出しています。
1回のランニングで得られる情報が多い

ランニングウォッチは距離とペース、経過時間だけわかればいいという人もいれば、ログさえ残せればいいという人もいますよね。そういう人にとってメリットにならないかもしれませんが、Suunto RACE 2は1回のアクティビティに対して得られる情報量が多く、日々のトレーニングをより深堀りできるようになっています。
平均ペースや平均心拍数などはもちろんのこと、パワーや回復時間、PTE、EPOC、推定VO2maxなどをSUUNTOアプリで確認できます。必要かどうかは別として、CO2e削減量も1回のトレーニングごとに把握でき、前回のトレーニングとの比較することで、自分のコンディションを確認しやすくなっています。
また、ランニングを継続していけば自分のフィットネスレベルもわかるので、自分のトレーニングが間違ったものにないのかも確認・修正しながらより効果的なトレーニングができるようにもなります。
いずれ、このような数値を元にしてAIがトレーニングを細かく提案してくれるようになるのかもしれませんが、残念ながら現時点ではまだその領域ではなく、情報を自分で理解して判断材料にする必要がありますが、数値を元に試行錯誤できるのが個人的には気に入っています。
リソースと睡眠管理で効果的にリカバリーできる

私は布団に入ると数秒で眠りに落ちてしまうほど、すぐに寝られるタイプなので、ランニングウォッチやスマートウォッチの睡眠管理はそれほど重視していません。ただレビューのために毎日睡眠の結果を見るようになってから、「きちんと寝なくては」という意識が高まっています。
ただ、個人的には睡眠管理よりもリソースを重視しています。疲労が溜まっていないかなどをリソースでチェックして、リソースが下がってきているときにはいつもよりも早めに寝たり、朝のアラームを解除してしっかり寝ることを心がけています。
1回の睡眠だけで判断するのではなく、ここ数日の状態を確認して判断できるのは、コンディションづくりをするうえではとても重要です。
ちなみに、Suunto RACE 2のアラームは振動のみに設定しているのですが、振動の大きさが強すぎず弱すぎず、程よい振動で気持ちよく起床できます。Suunto RACE 2に限らず、ランニングウォッチやスマートウォッチの振動アラームは思いのほか快適な起床となるので、まだ使っていないという人はぜひ試してみてください。

Suunto RACE 2のデメリットは重さとタッチ決済非対応

ここまでのレビュー内容からもわかりますように、Suunto RACE 2の基本的な機能には概ね満足しているのですが、やはりデメリットに感じていることもあります。デメリットだと感じているポイントは2つあり、ここさえクリアできれば100点満点なのにと感じているのですが、あくまでも個人として感じていることですので、参考程度に読んでおいてください。
フィットするけど重さによる揺れが気になる
Suunto RACE 2は装着したときのフィット感が高く、しっかり腕に馴染んでいるように感じますが、実際に走り出そうとすると多少は揺れてしまいます。私の手首周りのサイズが15cm程度しかなく、さらに161cmと小柄であることが影響しているのですが。
ただ、76gという重さは私にとっては決して軽量ではありません。もっとも重く感じるかどうかは個人差が大きく、私の場合も走りに集中できていれば、それほど気しません。だから重さは使わない理由にもなりませんが、もっと軽いことに越したことはありません。
また、重さと高級感はトレードオフのようなところがあり、ある程度ずっしりしているから高級感や安心感があり、それでいて耐久性も高くて長く使えます。
重さに関してはとにかく腕に装着しないことには判断できませんので、購入検討している方は家電量販店やスポーツショップなどで実際に装着することをおすすめします。とくに現在30〜40gくらいの軽量モデルを使っているという方は、試着は必須です。
タッチ決済非対応は悩ましい課題のひとつ
Suunto RACE 2のレビューのために、あるシーンを除いてSuunto RACE 2ばかり着用しているとお伝えしましたが、ここが私にとって最大のハードルになります。普段の私はApple Watch Ultra 2を使っているのですが、このタッチ決済がとにかく便利。私は頻繁に電車に乗るのですが、スマホを出さずにタッチで乗れるのは控えめに言って「神機能」です。
このため電車移動するときはApple Watch Ultra 2を装着し、到着駅から走り出す場合にSuunto RACE 2に付け替える生活を2週間していました。重さに関してはどちらも重たく感じますし、計測精度も同等なのでランニング時の選ぶ基準にはなりませんが、視認性の高さは圧倒的にSuunto RACE 2が優れています。
だから普段からSuunto RACE 2を使いたいのに、タッチ決済ができないわけです。もちろんスマホ決済をすればいいだけのことなのですが。ただ、10年後にはあらゆるスマートウォッチでタッチ決済できるようになっている可能性が高く、いずれそうなるならSuunto RACE 2も次世代モデルでタッチ決済に対応してほしいなと。
OSの関係などで簡単ではないのかもしれませんし、タッチ決済を付けることで価格が上がるのかもしれません。ただ、そうであったとしても、タッチ決済に非対応なのは悩ましく、Suunto RACE 2をメインで使い続けるために検討しなくてはいけない課題のひとつとして残っています。

85,800円のSuunto RACE 2を選ぶべき理由

Suunto RACE 2の価格だけを見ると、ランニングウォッチにこれだけの金額は出せないと感じるランナーがほとんどかもしれません。最近は1万円台のスマートウォッチでデュアルバンドGNSSを搭載しており、視認性もバッテリーの持続時間も十分確保されています。
高機能ランニングシューズと異なり、Suunto RACE 2を選んだからといって、マラソンのタイムが縮まるわけでもありません。しかもデジタルアイテムである以上、5年もすれば買い替えが必要になります。では、Suunto RACE 2は選択肢に入らないかといえば、もちろんそんなことはありません。
それはかつてのiPhoneとAndroidの論争に似ていて、「Androidなら格安の端末でiPhoneと同じことができる」と言われ続けてきましたが、少なくとも日本においては相変わらずiPhoneが選ばれ続けています。その理由はいろいろありますが、大きいのは所有欲を満たしてくれるというのと、iPhoneだからこその特別な体験です。
Suunto RACE 2も同じことで、スントのハイエンドランニングウォッチを使っているという満足感と、ストレスのない使用感(※重さとタッチ決済非対応を除く)は、格安スマートウォッチでは得られないものであり、そこに価値を感じるなら、Suunto RACE 2は選択肢に入ってきます。
そこは個人の価値観の違いであり、正解はありません。ただ、はっきりしているのはSuunto RACE 2を購入して、失敗したと感じる可能性はかなり低いということ。むしろ、ランニングライフがより充実したものになったと満足してもらえるのではないかというのが、2週間使ってみた忖度なしの完走です。

価格や重さが引っかかるならSuunto Runがおすすめ
Suunto RACE 2は魅力的なランニングウォッチですが、すでにお伝えしましたように重さが気になるという方も多く、そしてやはりランニングウォッチに8万円も出せないという人もいるはずです。でも、スントのランニングウォッチのデザインが好きというのであれば、Suunto Runを検討してみてください。
重さは36gしかなく、デュアルバンドGPSシステム採用で計測精度はSuunto RACE 2と同等です。オフラインマップがありませんが、ブレッドクラムナビゲーション(パンくずナビゲーション)が搭載されているため、スタート位置に戻ることはできます。
それでいて価格は43,890円ですので、スントのランニングウォッチであることを考えれば、かなりリーズナブルです。ポップなカラーリングのモデルも用意されていて、ファッションも含めてランニングを楽しみたいランナーに適しています。
スントのランニングウォッチは欲しいけど、高機能でなくていいし、むしろ軽さと予算を重視したいという方は、Suunto Runを検討してみましょう。

まとめ:価格に見合うだけの性能を備えたSuunto RACE 2
ランニングウォッチは計測できればいいというランナーにとって、Suunto RACE 2はあまりにも高額すぎて選択肢に入らないかと思いますが、Suunto RACE 2にはスペックだけでは語れない満足感があります。
もちろんスペックそのものもハイエンドモデルらしく「全部入り」で、位置測定も心拍測定も精度が高く、現時点のテクノロジーで考えれば、これ以上は望めないくらいの高機能となっています。格安の高機能スマートウォッチよりも安定しており、購入して後悔する可能性もほとんどありません。
ただ、小柄な女性ランナーですと重さが気になるかもしれませんし、現時点でタッチ決済できるApple Watchなどのスマートウォッチを使っている場合は、タッチ決済に対応していないことをストレスに感じる可能性はあります。
このため100点満点とは言えませんが、毎日のランニングがノンストレスで上質なものになる。そこに価値を感じるなら、前向きに検討する価値ありのアイテムです。
