ブルックスはランニングシューズの黒船になれるのか

アメリカ合衆国で最大手のランニングシューズメーカーのブルックス。これまでも一部のショップでラインナップされていましたが、2019年の冬から本格的に日本市場に参入することになりました。

今回の参入はリカバリー用ランニングシューズのMEDIFOAMで注目されているアキレスと伊藤忠商事が、日本国内におけるシューズ総代理店契約を締結したというのがポイントで、両社の持つ販売ネットワークにより、ブルックスのランニングシューズが日本中に展開されていきます。

ブルックスのランニングシューズは、ランナーは1人1人走り方が違うという考え方をベースに、科学と生物力学を取り入れて開発されています。そして、ブルックスのシューズを履くことで、幸せなランニングを提供することをコンセプトにしています。

シューズの質の高さは、ランニング大国であるアメリカ合衆国での人気からも分かるように疑う余地がありません。そんなランニングシューズが日本に本格参入するわけですから、日本のランニングシューズ業界はさらに活性化することが期待できます。

ただし、それは「ブルックスのランニングシューズを選ぶメリットを日本の消費者が感じ取ることができれば」という条件が付きます。

日本ではナイキが爆発的にシェアを伸ばしています。ランニング人口の伸び悩みもあり、アシックスもミズノも思うようにランニングシューズが売れなくなったところにナイキブームの到来。

そこにブルックスが参入してはたして生き残ることができるのか。ランニングシューズ好きとしてはとても興味深い状況になっています。

日本のランニングシューズ市場は少し特殊で、とにかく速く走れるシューズが売れます。ほとんどのランナーが自分のスキルよりも1ランクも2ランクも上のランニングシューズを履く傾向にあります。

サブ4やサブ5を狙うランナーが、ナイキのズームフライを履いているのを見て「なんだかなぁ」と思いつつも、常に最上を求める日本人らしさがそういうところからも伝わってきます。

ブルックスもそのことは重々承知で、これまでもトップクラスのランナー向けにハイペリオンという高速シューズを販売してきましたが、2020年にはさらに進化したランニングシューズの発売が予定されています。

そのランニングシューズはすでに2018年のボストンマラソンで、女子優勝者であるデジレ・リンデン選手をサポートしていました。ボストンマラソンを制するシューズですので、ナイキと競い合えるだけのポテンシャルがあることになります。

このようにトップランナーが世界で戦うためのランニングシューズを引っさげてブルックスは日本進出を図ります。インパクトとしては十分でしょう。

ただ、いいものが売れるわけではないというのは、各シューズメーカーがこの数年間、常に頭を悩まし続けてきた大きな問題でもあります。シューズはシューズの質だけで売れるのではなく、マーケティングがあって売れます。

ナイキのランニングシューズが売れるのは、シューズのポテンシャルの高さもさることながら、何よりもマーケティングの上手さが光ります。

ブルックスが日本のランニング業界において黒船になれるかどうかは、ほぼマーケティングにかかっていると言っても過言ではありません。ただし、マーケティングと言ってもお金をかければいいというわけでもありません。

これがマーケティングの難しいところです。

もしブルックスのランニングシューズを日本で売るとしたら、おそらくランニングにおける新しいムーブメントを用意しなくてはいけません。なぜなら、現在の日本人ランナーの走り方では、ブルックスのランニングシューズで気持ちよく走ることが難しいためです。

日本人ランナーは今や猫も杓子もフォアフットです。ブルックスのランニングシューズを見てもらえば分かりますように、つま先がかなり浮いています。このタイプのランニングシューズは、中足部もしくは踵側で着地をして、前足部で地面を蹴り出す走り方をします。

論より証拠ではありませんが上記の動画を見てもらえば、デジレ・リンデン選手が明らかに踵側から着地しているのが分かります。

ここではフォアフットがいいのか、ミッドフットがいいのかという議論はしませんが、多くの日本人ランナーがフォアフットを取り入れているため、ブルックスのランニングシューズとの相性に不安材料があります。

だからブルックスがランニングシューズを売るには、フォアフットではない走り方をするためのストーリーを用意しなくてはいけません。なぜ、その走り方をすべきなのかを伝えて売らないと「走りにくいシューズ」で終わってしまいます。

とはいえ、すでにお伝えしましたように、ブルックスは「ランナーは1人1人走り方が違う」ことを前提にランニングシューズを開発していますので、これに対するなんらかの回答をすでに持っているはずです。

そういう点も含めて、ブルックスの参入を楽しみにしています。

50代60代のランナーにとってはブルックスは懐かしく、20代30代のランナーにとってはブルックスは新鮮です。大きくブレイクする環境は整っています。あとは、これまでにないムーブメントをいかにして起こしていくのか。

2019年の冬に向けていったいどのような動きがあるのか、ぜひブルックスという存在を意識してください。RUNNING STREET 365でも最新情報が入り次第お伝えしていきます。