台風などの自然災害でマラソン大会が中止となるリスクについて考える

2019年の富士登山マラソンが悪天候のため、山頂コースも5合目までで打ち切りとなりました。山頂を目指してトレーニングをしてきたランナーは悔しいことかと思いますが、これがマラソンを走るということです。

昨年もいくつものマラソン大会が、台風などによって中止になりました。申込みをするときには走ることしか考えていないかと思いますが、これだけ中止になる大会が増えてくると、エントリーをするときから頭に入れておかなくてはいけません。

ここでは、そんな台風などの自然災害でマラソン大会が中止になることについて考えていきましょう。

自然災害で中止になったマラソン大会

まずは近年、自然災害で中止になったマラソン大会について見ていきましょう。

開催日都道府県大会名中止理由
2014.02.16東京青梅マラソン雪のため中止
2016.09.23山梨・静岡UTMF雨のためコース短縮
2017.01.15岐阜木曽三川マラソン雪のため中止
2017.09.15京都歴史街道丹後100㎞ウルトラマラソン台風のため中止
2017.10.22沖縄久米島マラソン台風のため中止
2017.10.29神奈川横浜マラソン台風のため中止
2018.09.30長野松本マラソン台風のため中止
2018.09.30群馬榛名湖マラソン台風のため中止
2018.10.07北海道札幌マラソン台風のため中止
2018.10.07岩手いわて北上マラソン台風のため中止
2018.10.07青森弘前・白神アップルマラソン台風のため中止
2019.04.26山梨・静岡UTMF雨のためコース短縮
2019.01.26福島Jヴィレッジハーフマラソン雪のため中止
2019.02.10福島いわきサンシャインマラソン雪のため中止

この他にもいくつものマラソン大会が台風や雪で中止になっています。クマ出没のため中止になった大会もあれば、東京の町田で開催されるはずだった武相マラソンのように令和への改元が原因で中止になった大会もあります。

ここ数年は参加者の安全を重視する傾向が強く、少しでも危険があると判断された場合には、短縮や中止と判断することが増えています。

2018年10月7日に中止となっていますが、実際には台風は上陸する前に温帯低気圧に変わっており「なんで中止にした」という声が広がりました。このように「少しでもリスクがあるなら中止」が最近のスタンダードとなっています。

その話については後ほど詳しく説明します。

秋大会は台風のリスクがある

台風というと8月〜9月に発生するというイメージが強いかもしれません。それを避けるために多くのマラソン大会が、比較的天候がいいとされる10月11月を開催日に設定しています。

ところが、近年は10月台風が発生することも増えているように感じますよね。実際にはそれほど増えてはいないのですが、マラソン大会の数も増えたことで、たまたま10月に発生した台風とマラソン大会がぶつかるため、そのような印象が強くなっています。

6月7月8月9月10月11月
2018年122
2017年1111
2016年42
2015年211
2014年112

この5年間で10月に台風が上陸したのは3回です。10年間なら4回しか上陸していません。もっと多いのでは?と思うかもしれませんが、「上陸する恐れがあった」という台風もあるため、実際の上陸と感覚が合わないかもしれません。

ただし、実際に上陸したからといって、それがマラソン大会の開催される日曜日に重なる確率となるとかなり下がります。上記の表でいえば、5年で3回ですので、155日のうちの3回(3〜6日)程度ということになります。

ただし、実際に中止になっている大会がこれだけある以上、9月10月のマラソン大会にエントリーするときには、常に台風のリスクがあることを頭に入れておく必要があります。少なくとも頭の片隅に置いておいてください。

なぜ簡単にマラソン大会を中止にするのか

ランナーにしてみると、最近は安易に中止にし過ぎではないかと感じているかもしれません。実際に開催日になって思ったほど影響がなく、有志で集まって自主的にコースを走ったというSNSの投稿もよく見かけます。

でも運営側からすると、中止にするのにはきちんと理由があります。

● 影響がなかったというのは結果論
● 開催時間だけの問題ではない

その大きな理由がこの2点です。

まず当日になって「開催できたじゃないか」と言われても、それは結果論に過ぎません。台風の影響がどれくらいあるのかなんて、実際に台風がやってこないと分かりません。

ほんの少しでもリスクが有るのに、無理に開催して事故が発生したら、いったい誰が責任を取るというのでしょう。台風が来ると分かっていて開催した大会でけが人が出ても、保険が支払われない可能性もあります。

また、スタートから制限時間内が安全だったとしても、例えば前日に会場設営ができないと開催できません。レース後に電車が止まる危険性があるなら、ランナーが帰れないので間違いなく苦情が殺到します。

大会側としては、設営準備から会場の撤去までを安全に行えないのであれば、開催することはできません。ランナーやボランティア、スタッフの安全という問題もクリアになって初めて開催できます。

簡単に中止の判断をしているように思えますが、むしろ大会側にしてみれば苦渋の選択なわけです。1年の準備をしてきて、それを中止にしたいマラソン運営者はいません。そんな軽い想いで運営できるほどマラソン大会の運営は甘くありません。

どんな大会であれ、少なくとも現場は情熱を持って準備をしているのだということを忘れないでください。

中止になって返金できない理由

マラソン大会が中止になった場合、原則として返金はありません。それは大会規約にも記載されています。マラソン大会とはそういうものなのですが、必ずといっていいほど「なんで返金できない」と怒りの声が出てきます。

マラソン大会というサービスを受けるためにお金を出したのに、それが開催できないならサービスを受けてない以上返金すべきというのが、その人たちの理屈なのだと思います。

気持ちは分かりますが、マラソン大会にしてみれば返すお金が1円もないのに返金なんて出来るわけがありません。マラソン大会はコンサートなどと違い、参加費で収益をあげているわけではありません。

むしろ、開催して赤字になっています。でも、市民の健康促進のためという名目で税金で穴埋めをしたり、スポンサー企業が穴埋めをしてくれています。ランナーから集めたお金はもちろん、当日までの準備にすべて使い切っているわけです。

参加賞Tシャツやパンフレット。中止になったからといって、設営費用や警備費用が返ってくるわけではありません。そんなことをしたら、設営会社も警備会社も人を確保しているのに、商売が成り立ちません。

「開催してないから費用は払えない」なんて言ったら、次の年からどの設営会社も警備会社も仕事を請けてくれなくなります。

手元にはお金がなく、戻ってくるお金があっても知れていて、そもそも赤字なわけですから返金できる理屈がありません。無理に返金したら、その大会は翌年から開催できなくなります。

マラソン大会というのは世の中のサービスとは少し違い、払い戻しが効かないものであることをしっかりと理解してください。納得はできなくても、それがマラソン大会にエントリーするということなのです。

どうしても納得できないというのであれば、規約で返金しないとなっている大会に出ないことです。もっとも、そうなるとエントリーできる大会はひとつもないかとは思いますが。

マラソン大会のエントリーは投資である

ランナーにとっては理不尽な話になってしまいましたが、マラソン大会というのはランナーのお金を集めて、そのお金を使って大会事務局が走れる環境づくりをするという構図になっています。

これは投資のようなもので、ランナーはエントリーすることで出資を行っています。そのときのリスクが「台風などの自然災害により開催されない」ということなのだと思ってください。

少し古いデータですが東京マラソンは1人あたり5万円のコストがかかります。これに対して以前は1万円でエントリーできました。

● 1万円の投資で5万円のサービスを受けらる
● 大会中止で投資した1万円を失うリスクがある

マラソン大会はクラウドファンディングのようなものだと思ってもらえると分かりやすいかもしれません。中止になる確率はとても低く、投資した額の何倍ものサービスを受けられますが、100%安全なわけではありません。

そういう仕組みだということを理解して、秋大会は台風、冬〜春大会は雪のリスクがあることを忘れないようにしてください。

まとめ

マラソン大会には常に中止というリスクがあります。台風や雪を避けても、クマが出たなんてことで中止になることすらあります。自然災害が原因だったときには、大会の開催時間以外の要因で中止になることもあります。

でも、中止にして儲かる大会なんてひとつもないということだけは忘れないでください。運営者はやっぱり走ってもらいたいわけです。だからどうにかできないかと頭を悩ませます。

そのうえで中止の判断をしています。

だから大会事務局が中止と決めたのであれば、文句を言いたくなる気持ちをぐっと堪えていただけないでしょうか。その大会がこれからもずっと継続できるように、よろしくお願いします。