ベルリンマラソンで哀しみの新皇帝ケネニサ・ベケレが与えてくれた勇気

9月29日にドイツ・ベルリンで開催されたベルリンマラソン。優勝したのはエチオピアのケネニサ・ベケレ選手でした。世界記録に2秒及ばない2時間1分41秒という驚異的なタイムで、2秒が惜しまれる記事も見かけましたが、十分に素晴らしい記録です。

そして、何よりもすごいのがケネニサ・ベケレ選手が37歳だということです。一般的にマラソンでのピークは30歳前後と言われ、キプチョゲ選手が世界記録を記録したのが33歳のときで、キメット選手は30歳、キプサング選手は31歳です。

ところがベケレ選手は、ランナーのピークはとっくに過ぎたと思われる37歳で、3年前に記録した自己ベストを1分以上縮めての優勝だったわけです。

彼の年齢についてあまり語られることはありませんが、これは驚くべきことで、マラソンの常識を覆すものです。なぜこのような成長があったのかは、これから明らかになっていくのかもしれません。

ただ、その理由が明らかになろうともなかろうとも、はっきりしているのはマラソンは年齢で大きく衰えることはないという現実です。むしろ身体的なピークを超えてもなお進化できるのがマラソンだということを、ケネニサ・ベケレ選手は今回証明しました。

私たち市民ランナーがついつい口にしがちな「もう若くないし」という言い訳はもう通用しません。やり方次第で40代50代になっても、まだ過去の自分を超えていけるはずです。

ある調査では日本人の市民ランナーのピークは50歳だという結果が出ています。これは他の国では見られない現象で、他の国では30代にピークを向かえるのに対して、日本はピークが10年以上もあとにやってきます。

ここからも、市民ランナーにはまだまだ可能性が秘められていることが分かります。マラソンは年齢を言い訳にできないスポーツであり、わたしたちはその気になればいつだって過去の自分を超えていくことができます。

ケネニサ・ベケレ選手は2009年まで世界陸上の10000mで4連覇を果たしています。10000mの自己ベストを更新したのが2005年ですので、14年も前のことです。陸上選手としてのピークは2005年から2009年までということになります。

ちなみに彼が「哀しみの新皇帝」と呼ばれるのは、2005年にケネニサ・ベケレ選手は、練習中に婚約者を心臓発作で亡くしているためです。

初マラソンは2014年。2012年にロンドンオリンピックの10000mに出場していますので、そこまでトラック競技を中心に長きにわたって活躍しており、そこから7年かけて世界の頂点に手が届くところまできたわけです。

そういえば、MGCで見せ場を作った中本選手も36歳です。MGCではベテランという立場でしたが、世界ではケネニサ・ベケレ選手のように、トップレベルにおいてまだ成長している選手もいるわけです。

大迫傑選手は28歳、設楽悠太選手は27歳です。ここからまだ9〜10年間の伸び代があるということです。鍛え方次第で、日本人ランナーが再び世界のトップランナーとしのぎを削る時代がやってくるかもしれません。

そして何よりもやはり、私たち自身が大きな刺激を受け、そして勇気を与えてもらえました。レースを見ていないという人は、ぜひ動画をチェックしてみてください。

中盤にトップと離されても決して慌てない熟練さ。そして37歳とは思えないダイナミックな走り。

私たちに同じような走りができるわけではありませんが、成長することを止めない気持ちを持ち続けることはできるはず。きっとまだ伸び代がある。そう信じてまた1歩を積み重ねていこうではないですか。