日本一早いマラソンレポート「ハルカススカイラン2018」

大阪のあべのハルカスの1階から60階までを駆け上がるハルカススカイラン。1610段の階段をエリートランナーは10分もかからずにフィニッシュしますが、地上からあべのハルカスを見上げたとき、それがいかに困難なことなのか容易に想像できるはずです。

大阪在住の人なら、このビルを自分の足で上がろうということすら考えないかもしれません。今回はあべのハルカスの階段の施工を手がけた横森製作所がメインスポンサーとなって開催されましたが、その関係でハルカススカイランを走ることになった30人近い社員たち。

普段はあまり運動をしていない人もいたのかもしれません。60階のうち20階も上がらないうちに、苦しみで足が上がらなくなっている人も続出していました。これが、普通の人にとっての1610段です。

そこにわざわざお金を出して参加する人たちがいます。それもワールドシリーズということで、遠くは南アフリカからも階段ランナーが参戦します。そんなトップランナーを迎え撃つのは日本の2人のエース、渡辺良治さんと吉住友里さん。

吉住友里さんは過去の2大会も制しており、トレランの世界では数々のビックタイトルを獲得しているランナーで、今大会も圧倒的な優勝候補です。渡辺良治さんも階段王を目指す世界トップクラスの階段ランナー。

そのようなトップランナーが参加するこの階段垂直マラソン。もちろん、トップアスリートだけでなく、大阪の市民ランナーやスポーツを愛する人に、ひとつの文化として徐々に根付き始めています。

今回のエントリー数は1089名。大阪マラソンと比べるととても小規模にはなりますが、1610段のために日本中からランナーが集まります。マラソンでは決して得られることのない苦しみがここにはあり、そしてたった15分ちょっとなのにウルトラマラソン完走に負けないくらいの達成感。

ほとんどのランナーが、途中で何度も走ることを止めたくなります。実際に足を止めてしまう人もいます。スピードを維持し続けられるのはトップアスリートだけ。それなりに速い人ですら、1段飛ばしで歩くのが精一杯。

足を止めれば楽になるという誘惑に打ち勝てるかどうか。

これは10分以内で走るランナーも、30分かけてゴールするランナーも同じです。みんながそれぞれに自分で作った限界の壁を超えていくために全力を尽くす。まったく運動をしない人にしてみれば、なぜこのようなことをするのか理解できないかもしれません。

もしかしたら実際に階段を上がっている人ですら、その理由は見つけられないのかもしれません。階段中毒になってしまっている人もいますし、衝動的に走らずにいられないという人もいます。

今回はタレントの森脇健児さんがゲストランナーとして参加しています。TBS感謝祭の赤坂ミニマラソンでの森脇健児さんの活躍は、多くのランナーはすでに知っていることかと思います。赤坂の坂を駆け上がるために、普段から100段以上ある階段を10往復している森脇健児さん。

その人をもってしても、あべのハルカスの階段は想像以上にハードだったようです。「20階で帰りたいと思った」というのは本音でしょう。もちろん逃げ出すことなく、芸能人の精神力の強さを見せつける走りをしていました。

それも追い抜いていく他のランナーに声をかけながら。

これは簡単にできることではありません。自分が限界の先まで追い込まれた状態で、周りのランナーに声を掛けながらも足を止めない。それでいて14分台前半でゴールしたという実績は、多くのランナーにとっての来年以降の目標になるかもしれません。

大会そのものは、とてもうまく回っていたように感じます。昨年はエリートの部の計測ができなかったというトラブルがありましたが、今年はそのような目立った問題もなく、大会会場となった「てんしば」は、とてもにぎやかな雰囲気が夕方まで続きました。

洗練された大会になりつつも、アットホームさを感じたのが2018年の特徴かもしれません。ボランティアスタッフも大会スタッフも参加者にとても優しく、それぞれがこれまでよりも余裕を持って対応しているように感じました。

実際には準備がとても大変だったはずです。今年は失敗できないというプレッシャーもありながら、これまで以上に参加者に楽しんでもらいたいという想い。これまでは危うい綱渡りをしているような部分が垣間見えましたが、今回はとてもいい準備ができたのでしょう。

熱い想いを持った運営と、それをサポートするスポンサー。そして自分の限界に挑もうとするランナーたち。2018年のハルカススカイランはそれらが、うまく噛み合った大会になりました。

おそらく、今回参加したランナーの多くは、来年以降もハルカススカイランへの参加を希望するはずです。今はまだクリック合戦にはなっていませんが、今年は名古屋で階段垂直マラソンが開催されたこともあり、これから一気にブームとなる可能性もあります。

ちょうどマラソンシーズンに重なるため、参加を躊躇している人もいるかもしれません。本気でタイムを出したいのであれば、階段向きのトレーニングをしなくてはいけません。でも実際のところ、大事なのはタイムではありません。

まず、この苦しいレースを楽しむ気持ちを持つこと。そして、この日の自分にとっての限界を超える勇気を持つこと。それができれば、タイムなんていうのはおまけのようなものでしかありません。

今年のハルカススカイランでは完走証が発行されませんでした。そのかわり、デジタル完走証ということで、大きなディスプレイにタイムが掲示されるようになり、それをスマホで撮影するという形になっています。

運営事務局が「タイムはおまけ」と考えたのかどうかは分かりません。でも、紙の完走証を発行しないことで、結果的にはそういうメッセージを伝えることができたのではないかと想います。自分が頑張ったかどうかは、タイムで測るものではなくゴールしたときの充実感で分かります。

タイムという形にしなくても、やりきったかどうかは自分が一番わかっている。

だから上位に入ったからといって満足しない人もいますし、無事に60階まで上がりきれたこと誇れる人もいる。これがハルカススカイランの魅力です。そういう意味では「自分には無理」と思っている人にこそ参加してもらいたい大会でもあります。

挑戦することに意義がある。ハルカススカイランはそんな大会です。もし、出場することを躊躇しているなら、思い切ってエントリーすることをおすすめします。団体の部もありますので、チームで頑張るという楽しみ方もできます。

来年の大会に出てみたいなというランナーさんは、ハルカススカイランのホームページやフェイスブックページをこまめにチェックしておきましょう。2019年の秋、あべのハルカスの最上階を一緒に駆け上がれるのを楽しみにしています。

ハルカススカイラン公式サイト
http://japan-verticalrun.jp

ハルカススカイラン・フェイスブックページ
https://www.facebook.com/japanverticalrun/

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