『SolarBOOST(ソーラーブースト)』でフルマラソンを走ってみた

アディダスから発売された初マラソン向けのランニングシューズ『SolarBOOST(ソーラーブースト)』。その機能などはすでにRUNNING STREET 365でも紹介しましたが、発売間もないこのシューズでフルマラソンを走ってきましたので、そこで感じたことなどをお伝えします。

RUNNING STREET 365
初マラソンを完走するためのランニングシューズ「SolarBOOST」

SolarBOOSTはどんなランニングシューズ?

まず、SolarBOOST(ソーラーブースト)についての簡単な紹介をしておきます。アディダスのランニングシューズは幅広いラインナップになっていますが、すでにレース経験のある人向けのシューズや、シティランに適したシューズがほとんどでした。

このため、これからフルマラソンに挑戦するというランナー向けのシューズのラインナップが求められていました。そこで開発されたのがSolarBOOSTです。

アディダスのランニングシューズの代名詞ともいえる BOOST™フォームをベースにしていますので、接地するときのショック吸収と反発力を持たせながら、さらに真っ直ぐ進むためのコントロール機能が加えられています。

フルマラソンをこれから走るという人は、筋力が不足していることもあり、足の運びに無駄があります。その無駄が後半の失速に繋がります。SolarBOOSTはシューズの構造を見直すことで、その無駄を可能な限り減らしています。

簡単に言えば「足を置いてくるだけで真っ直ぐ走れる」シューズがSolarBOOSTです。必要以上に力を使わなければ、後半になっても力が残っているため、30km以降に歩いてしまうということを回避できます。

初めてのフルマラソンでペース配分が分からないという人でも、普段通り走るだけで、最後まで歩くことなく走りきることができる1足です。

SolarBOOSTはやや踵着地向き

SolarBOOST(ソーラーブースト)はとても高機能なランニングシューズですが、その機能を最大限に活かすには幾つかのポイントがあります。その中でも最も重要なのが着地方法です。マラソンではフォアフットがブームになっていますが、SolarBOOSTはフォアフットには向いていません。

もちろんフォアフットでも走れますが、SolarBOOSTの機能を半分も活かすことができませんので、フォアフットで走りたいならadiZEROシリーズのほうが向いています。

完全な踵着地よりは、フラット気味に下りて少しだけ早く踵が接地するように着地すれば、ソールのサポートを最大限に活かすことができます。やや踵着地にするだけで、安定感のある足運びが可能になります。

ただし、注意したいのはすでにしっかり筋肉ができている人です。自分のランニングフォームが完全に固定されている人は、そのフォームとSolarBOOSTによる足の誘導がぶつかり合う可能性があります。

その場合には、膝などに必要でない負荷がかかってしまいます。走りを完全にシューズに任すことができるかどうか。ここが重要なポイントです。足はやや踵着地気味に置いてくるだけ。これ以上のことはしなくてもかまいません。

求められるのは技術よりも精神面

SolarBOOST(ソーラーブースト)は足を置いてくれば勝手に走ってくれます。そうなると、走りに余裕が出てくるのですが、この余裕がフルマラソン完走の邪魔をします。

・「今日は調子いい」にだまされない
・余計なことは考えないようにする

SolarBOOSTを履いて走るときの注意点はこの2点です。

BOOST™フォームとソールのサポート構造により、とても軽く走り出せます。このため、レース経験のない人はまず間違いなく「今日は調子いい」と感じてしまいます。レースの高揚感もあってついつい設定タイムより速く走ってしまいます。

これは絶対に避けてください。初マラソンで「今日は調子いい」も何もありません。後半失速する典型的なパターンですので、前半はむしろ自重して、予定よりも遅く入ってもいいくらいです。

今回SolarBOOSTを履いて走ったのはいわて奥州きらめきマラソンでした。最後尾からスタートしましたが、その位置でも周りのランナーは最初の1kmを6分30秒で走っています。これはフルマラソン4:34:16で完走できるペースです。

最後尾ですので、みんな完走できるかどうか不安という人ばかり。なのにこんなハイペースになってしまいます。SolarBOOSTを履くとさらに体が軽く感じますので、もっと速く走ろうとします。そして後半失速。

いくらSolarBOOSTが優れていても、完全に消耗したランナーをゴールに運ぶことはできません。大事なのはきちんとペースを守って走るということです。

また、走り出したらできるだけ頭の中は空っぽにしてください。足はオートで動きますので、頭で考える余裕が出てきます。そうなると余計なことばかり考えてしまうのが人間です。

「このペースなら何分でゴールできる」そういうことを考え始めたら、どんどん脳が消耗していきます。脳が消耗すると、後半に疲労を感じやすくなりますし、簡単に「もう無理」と諦めてしまいます。

気持ちに余裕があるなら、ゆっくり景色を楽しむくらいでいましょう。

実際にレースで履いて走ってみた感覚

初めてのフルマラソン用ということですが、私はすでに何十回とフルマラソンを走っています。そのため、シューズに頼ることなくフルマラソンを完走できますが、この日は完全にシューズに頼ってみました。

前日に観光で16km歩き、12km自転車を漕いで、完全に足を消耗させた状態でスタートラインにたちました。SolarBOOSTを入手できたのが直前でしたので、その時まで1メートルも走っていません。

このため、最初はシューズの感覚を掴むために無理なスピードを出さず、周りに合わせながら走りました。私は裸足でフルマラソンを走ることもあるためフラット気味のフォアフット着地です。

ただ、それではシューズの良さを引き出せませんので、早い段階から踵着地に切り替えました。普段使っていない筋肉を使いますので、やや違和感がありますが、そこはシューズを信じて、足を置いてくることだけに集中します。

最初に感じたのはアッパーの追従性の良さです。メッシュ構造のランニングシューズはどうしても、アッパーと足の間に隙間ができるため、足を持ち上げるときにほんの少しだけ遅れが生まれます。

SolarBOOSTのアッパーは柔軟性と強度を兼ね備えたものですので、ぴったり足に吸い付きます。履いたときには締め付けが足りないように感じましたが、走り出したらブレることもなくしっかり走れます。

スピードは6分30秒/kmから入り、5分15秒/kmまで上げたところで一度ペースを落として、5分30秒/kmをベースに設定しました。ちょうどサブ4ペースですので、初マラソンでも頑張りたい人が目指すくらいのスピードです。

5分15秒/kmというのが「今日は調子いい」というまやかしの部分です。前日に16km歩いていますので調子いいわけがありません。でも、本来走るべきスピード以上が簡単に出てしまいます。

正直なところ5分30秒/kmもややオーバーペースだったかもしれません。それでも大事なのは失速しそうになったときに、本当にSolarBOOSTは走りをサポートしてくれるのかということを確認するということでしたので、少し無理を承知で走り続けます。

後半になりやや集中力が切れ始めます。「もう歩いてもいいんじゃないか」という脳内の悪魔の囁きが聞こえてきますが、重いなりに足は動きますし、ペースは落ちても5分50秒/kmを保てています。

38km地点、残り4kmとなったところで3時間37分。このままのペースですと、サブ4達成ならずといったところで足が急に軽くなります。38〜39kmまでの1kmが5分10秒でしたので、そのペースを継続できればなんとか4時間以内に走れそうです。

ただ、多くの人が経験しているように、残り5分というのはとにかく苦しくて、そんなところでペースアップというのは考えられません。それでもSolarBOOSTが力を残してくれていると信じて、ゆっくりとスピードを上げていきました。

3時間59分19秒。

1度は諦めた思ったサブ4でしたが、後半の爆発力でなんとか達成できました。私の走力からすると、決して褒められるタイムではありませんが、残り4kmを苦しむどころか、しっかりと走りきれたのはSolarBOOSTがあったからです。

SolarBOOSTは可能性を秘めたランニングシューズ

走りながら感じていたのは、SolarBOOST(ソーラーブースト)の開発はトップランナー向けのランニングシューズづくりが始まりだったのではないかということです。コンセプトは初マラソンの人向けですが、走りをアシストするという意味では、注目されているナイキのヴェイパーフライ4%に近いものを感じます。

結果的にアディダスはトップランナー向けにはadizero Sub2という、極限まで削ぎ落としたシューズを開発しましたが、それと同時にシューズの力を使って記録を出すという方向性も持っていたのかもしれません。

その方向性が活かされたのが、初マラソンの人向けのSolarBOOSTだとすれば、このシューズはサブ3を狙うランナーまでカバーできるような気がします。

ただ、アディダスがランニングシューズを考えるとき、まずは人ありきという部分があります。しっかりとトレーニングを積んだランナーに対して、その成果を100%発揮するためにランニングシューズがある。それがアディダスのランニングシューズの基本思想です。

その思想がベースにあるため、SolarBOOSTはトップランナー向けではなく、初心者向けにチューニングして発売したのかもしれません。そこからは「シューズでサポートするけどシューズに頼るな」そういうメッセージを感じます。

初めてのフルマラソンに挑むためにSolarBOOSTを選ぶという人も、十分な練習を積んでください。42.195kmを走りきれるだけの体づくりをしっかりしたうえで、スタートラインに立ちましょう。

練習をほとんどすることのない人が、SolarBOOSTを履いたらフルマラソン完走できた。SolarBOOSTはそういう魔法の靴ではありません。自分の成長のため、自分を磨くことを忘れなかった人を助けてくれるシューズです。

マラソンの主役はあくまでもランナーです。それを忘れなければ、SolarBOOSTは初フルマラソンを走るための最高の相棒となってくれる1足です。

アディダスSolarBOOST
https://shop.adidas.jp/running/solar/

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