日本一早いマラソンレポート「万里の長城マラソン2025秋」

万里の長城マラソンは毎年5月1日に開催されるのですが、少し前から10月にも秋の万里の長城マラソンをスタート。小規模だからいろいろと試すことができるということで、継続してきましたが、どういうことか今年のエントリー数は160を超え、2025年の春大会と同規模での開催となりました。

日本人参加者も秋大会としては初めて20名を超え、今回の参加国としては最大規模になっています。ここ最近の春大会は天候に恵まれていますが、秋大会は空模様がいまいちだったり強風だったりしたのですが、さて2025年秋はどうだったのか、現地からレポートします。

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観光客のいない万里の長城を走るマラソン大会

万里の長城マラソンを走ることを誰かに話すと、あんなに観光客がたくさんいるところを走るの?」と聞かれることがよくあります。あまり知られていないことですが、万里の長城というのは中国の各地にあり、北京だけでもいくつもの観光施設があります。

RUNNING STREET 365が日本事務局を行っている万里の長城マラソン(Great Wall of China Marathon)は多くの日本人が訪れている八達嶺長城の西側にある長城で、トレッキングをする人が少しいるくらいで、一般の観光客はほとんどいません。

参加者数も160名程度なので、フルマラソンの後半になると万里の長城を独り占めできるくらい静かで、存分に万里の長城を楽しめます。ただ、以前のようにコースのほとんどが万里の長城というわけではなく、フルマラソンだとコースの6kmだけが万里の長城になります。

では簡単なのかといえばそんなことはなく、私は撮影をしながらハーフマラソンを走りましたが、10km走ったところで脚がパンパンになり、ロードに入ってもスピードをまったく上げられず。その後、撮影のために万里の長城に戻りましたが、体はボロボロ。

過去のようにリタイア続出というほどではありませんが、ほどほどに走れるがゆえに追い込んでしまって、途中で失速してしまいます。完走率は上がっているけどキツさはそれほど変わからっていません。どんなコースであれ万里の長城マラソンは万里の長城マラソンです。

もっともRUNNING STREET 365が日本事務局をしている万里の長城マラソンは、必ずしも同じ場所で開催されるわけではなく、そしていつも最高の体験を提供できるように新しい会場を探しています。今は比較的完走しやすいコースですが、数年後には変わっている可能性もあります。

冬のような気温の低さと青空、そして強風

2025年秋大会が開催されたのは10月26日。北京の緯度は盛岡と同じくらいですので、秋というよりは冬の始まりの気候。そして万里の長城マラソンは山の嶺を走るので、標高も高く10月とはいえかなり冷え込みます。数日前の夜は氷点下だったとか。

ただ気温は低いものの、秋大会としては珍しく、スタート時刻の8時には雲ひとつない青空が広がりました。ちなみに万里の長城マラソンは朝の5時半に北京市街地のホテルをバスで出発します。出発時刻に遅れると問答無用で置いていかれるのですが、今回は1人が二度寝で遅刻しそうに。

とりあえず日本人は1人も欠けることなくスタートラインに立てて日本事務局としてはひと安心。ただ、走り出したら寒さで体が震えそうに。かなりしっかり寒さ対策をしたのですが、どうやら足りなかったようですを体がまだその寒さに適応できてなかったのかもしれません。

ロード、トレイルと走ってそこからいよいよ万里の長城になるのですが、午前中は風も弱くて最高のコンディションで走れました。ところが時間とともに、山の麓から嶺に吹き上げる風が吹き始め、フルマラソンのランナーから体力を奪っていきます。

階段を登るために持ち上げた足が、風に流されそうになるほどの強風。昨年も強い風で悩まされましたが、それを上回る強風の中での過酷なレースになりましたが、そもそも万里の長城を走ることが「普通」はないわけで、集まったランナーは寒さも風の強さも口にしません。

それぞれが申し込みをした距離を黙々と走ります。不思議なもので秋大会は淡々と走るランナーが多く、春大会は陽気なランナーが多い傾向にあり、それが春と秋それぞれの個性になっている気がします。いずれにしても、難しいコンディションのもと開催されました。

雄大な風景と圧倒的なタフさを誇るコース

春には緑が鮮やかな万里の長城ですが、秋には多くの葉が散り、まったく違う風景を作り出します。ただ、1年を通して共通しているのは風景が雄大だということ。子どもの頃に万里の長城に憧れて、やっと参加できたという方は「走るのがもったいない」と言いながら、ここにしかない風景を楽しんでいました。

他にも今年は、コロナ禍で中止になった大会にエントリーしていた方もいて、その後再エントリーするもののケガで不参加。やっと万里の長城マラソンを走れると喜んでいた参加者もいました。ゆっくりとではありますが、万里の長城マラソンの知名度は上がりつつあります。

ありがたいことに、友人を巻き込んで参加してくれる方もいます。そして、多くの参加者が過酷なコースに苦しみながらも、それも含めて楽しんでくれたようです。こればっかりは、実際にその声を聞くまで不安なのですが、今年も気持ちよく眠れそうです。

万里の長城マラソンといえば、毎回のようにトラブルが発生する大会で、日本事務局としても悩ましい問題を抱えていました。今でも小さなトラブルは当たり前のように起きていますが、運営側として大きなダメージを受けるほどではありません。

かつて「中国の大会だから」と、クオリティの低さを笑い話にしていましたが、春と秋の2回開催により経験値も2倍になったことで、クオリティは大きく改善されています。そこに万里の長城マラソンでしか味わえない風景と苦しさがあり、唯一無二の大会になっていると自負しています。

日本にはないコースであり、中国に行かないと走ることができず、その風景を自分の目で見ることができません。その苦しさは勇気を出して1歩を踏み出した人たちのもの。何でもAIが答えてくれる時代でも、万里の長城マラソンの楽しさは走った人にしか答えられません。

2026年春大会は日本人参加者50名が目標

今の規模なら安定した運営が可能ですが、もちろん中国本部も日本事務局も現状維持で満足するつもりはありません。今回は秋大会としては過去最大の規模であり、勢いがきているのを感じています。日本人も来年のGWなら50名は見込めるかもしれません。

外国人参加者も含めて300名が、来年春の万里の長城マラソンを走る。これがひとつの目標です。いますぐにこれを実現しようとすると、間違いなくクオリティが下がってしまいます。クオリティを下げずに、参加者に満足してもらわなければ、参加者増加により低評価となってしまいます。

そうならないためにどうするべきか。それが万里の長城マラソンのこれからの課題です。簡単なことではありませんが、やる気には満ちています。もっと多くの日本人に万里の長城マラソンを走ってもらい、北京の魅力を感じてもらえるなら、日本事務局としてのリソースを注ぎ込む価値はあります。

少なくとも参加者の声を聞く限り、万里の長城マラソンそのものに対するポテンシャルの高さは感じます。あとは私たちがどこまでそれを活かすことができるか。

まだ胸を張って「最高の思い出をつくります」とは言えませんが、参加して良かったなと思える大会にする気持ちはあります。今回のレポートを読んでちょっと気になるという方は、ぜひ5月1日の春大会にご参加ください。

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