小学生が全力で東京マラソンを体験。ミニ東京マラソンレポート

東京マラソンのコンセプトである「走る喜び(ランナー)、支える誇り(ボランティア)、応援する楽しみ(観戦者)」に沿った東京マラソンの疑似体験をしてもらうためのイベント「ミニ東京マラソン」が都内で開催されました。

2024年に渋谷区原宿外苑中学校で開催された「ミニ東京マラソン」を取材しましたが、その時は中学2年生が対象。今回の対象は小学4年生ということで、前回の取材とはまた違った体験ができるのではないかとワクワクしながら、会場となった墨田区立小梅小学校へ向かいました。

目次

スポーツの様々な楽しみ方や魅力を伝えるための取り組み

以前のレポートでもお伝えしましたが、まずは「ミニ東京マラソン」について簡単に説明しておきます。「ミニ東京マラソン」は東京マラソン財団(東京マラソンの運営団体)が主催している、小学校や中学校を対象にしたイベントです。

小学校や中学校では授業の一環として、校庭などを使って東京マラソン全体を擬似体験します。擬似体験といっても、ただ走るだけでありません。走る人がいて、支える人がいて、応援する人がいるから成立する、その仕組そのものを体験します。

これは東京マラソンのコンセプトである「走る喜び(ランナー)、支える誇り(ボランティア)、応援する楽しみ(観戦者)」に沿ったもので、そのすべてを体験してもらい、スポーツの多面性、さまざまな楽しみ方に気付いてもらうきっかけづくりを行っています。

「ミニ東京マラソン」のすごいところは、日本のトップアスリートであった人たちが、ゲスト講師としてサポート役を担当するということ。「日本代表」や「元日本記録保持者」というのは、小中学生からするとそれだけでインパクトがあり、ヒーローから学ぶという貴重な体験ができます。

墨田区立小梅小学校の4年生が東京マラソンを擬似体験

今回、「ミニ東京マラソン」が行われたのは東京スカイツリーが大きく見える墨田区立小梅小学校。あしたのジョーなどで知られる漫画家、ちばてつやさんの出身校。すぐ近くに隅田川が流れ、小学校近くには墨田公園など、子どもたちが全力で遊べる場所があります。

一方で校庭の路面はコンクリート。私が大阪の小中学生だった頃、「東京の学校はグラウンドがコンクリート」と聞いたことがあったのですが、実際にそこに足を踏み入れたのは初めてのこと。到着してすぐに頭に浮かんだのは「転んだら痛いだろうな」ということでした。ただ、その感想は杞憂でしかありませんでした(詳しくは後ほど)。

校庭のサイズもコンパクトで、さらに限られたスペースに校舎や体育館が建てられているので、前回取材した渋谷区原宿外苑中学校のように、校舎の裏をコースにするということができません。だから、「ミニ東京マラソン」のコースは校庭のトラックを使って行われました。

4年生の1組から3組までが、それぞれのクラスごとに役割分担を行います。たとえば1組がランナーをしているときは2組がボランティアを行い、3組が応援を行います。それぞれの組にゲスト講師が1人ずつ付いてサポートし、さらに役割ごとにやるべきことのレクチャーもゲスト講師が行います。

ただ、生徒に「させる」というのではなく、自分たちで考えてアイデアを出せるように促すスタイルになっていて、たとえば応援はお笑い芸人のM高志さんがレクチャーしましたが、応援のスタイルそのものは応援団長を中心に、クラス全員で自分たちらしさを発揮していました。

もちろん小学生でも、それぞれに個性があり、時代は変わっても私たちの世代と同じようにお調子者がいたり、真面目に取り組む子もいたり、思春期の入口なのかちょっと斜に構えている子もいます。だから、開会式の段階では、それぞれの気持ちがあちこちに向いているという印象を受けました。

走ること・支えること・応援することの楽しさを全身で表現

もしかしたら、それぞれの方向が違ったまま最後までいくのかもしれない。そう思っていたのですが、まずは校長先生が丁寧な言葉でとっ散らかりそうな空気感をしっかり整え、それを下地にM高志さんが準備運動「ジャパササイズ」によって、全員に対してこれから向かう方向を示しました。

この段階で方向は定まっていましたが、まだベクトルの大きさに違いがありました。ただそれも、最初の1回に向けてレクチャーを受けながら、徐々に揃っていきます。目に見えて変わっていく。それは小学生の適応力だからできることなのか、それとも小梅小学校の教育の賜物なのかはわかりません。

前回取材した中学生の場合、最初から自分たちで方向性も理解し、それぞれが回りの温度に合わせて調整する賢さのようなものを感じましたが、今回は思考ではなく本能の部分で適応している感じがあり、コントロールしきれないほどの爆発的な「元気」を生み出しているようでした。

それでも、最初の1ターンはさすがに初めての経験ということもあり、やや抑え気味。でも、さすがの適応力で、1ターンを終えて自分たちが何をしているのかを理解してからは、それぞれの役割以上のことを全身で表現していました。

「ランナー→応援→ボランティア」というローテーションも上手くできていて、走ったあとの高揚感をそのまま応援につなげて、応援することによって客観的、俯瞰的な視野で全体を見ることができた状態でボランティアを行う。ボランティアをすることによって自制した感情をランナーとして解放させる。

プラスのスパイラルに生徒は乗せられて、それぞれが自分のポテンシャルを発揮する。「ミニ東京マラソン」がそれを意図的に行っているかどうかは知りませんが、これまでの開催で得られた経験を次に活かしているのが伝わってきて、ここからさらに素晴らしいイベントになる可能性を感じました。

そして何よりも、生徒たちが全力で取り組む姿勢からは大人としても学ぶものがあります。それこそ転んだらどうしようなんて考えることなく、そして周回コースだから自分の走った距離も順位もわからないけど、とにかく自分を出し切る。苦しくても誰ひとり立ち止まったり歩いたりもしない。

自分が応援する側や支える側になっても、与えられた役割を楽しむ。大人になって思考に頼ってしまうようになっていた自分を反省しました。自分を抑えるのではなく、感情を表に出すからこそできることがある。もちろん思考も大切ですが、そこだけに支配されないことの大切さを、生徒たちから教わりました。

種を蒔くから花は咲く

前回は「もっと多くの学校で導入してもらいたい」とお伝えしましたが、今回はそれに加えて「生徒の保護者にも見てもらいたい」という想いが湧いてきました。小学生らしい笑顔とひたむきさ。きっと親でもなかなか見ることができないであろう表情がそこにありました。

もちろん親が参観していたら、いつもと違う自分になってしまうのでしょうから、定点カメラで録画だけでもいいので、動画にして保護者に見てもらう。そこから何か新しいものが生まれるような気がします。

「ミニ東京マラソン」の目的は最初に述べたとおり、生徒がこの特別授業の経験を元にスポーツをさまざまな角度から楽しんでもらうことにあります。でも、私は「何か新しいものが生まれる」にこそ、本当の魅力があると感じています。

この特別授業がどこまで生徒たちに響き、その人生に影響を与えることになるのかは誰にもわかりません。20年後、30年後には完全に忘れてしまった体験のひとつになる可能性だってあります。でも、この特別授業を通じて感じたのは「花が咲くのは種を蒔いた結果」ということです。

今回の「ミニ東京マラソン」により、3月に開催される東京マラソンの応援に行く生徒も出てくるかもしれませんし、陸上競技の面白さに目覚める生徒も出てくるかもしれません。それは種を蒔いたからこその結果であり、蒔いていなければ、そこには何も生まれることはありません。

そういう意味で、「ミニ東京マラソン」はとても地道な活動ではあるものの、東京マラソンの未来、いや日本の未来にとって大きな活動です。なかなか日の目を見ることのない活動で、東京マラソンを走るランナーであっても活動を知らなかったという方もいるはずです。

みんなが憧れる東京マラソンの先にはこんな活動もある。頭の片隅でもいいので、ぜひ覚えておいてください。そして、運良く東京マラソンを走れることになったなら、自分なりの種を蒔きながら東京の街を走ってみてください。

東京マラソン財団 スポーツレガシー事業|ミニ東京マラソンについて

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