マラソンシーズンが終わって、ウルトラマラソンやトレランが各地で開催されていますが、夏を目の前にして、そろそろ日中の暑さが走るのに適してない気温になりつつあります。
ウルトラマラソンを難しくしている要因のひとつが、この気温です。30℃を上回る気温の中走ることもあり、そうかと思うと雨が降って低体温症になってしまう人が続出するレースもあります。
ウルトラマラソンは同じ大会でも、1年ごとにコンディションがまったく違います。コースコンディションも違えば、ランナーのコンディションも違います。それらを考慮して走らなければ、完走が遠のいてしまいます。
行き当たりばったりで完走できるほど、ウルトラマラソンは甘いものではありません。もちろん行き当たりばったりで完走できるだけの、きちんとした走力を付けておくということも重要ですが、ウルトラマラソンで重要なのは戦略的に走るということです。
前半貯金型かギリギリまでフラットか
行き当たりばったりのレースにしないために重要なのは、レース全体をどう構成するかを考えます。理想は最初から最後までフラットなペースで走ることですが、日本のウルトラマラソンはサロマ湖や荒川といった、一部のコースを除いてほとんどが山岳コースです。
そして、トップランナーはともかく、一般の市民ウルトラランナーは、どうしても後半は足が動かなくなります。そう考えると、ポイントとなるのは、どこまで足を残しておくかということです。
体力のある前半に、ある程度の時間の貯金をしておくのか。それとも無理することなくペースを落としてゆっくり長く走り続けるのか。まずはどちらを選ぶかをコースとにらめっこしながら決めましょう。
難しいのはコースによって立てる戦略が変わるということです。後半に山場のあるレースでは、体力の温存が必要ですが、前半に山場があるなら、関門の制限の甘い前半のうちに時間の貯金しておくなどの考え方があります。
ただ、どの戦略が正しいということではなく、自分の組み立てた戦略通りに走るということが重要です。前半ゆっくりと決めたのに、調子がいいからといって前半に飛ばすというようなことは絶対にしないようにしてください。
第2関門までのペースを決めておく
どのような戦略で走るかを決めたら、次は第2関門までのペースを決めておきましょう。第2関門はおそらく30〜40kmの場所にあるはずです。そこまでは、自分の思い通りのレース展開をしておきましょう。
40km以降に何が起こるのかわからないのがウルトラマラソンですので、サブ10を狙うランナーでもなければ、それ以上のことを考える必要はありません。逆に、第2関門までのペースを決めずに、感覚だけで走ると関門に引っかかることもあります。
ペースの決め方は、第1関門と第2関門それぞれの関門閉鎖時間と、その関門に引っかからないために必要なペースを計算してください。
スタート時間:4:30
第1関門20km地点 関門閉鎖時間:7:00
このような条件の場合は、第1関門まで20kmで2時間30分で走らなくてはいけません。このときのペースは7分30秒/kmです。第1関門まで7分30秒/kmよりも遅いペースで走れば関門に引っかかります。
関門を通過するペースを確認したら、そこから自分の走力とコースのアップダウン、そして戦略性を考慮して、自分がどのペースで走るかを決めましょう。コースはフラットで貯金を作りたいから、前半は6分30秒/kmで走ろう。そんな感じで決めてください。
ただし、このペースはそれほど厳密ではありません。±20秒くらいの幅は持たせておきましょう。
思った通りに走れなかったときはプランを変更する
どんなに綿密なプランを立てても、思い通りにならないのがウルトラマラソンです。走り出したら、思った以上に体が重くてペースが上がらない。そういうときは、無理せずにペースを下げてしまいましょう。
第2関門までの最低ペースを把握しておけば、どこまでスピードを落としていいのかが見えてくるはずです。長いレースの間でコンディションが整う可能性もありますので、頑張りすぎるのではなく、体が戻ってくるのを待つようにしてください。
戦略性を高めておくことはとても重要ですが、そのプランにがんじがらめにされないことも重要です。常にフレキシブルに、走り方をどんどんとそのときのコンディションに合わせて変えていきましょう。
ただし、想定よりも速く走るというのだけはNGです。想定していたよりもゆっくり走ることはあっても、速く走るのはレースそのものを台なしにしてしまいます。
エイドには長時間滞在しない
ウルトラマラソンで、ランナーのペースを狂わせるのがエイドの存在です。エイドでは水分の補給、栄養の補給だけをサッと済ませて、すぐに走り出すようにしてください。一度止まってしまうと、同じペースで走ることが難しくなります。
完走目標な場合は、500mlくらいの水分を常に背負っておき、エイドではその水分がなくなたっときと、大エイドで食べ物を確保するときだけ止まるようにしてください。水では汗を補完できませんので、O.R.Sの経口補水塩タブレットなどを持っておくと便利です。
とにかくエイドでは可能な限り立ち止まらないことです。特に後半の疲労時にはそこに座り込むと、完走が難しくなります。一歩も足が動かないというのでなければ、エイドでの休憩はしないように心がけてください。
20ヶ所のエイドで2分止まると40分のロスです。それを1分にするだけで20分確保できます。完走できない人の多くがエイドで休みすぎた結果です。
ただし、気温が高いときは、必ずかぶり水で体を冷やすようにしてください。特に体の熱が逃げにくいという自覚のある人や、暑さに弱いという人は水をかぶって、体を冷却しましょう。
注意したいのは、シューズの中を濡らさないということです。かぶり水を掛けすぎて、シューズの中が水浸しになることがあります。その結果、足に豆や水ぶくれなどができる可能性がありますので、気をつけましょう。
ウルトラマラソンの戦略性のまとめ
ここで紹介したのは、ウルトラマラソンを完走するための戦略性の基本です。本当はもっと複雑な戦略を立てておきたいところですが、大雑把にはこれくらいのことを考えておきましょう。
戦略性をもって挑んだ場合、失敗したときにその要因が明確になります。毎回行き当たりばったりでは、どこで失敗したのかがわからず、次に活かされません。戦略性が役立つのは目先のレースのことだけではなく、次のレース、その次のレースと、ずっと先まで活かされます。
同じ失敗を繰り返さない。そして自分の得意な形を見つけるために、自分で考えた走り方を身につけるようにしましょう。
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