「水素水はただの水で効果がない」という調査結果が国民生活センターから出されたことで、水素水ブームはあっという間に消えてしまいました。でも理論的には水素水は体にポジティブな効果をもたらす可能性があり、「ただの水」というわけではなさそうです。
それを裏付けるような論文が今年の4月に発表されました。それがランナーにとっても有益な内容でしたので、ここで簡単にご紹介していきます。ちょっとした知識として覚えておいてください。
電解水素水はエネルギー消費量を抑える
発表を行ったのは立命館大学スポーツ健康科学部で、2020年4月17日に英Taylor & Francis Groupが発行する生物と熱に関する生理学専門誌「Temperature」に論文の内容が掲載されました。その内容を見ていきましょう。
研究内容
この研究ではトライアスロン選手12名を対象としています。
・暑熱環境下(室温32℃、相対湿度50%)
・最大酸素摂取量の65%相当の負荷で60分間のペダリング運動
上記の条件で運動後、毎分20Wずつの漸増負荷式の運動を行い、疲労困憊に至るまでの時間を評価しました。
・運動中は電解水素水または浄水を摂取
・10分毎に体重1kgあたり2.0ml
電解水素水もしくは浄水を運動中に摂取し、血液指標・エネルギー代謝・組織温などにどのような変化が見られるかを調べています。
実験結果
【下記の5つについて電解水素水と浄水に違いはない】
・体重減少
・血漿量
・血液pH
・重炭酸イオン濃度の変化
・漸増負荷式の運動の継続時間
これらの項目において、浄水と電解水素水それぞれに有意な違いはありませんでした。ところが運動中のエネルギー消費量は、電解水素水摂取時が浄水摂取時に比較して有意に低値を示しました。
簡単にいえば「電解水素水を飲むと燃費が改善される」ということです。具体的には、電解水素水を飲用していると1分間あたりのエネルギー消費量が平均0.5kcal少なくて済みます。たった0.5kcalと思うかもしれませんが、マラソンは2時間以上かけて走るスポーツですので、決して小さな数字ではありません。
運動中に発生する酸化ストレスを電解水素水が中和することで、対ストレスに使われていたエネルギーが軽減されたと考えるのがシンプルな考え方ですが、まだそこまではわかっていません。
バナナ1本分のエネルギー損失を防げる
1分間あたりのエネルギー消費量が平均0.5kcal少なくて済むと言われても、あまりピンとこないかもしれません。
例えば日本女子歴代1位の記録である2時間19分12秒で走ったときに、電解水素水を飲んだ選手と浄水を飲んだ選手でエネルギー消費に69.6kcalの差が発生することになります。これは小さめのバナナ1本分のカロリーに相当します。
実験では運動の継続時間には違いがなかったため、このカロリー差がタイムに大きな差を生み出すことはなさそうですが、マラソンは思った以上に頭を使う競技で、トップレベルになると駆け引きなども必要になります。
そのようなケースでこの69.6kcalの差が勝敗を分ける可能性があります。
そして何よりも、このようなはっきりとした差が出たわけですから、水素水がただの水ではないことをわかってもらえたかと思います。もちろん、万能の水というわけではなく、今は「なんとなく効果が期待できそうだ」くらいの話です。
とはいえこれからさらに研究が進み、明確なメリットが発表される可能性があります。
「水素水はただの水」という考え方が広まっていますが、実際には「まだよくわからない水」というのが現状です。もしかしたら10年後にはランナーに必須の水になっているかもわかりません。反対に完全に忘れ去られている可能性もありますが。
ですので、話のネタとして頭の片隅に置いておくくらいがちょうどいいかもしれません。