RUNNETやマラソン大会の運営などで市民マラソンを支えているアールビーズが、2018年以来5年ぶりに「ランナー世論調査」を実施し、「ランナー世論調査 2023」としてコロナ禍を経て、ランナーの意識がどうかわったかなど調査結果を公開しています。
そこでここでは、調査結果に対するアールビーズの見解をご紹介しつつ、ランニングの情報発信を行っているRUNNING STREET 365として、その調査結果をどうとらえるのかについて解説していきます。知っていることで見えてくることもあるので、ぜひ目を通しておいてください。
調査概要
● 調査内容
・回答者の個人的属性について
・ランニング実施状況について
・ランニング以外のスポーツ実施状況・趣味について
・ランニングにかける金額について
・ランニンググッズについて
・ランニングイベントについて
・SDGsについて
・情報・その他について
● 調査対象:全国のランニング実践者(主にRUNNETユーザーを中心とする)
● 調査期間:2023年10月14日~10月31日
● 調査方法:インターネット調査
● 回収結果:13,099人(男性10,350人/女性2,690人/その他59人)
▼市民ランナーの〝今〟を調査した「ランナー世論調査2023」の詳細結果はこちら
https://runnet.jp/project/enquete/2023/
ランナーが走る理由
アールビーズの見解
「ランニングを始めたきっかけ」をコロナ禍前の2018年と比較すると、「健康のため」が9%上昇しました。行動が制限され運動不足になった人が、健康を保つために運動の必要性を感じ、その手段としてランニングを選んだと考えられます。
また、「レース出場のため」は8%上昇しました。コロナ後、エントリー数が定員に満たさない大会が増え、ランナーの「大会離れ」が指摘されますが、レース出場に魅力を感じ走り始めたランナーが増加しているという事実は、今後の大会参加者数回復に希望を見いだせる結果です。
RUNNING STREET 365の見解
アールビーズの見解にありますように、やはりコロナ禍を経て多くの人が「健康であること」を意識していることがよくわかります。気になるのは「ストレス解消のため」という人も増えているという点です。アフターコロナにおいてストレスを感じている人が増えている可能性があります。
また「友人/家族に誘われたから」が減っていることも、コロナ禍を経て人と人との繋がりが希薄になっていることが考えられます。ランニングは続けているけど仲間と走ることが減っている、ラン仲間と会わなくなったという人も少なくないはず。
そして「レース出場のため」が増えているとありますが、実際に割合は増えていますが、そもそもRUNNET利用者を中心にアンケートをとっているため、単純にマラソン大会が再開されたから「レース出場のため」を意識する人が増えただけとも考えられます。このため、まだしばらくは定員割れが続くと推定しています。
ランニングを続けるモチベーション
アールビーズの見解
「ランニングを続けるモチベーション」を2018年と比較すると、「走ること自体が楽しいから」と回答した人が11%上昇し、全体の3番目に高い割合を占めました。多くの大会が中止になった期間を経て、自由に走れることの喜びや楽しさを再認識するランナーの増加を示す結果となりました。
また、「大会出場のため」が5%上昇した一方で「記録を更新したいから」は6%減少しました。コロナ禍を経て、大会に出場する目的の変化が読み取れます。
RUNNING STREET 365の見解
「走ること自体が楽しいから」の増加が、まさにマラソン大会離れを象徴しています。ランニングの多様化が進んでいるとも考えられるので、これは悪いことではありませんが、マラソン大会の運営においては、ただ走れる環境を整えるだけではランナーが戻ってこないと考えておく必要があります。
そして「老化防止のため」も減少しており、コロナ禍を経て体力の低下を強く感じている人が多いと推定できます。「記録を更新したいから」の減少も含めて、もうかつてのようには走れないといった、どことなく諦めにも似た感情を抱いており、マラソン業界が「速さ」以外のモチベーションを示すことができるかどうかが、今後の課題になるかもしれません。
ランニングの実施頻度
アールビーズの見解
ランニングの実施頻度を問う設問では、週に1日以上実施する人が全体の94%を占めました。2017年と比較すると、週に1日(1回)以上実施する人は5%上昇しており、コロナ禍によって「走ることに向き合う時間が増えた」「走ることが習慣化した」ランナーの増加を示す結果となりました。
また、「週に5日以上」と回答した人は21%で、2017年(週に5~6回+週に7回以上)と比較して、5%上昇する結果となりました。
RUNNING STREET 365の見解
こちらの調査結果からわかるのは、ランニングを習慣とする人が増えているということです。これは健康促進のために走っている人が増えていることを示しており、たとえば朝活のひとつとしてランニングを取り入れるなど、ランニングが生活の一部になっており、社会全体としては健全な方向に向かっています。
またアールビーズの詳細な調査結果では月間走行距離が50〜100kmという層が27%と最も多く、82%のランナーが200km以下となっています。SNSを見ているとシリアスランナーがとても多いように感じますが、ライト層のほうが圧倒的に多く、それぞれのペースでランニングを楽しんでいます。
総評
コロナ禍前と後でランナーの意識は変わっており、多くのマラソン大会が定員割れを起こしているのはその現れでもあります。ただコロナ禍を利用して、マラソンに集中できる環境を整えた人も少なくなく、SNSを見ていると今シーズンは自己ベスト更新を達成している人が増えているように感じます。
今回の調査結果と照らし合わせると、ランナーの2極化が進んでいる可能性が高く、ランナー同士の分断が生まれているようにも感じます。マラソン大会の魅力のひとつとして「一体感」が挙げられますが、「みんなで走る」という意識は徐々に弱まっているとも考えられます。
いずれにしてもランナーの意識は以前とは違ってきています。マラソンの関わる人たちはそのことを頭に入れておく必要があり、そしてランナーは以前のようなモチベーションがなくても焦る必要はありません。ただ大きなうねりが起きたのは事実で、過去にとらわれる必要もなくなりました。だからこそ何のために走るのか、「ランナー世論調査 2023」を参考にして、自分なりに考えてみてはいかがでしょう。
▶ランナー世論調査 2023
https://runnet.jp/project/enquete/2023/