すでに一部の人たちの間では話題になっていますが、福岡国際マラソンでナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%を履いたランナーが、1位から4位までを独占しました。大迫傑選手の快走だけが注目されていたレースでしたが、各シューズメーカーにとっては、それどころではないトピックスになっています。
実はこのナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%はこの1年間の6つワールドマラソンメジャーでも、すでに大きな結果を残しています。下記はナイキから出されたものですが、6大会男女上位3位までの36人のうち19人がナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%を着用しています。
今年の東京マラソンでは、まだナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%が発表されていませんでしたが、東京マラソンの写真を見返してみると、白いナイキのシューズを履いたキプケテル選手が写っています。おそらくこの時点ではプロトタイプだったのでしょう。
ボストンマラソンでは男子の上位3人、女子も1位と3位がナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%でした。今年の6大会での最高記録2時間3分32秒もこのシューズによるものです。
トップアスリートの中で、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%は勝てるシューズ」という認識が高まっていることは間違いありません。
ナイキによるフルマラソンの距離を2時間以内に走ろうという「BREAKING2」で世界中にその存在が広まったナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%。あまりの人気に発売日には行列ができるほどで、今での品薄状態が続いています。
ナイキによると「このシューズはどのレベルの選手が履いても結果が出る」と言います。ヴェイパーフライを履いたことはないのですが、同じシリーズのペガサスを履いて走ると言っていることの意味がわかります。
足をどこから着地させようと、必ず同じ方向に足が導かれます。魔法のようなシューズですが、実際には魔法ではなく科学的なアプローチから作られたシューズです。ペガサスの場合は、ソールの形状を科学することで前への推進力を作り出しています。
ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%は、ソールに入っているカーボンプレートが推進力を生み出します。理屈の上ではどう走っても、蹴り出しをサポートしてくれるので速く走れるのですが、最大のポテンシャルを発揮できる着地点は限られています。
そして、しっかり結果を出すにはこれまでとは違う筋力が求めらます。BREAKING2でも福岡国際マラソンでも後半36km過ぎくらいから、これまでのような軽い走りができなくなって失速している印象があります。
このシューズにまだ選手が適合できていないのが現状かもしれません。そう考えると、来年のマラソンシーズンは、さらにこのシューズが上位を独占するのかもしれません。
さて、そんなナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%は、わたしたち市民ランナーにとって買いなのかどうか。
それはマラソンに何を求めるかによって変わります。タイムを1分1秒でも縮めたいというランナーにはもちろんおすすめです。タイムよりも自分の限界を超えていきたいというランナーにとっては、シューズによる恩恵は必ずしも喜ぶべきものではありませんよね。
ただし、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%は速さばかり注目されていますが、多くの選手が口にするように「疲労が残りにくい」ランニングシューズです。フルマラソンの翌日に普通に仕事に行かなくてはいけない人、たくさんいますよね。
そういう人には試してもらいたい1足でもあります。
とはいえ、他のシューズメーカーもこの状態に手をこまねいているわけはありません。2018年シーズンはどのメーカーも「速く走るためのシューズ」を出してくるはずですので、それを待つという考え方もあります。
これまでは「シューズは道具にすぎない」とされてきましたが、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%の登場により、勝つためにシューズを選ばなくてはいけない時代に突入しました。
ただトップランナーは、シューズメーカーとの契約があるでしょうから、好きなシューズを履くというわけにはいきません。でも私たち市民ランナーは好きにシューズを選んでもいいという自由があります。
お気に入りのメーカーから歴代最速シューズが出るまでのあいだ、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%にちょっと浮気してみるのもいいかもしれません。
ただ、シューズを変えたからすぐに結果が出るわけではないので、自己ベスト更新を狙うのであれば、きちんと練習もしてください。記録を出すのはシューズではなくランナー自身なんですから。