今年の箱根駅伝は、学生たちの走りだけでなくシューズにも注目が集まりました。メジャー大会で圧倒的な実績を残しているナイキのズーム ヴェイパーフライ4%を履いた東洋大学。これまでと同じアディダスのアディゼロタクミセン【戦】ブーストを履いている青山学院大学。
結果的には、企業がスポンサーとなっているこの2校が上位争いをすることになりました。これだけを見ると、シューズって大事だなと思う人も多いかもしれません。そういう記事を目にした人も多いのでしょう。
東洋大学の走りを見て、ズーム ヴェイパーフライ4%の購入を検討しているランナーさんもいるのだと思います。
でも、ちょっと待って下さい。
シューズはとても重要なアイテムのひとつですが、特別なシューズを履いたからといって、4時間台のランナーが3時間30分で走れるわけではありません。ズーム ヴェイパーフライ4%は4%だけ効率よく走ることができるということですが、4%記録が縮まるわけではありません。
記録ばかり追っていると、つい道具に頼ってしまうのがわたしたち人間の弱いところです。ランニングウェアからソックスまで、とにかく効果がありそうなものを次から次へと試していく。持久力が延びるというサプリメントがあれば飲んでみる。
それはそれでランニングの楽しみ方のひとつですが、そこからマラソンの本質が抜け落ちていませんか?
マラソンを走る理由、自己ベスト更新にこだわる理由。それは今の自分を超えていきたい。そういう願望があるからなのではないでしょうか?そこに手っ取り早いアイテムを導入するというのは本当に自分の望んでいることなのか、よく考えてみましょう。
ランナーにとって本当に大事なのは質の高い練習を続けることです。
質の高い練習を継続するには、それに耐えられるだけの体が必要になります。疲労しにくいからだ、回復しやすい体。それを作るために体のケアをしたり、食生活の改善をしたりして、自分自身を変えていく。
それを行った上で、速く走ることに向いているシューズを利用する。これならわかりますが、速く走れるようになりたいから、まず速く走れるシューズを選ぶというのは順番が違います。
シューズはあくまでも道具でしかありません。
もちろん、記録が伸び悩んでいる人が、道具を変えていいタイムで走ろうという気持ちは分かります。でも、シューズを変えただけで結果が出たのなら、それはやっぱり自分のスキルが上がったとは言えませんよね。
速くなるためのモチベーションアップのために、速く走れるシューズを選ぶというのはもちろん考え方のひとつです。
箱根駅伝に出るようなランナーは、そこが就職活動の場でもあります。箱根や他の駅伝でいい走りをすれば、そこに就職先がついてきます。良い記録を出せば、良い条件で実業団に入れます。
日本人はハングリーさが足りないと言われますが、学生ランナーは自分が走り続けるため、自分の存在価値を示すため、命をすり減らしてでも1分1秒を削る必要があります。シューズでその1秒を縮められるなら、そこに頼る気持ちもわかります。
それでは私たちはどうでしょう?
1分1秒を削るのは何のためでしょう。自己ベスト更新を目指すのはなぜでしょう?それは大いなる自己満足のためではないでしょうか。自分自身が充足感を得るために、自分自身が納得できる人生を送るために、苦しみながらも前に進む。
だったら、アイテムに頼りすぎるというのは、本質からは離れてしまいます。
速く走れるシューズを選んではいけないとは言いません。ただ選ぶ前に何のためにそれを手にするのか、シューズだけでなく他のランニングアイテムに関しても、よく考えてみましょう。
楽していいタイムを出せたところで、自分自身は何も変わっていない。下手すると道具に頼りすぎて弱体化している可能性すらあります。
自分自身を速くすることができるのは、自分の努力だけです。このことを忘れないで日々の練習をしてください。それを折れない軸として持っていれば、どんなシューズを選んでもブレることはないはずです。
ナイキやアディダスの高速シューズが気になるなら、それらを選べばいいですし、好きなデザインのシューズがあればそれを選んでも構いません。最近はケガをしにくいシューズなんていうのもあります。
ただし、選ぶときには自分の着地方法にあったシューズを選んでください。足の前側から着地するフォアフットか、踵着地のヒールストライク、そして最近話題のミッドフット着地。シューズにはそれぞれ、適した着地方法があります。
わからないという人は、ランニング専門店で店員さんに相談しながら決めるようにしましょう。平日か休日も午前中であればゆっくり相談にのってもらえますので、ぜひシューズの専門家を頼ってください。
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