今シーズンのフルマラソン。後半に失速することなく最後まで走りきれたランナーさんはどれくらいいるでしょうか?ほとんどのランナーは後半に失速して、思ったようなタイムにならなかったのではないでしょうか?
もちろん、それには理由があります。
フルマラソンを走るとき、多くのランナーは自己ベストタイムから考えた目標タイムを設定し、その日のペースを決めます。自己ベスト更新を狙って走るので当然ですよね。サブ4を目標にするなら5分40秒/kmといった感じです。
ここで設定したペース通りに走れるランナーは、おそらく10%もいません。スタートで5分40秒で入れたとしても、徐々にペースが落ちていき、気がついただ後半歩いていたというようなことがあります。
目標タイムを設定して、そこに合わせて走るという方法は戦略的な走り方に見えて、実は適当に走っているのとさほど変わりません。自己ベストをベースにというのは、根拠があるようでまったく根拠があります。
その日の体調や天候などによって、マラソンは生き物のように状況が変わります。コースもそれぞれ違いますので、5分40秒/kmというようなペース設定を最初から行うことに意味はありません。
フルマラソンをきちんと走りきりたいのであれば、もう少し戦略的に42.195kmと向き合うようにしましょう。そのための走り方はいくつかありますが、その中で取り入れやすい戦略をひとつご紹介します。
最後の14kmを走りきることに重点を置く
フルマラソンの経験があまりない人は、「とりあえず行けるとことまで行って、あとは気合でなんとかする」という考えの人が多いようですが、その発想は一旦忘れてください。
「フルマラソンは最後の14kmを走り抜く競技」という考え方に変えれば、走り方が大きく変わります。
いくら前半にいいペースで走っても、後半に歩いたのではそれは失敗レースです。大失速も同じですが、そもそも「とりあえず行けるとことまで……」という思考がこれを生み出してしまいます。
フルマラソンは残りの1/3を失速することなく、気持ちよく走るための競技だと思えば、前半は抑え気味にして余力を残して後半に挑むことができます。28kmを走り終えたところが本当のスタートで、それまでは準備だと考えてください。
それができないから苦労しているという人もいると思いますが、本当にきちんと抑えて走れていますか?スタート直後に「今日は調子いい」なんて思って、周りに合わせて飛ばしていませんか?
残りの14kmを走りきるには、それまでの28kmをもっと戦略的に走る必要があります。とはいえ、ゆっくり走ればいいという単純なものではありません。どう走ればいいのか次章から詳しく説明します。
最初の14kmは今日一日の走りを決める区間
毎回自己ベスト更新を狙いたくなる気持ちも分かりますが、気温や天候だけでなく、自分自身のコンディションなども含めて、いい条件が整わないと、フルマラソンではいい結果を出すことはできません。
初マラソンの人やまだ成長途中という人は別ですが、もう10回以上フルマラソンを走っているという人は、自分のコンディションだけ整えても、なかなか自己ベストを出すことはできません。
気温や湿度を加味したら、レース前から自己ベスト更新が無理なのがはっきりしていることもあります。そんなときに走る前に決めたペースを守るという走り方は無理があります。
その日のペースは走り出してから決めるようにしましょう。そのペースを決めるのが前半の14kmです。とはいえ最初の5kmは確実に周りに流されます。周りのランナーはスタート直後に本来のペースをはるかに上回るペースで走っています。
いくら自制をしても、流れがありますのでそれについていった結果、オーバーペースになってしまいます。まずは最初の5kmで周りに合わせながらも、ゆっくりと気持ちよく走れるペースに持っていきましょう。
もちろん強引な追い抜きはNGです。渋滞して前に行けないときは、その場で周りの流れに合わせましょう。14kmまでに自分のペースを作ればいいので、焦る必要はありません。
中間の14kmはリラックスしてクルージング
中間の14kmは力を入れずに走ります。前半で決まったペースをできるだけ維持することが大事ですが、そのペースを保つために無理にスピードアップさせないようにしましょう。クルージングモードに入ってください。
周りの景色を楽しんだり、他のランナーの走り方などをチェックしてみたりして、コツコツ1kmを積み重ねていくようにしましょう。
15km(14km+1km)を過ぎたくらいから、体が軽くなって走りやすくなることもありますが、そこでスピードを上げるのも後半失速の原因になります。もっと出せるのになと思ってもそこは自重してください。
正直なところ、この14kmはとても退屈です。1時間以上変化のない単調は走りをしますので面白みはありません。でも、ここで楽しむとあとで苦しみます。できるだけ余力を残してコツコツ走るようにしましょう。
リラックスして、集中をしすぎないのがポイントです。
最後の14kmでゆっくりと集中力を高める
28km地点に到達したら、そこからがフルマラソンのスタートです。ただし、ここで一気にペースを上げたりしないでください。残り1/3とはいえ、14kmは決して短い距離ではありません。
まずは2kmくらいかけて、自分の体力がどれくらい残っているのかを確認しましょう。心肺機能だけでなく、筋力の余力も把握してください。ゆっくりとスピードを上げてみて、少しでもキツイと感じたらスピードを戻しましょう。
これを何回かすると、このあとにどれくらいのペースなら完走できるかが見えてきます。ここは感覚の話ですので、自分なりに何度か試してください。
おそらく体調が悪いのでない限り、思った以上に体力が残っているのに気づくはずです。残りの体力をイメージできたら、そこからゆっくりと集中力を高めましょう。決して速く走ろうとピッチやストライドを高めないようにしましょう。
集中力が高まれば、それらは自然と上がっていきます。無理に速く走ろうとすると体に負担がかかり、残り数キロで大失速します。速く走ろうとするのではなく、集中力を高めることだけを考えましょう。
人によっては「ゾーン」と呼ばれる領域に入ることもあります。その状態になれば、あとはゴールまで気持ちを切らさずに走るだけです。ゾーンには入れなくても集中しているだけで、気持ちはポジティブになります。
その結果、残りの14kmも失速することなく走りきることができます。まだ余力がありそうなら、残り2kmでスパートしてみましょう。ごぼう抜き状態ですので、かなり気持ちよく走れて、満足感と達成感を得られるはずです。
戦略的にフルマラソンを走るためのまとめ
フルマラソンを最後まで走りきるための戦略をご紹介してきましたが、少しは参考になったでしょうか?もちろんこれはひとつの例ですので、別の走り方でも構いません。ただし、きちんとした理屈がなければ行き当たりばったりで終わります。
・レースは序盤・中盤・終盤に3分割する
・序盤はその日のペースを決める
・中盤はクルージングモード
・終盤からがフルマラソン、集中力を高めていく
もうマラソンシーズンは終わりだよという人も、トレイルやウルトラマラソンなども入れているかと思います。どのようなレースでもこの考え方が適用できますので、ぜひ参考にしてください。
終盤に余力を残してのフルマラソンは、自分だけが特急列車に乗っているようなスピードで走りきれます。これは想像以上に気持ちいいものですし、何よりもタイムが出なくても充実感が得られます。
もちろん失速しないので、思ったよりもいいタイムがでるというメリットもあります。ぜひ次回のレースで試してみてください。
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