日本一早いマラソンレポート「新潟シティマラソン2018」

ビッグスワンスタジアムに1万2千人が並ぶと圧巻です。

新潟シティマラソンはRUNNETの評価があまり高くない大会です。それを覆すために昨年はコースを大幅にリニューアルしましたが、新しいことに挑戦するというのはいつもリスクがつきまとうものです。結果的に新潟シティマラソンは2017年も高い評価を得られませんでした。

RUNNETの評価が全てではありませんし、2018年の大会に参加して、それほど低評価になる大会でもなく、クリック合戦になってもおかしくないだけの魅力があると感じました。

台風の影響もなく快晴での開催になりました。

まずは気になった点、評価が低くなっている理由についてレポートしておきましょう。

・道幅が狭くなる場所が多すぎる
・給食にインパクトがない
・ブロックを守らない人、虚偽の申告をしている人が多すぎる

まず、問題なのがフルマラソン1万人の大会とは思えないコース幅です。スタートはビッグスワンスタジアムの競技場内。これは面白みがあっていいのですが、競技議場から外に出る通路の半分を潰しているので、先頭以外は大渋滞です。

スタート直後、競技場を出るのに大渋滞になる

真ん中の柱があるからか、通路がこの幅に狭められています。

渋滞を回避するために今年からウェーブスタートにしていますが、第2ウェーブの真ん中ブロックですら6分かかっています。この通路の幅をすべて使えばそんなことは起こりません。

ただ、真ん中に柱があるので、安全のため片側を潰しているのは理解できます。それでも、1万人規模の大会をするなら、これは確実にクリアしなければいけません。

1車線を往復で使っている箇所も。

またコース途中でも狭いところが多く、一部では1車線を行きと戻りの選手がすれ違うというような箇所がありました。後半の坂道にもそういう箇所があり、前の選手が歩いてしまうと全体が動けなくなるという状態が発生しました。

このコースで続けるなら多くても8000人、無理なく開催できるのは6000人くらいがいいところです。

ボランティアスタッフは元気があり余っているのか明るくて楽しい。

また、給食には梨や笹団子などが出るなど、地元のものを入れようと工夫はされていました。ただ、インパクトがかなり弱く、魅力的ではありません。食を大きなテーマに掲げている新潟のエイドと思うと、これではランナーの心には響かなかったのではないかと思います。

なぜエイドを充実させたほうがいいのかということについては後ほど説明しますが、今のままでは魅力的とは言えません。

上位選手はもちろん渋滞なしで気持ちよくスタート。

そして、大きな問題としてすぐにでも取り組まなくてはいけないのが、スタートブロックを守らない人や、タイムの虚偽の申告です。これは大会側よりもランナーのモラルの問題ですが、ここまで乱れていると対策が必要です。

スタート会場の動線が悪く、G,H,Iブロックの選手の一部は、スタート前に自分のブロックに行けずにFブロックの後ろに入ってきました。それだけでなく、明らかに違うブロックに入っている人もいます。

自分のブロックより前にいる選手も多数(写真の方は関係ありません)。

これに関しては「失格」扱いにするくらい強い姿勢が必要です。悪いのはもちろん、ブロックを守らないランナーです。でも、その抑止力になるのは「不正は絶対に許さない」という姿勢です。

もっともこれは、新潟シティマラソンに限った課題ではありません。ほぼすべてのマラソン大会が該当します。ただ新潟シティマラソンは特にそれが目立ちました。明らかに見合わない場所にいて、早い段階で失速している人が多数いました。

スタート直後から美しい景色が広がります。

虚偽の申告にいたっては、正直対処方法がありません。なぜ新潟シティマラソンにモラルの低いランナーが集まるのかはよく分かりませんが、地道な啓蒙活動を続けるしかないかと思います。

ネガティブな部分を先に書きましたが、個人的に感じた改善が望ましいところはこれくらいです。

遠くに佐渡が見える日本海の風景が目の前に広がります。

日本海を眺めながら走るコースは、人によっては退屈かもしれませんが、速く走ろうという意識を捨てて、波の音とその風景を楽しむ余裕があれば、これほど見事なコースは国内でもなかなかありません。

バスの送迎から、スタートラインに立つまでに大きな問題もありません。行列ができているトイレも有りましたが、大会が用意した仮設トイレは、ビッグスワンスタジアムの外にあったからか常に空きがあるような状態でした。

混雑する既設トイレの一方で、ガラガラの仮設トイレ。

ただ、スタートすると小さな気になることが出てきます。

もし新潟シティマラソンがこれから成功する道があるとするなら、「速さを求めない大会にする」ということになりるかもしれません。これは思い切った舵切りが必要になります。レースですので参加者の多くはいいタイムで走りたいはずです。

でも、10月のこの時期のレースはこの日のように気温が上がるか、秋雨前線の影響で寒くなるかのどちらかです。そもそも自己ベスト更新というのには適していません。このため、大会として「走ることを楽しむ」という提案ができると風向きが一気に変わります。

速さだけを求めると、こういう混雑状況が大きなマイナス評価になります。

旅ランとして新潟をもっと楽しんでもらうこと。そのためには鹿児島マラソンのように、街と酒蔵をあげての前夜祭を開催することもできますし、42.195kmの旅を楽しませるためには、金沢や大阪のような充実したエイドを用意することもできます。

今回はRUNNING STREET 365のスタッフが、タイムを追うのではなく新潟を満喫することを重視してフルマラソンに参加しました。前日から新潟の地酒を楽しむことができ、レースでも急ぐことなく秋の新潟を全身で感じることができました。

新潟の景色を存分に楽しんでもらうような心理的誘導が必要。

速く走ることが良くないわけではありませんが、タイムを出すことが必ずしも優れているわけではないという考え方を定着させることで、違うブロックからのスタートも防げますし、虚偽の申告も減るはずです。

残念なことに新潟シティマラソンは、すでに「良くない大会」というイメージが定着しています。そうなると、何があっても悪い評価を受けてしまいます。今回もおそらく、あまりいい評価点にならないかもしれません。

昨年ひどい評価になったトンネルは上下線利用で改善。

でも実際に走ってみて、点数で言うなら85点くらいはあってもおかしくない大会です。正当に評価されていないなというのが正直な感想ですが、ただ90点を超えるほどの魅力はありません。新潟の美味しいものを合わせて90点といったところでしょうか。

ゲストランナーの高橋尚子さんは新潟シティマラソンでも大会を盛り上げ、ランナーに勇気を与えてくれました。他のゲストランナーは「走っているだけ」になっている時間が長かったのが残念でしたが、これもいずれ改善されるはずです。

高橋尚子さんが走るだけで損場の空気が変わります。

新潟シティマラソンのコースは次々と景色が変わり、ややトリッキーに設定されているためゴールまで飽きることもありません。そしてなによりもボランティアさんや沿道の応援者たちの声が大きく、気持ちをしっかりとつなぐことができます。

東京マラソンや大阪マラソンのような華やかさはありません。でも新潟らしい色はもっと出せるような気はします。ポテンシャルはおそろくしく高く、そして「もっと良くしたい」という思いが運営からは伝わってきます。

ゴール前からの声援でラストまで走りきれたランナーも多いはず。

過去に背負ったマイナスイメージからの脱却がうまくできていないというのが現状なのかもしれません。ただ、繰り返しになりますが決しておかしな大会ではありませんし、機会があればまた走りたいと感じさせてくれた大会でした。

渋滞にイライラするタイプの人には向いていませんので、自覚がある人にはあまりおすすめしませんが、「それもマラソン」と思える人なら、きっと楽しい時間を過ごせるはずです。

東京から2時間もかからずに行けますので、走り終えたあとに一杯飲んでから帰り、次の日に仕事というのも十分に可能です。「秋レースなんてタイムが出ないんだから」そう割り切れるランナーさんには、ラン仲間を誘って旅ラン、呑みランをしに新潟シティマラソンありだと思います。

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