
あらゆるランナーが自分の可能性にチャレンジする「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」は、3年連続で雨の中での開催となりました。ただし、昨年は2月開催ということで、それに比べれば厳しいほどの寒さではなく、むしろ新種目が加わったことで会場は熱気に包まれました。
昨年は5kmの公認レースと非公認レースの2種目だったものが、今年は新谷仁美選手のフルマラソンベストタイムに挑戦する「ATHLETE CHALLENGE RELAY MARATHON」と、ランニングクラブ対抗戦となる「EKIDEN 5K RACE」の2種目が追加。個人としてだけでなく、仲間と一緒にチャレンジできる大会にパワーアップしています。
過去大会の経験を活かして動き回りやすくなった会場

昨年は受付会場からスタート位置までが少し離れていたのですが、今年は軟式グラウンドの絵画館側にサブステージを設けており、受付からグランドを通ってスタート位置に向かえるようになっていました。そしてサブステージの周りにはスポンサーブースやキッチンカースポット、試し履きエリアが配置されています。
昨年は雨と低い気温の影響もありましたが、参加者の動線から離れた場所にキッチンカーが停まっていたのもあって、ほとんどお客さんが来ない状態になっていました。ところが今年は、小雨が降る中でもレース後にキッチンカーでご飯を買っている人もいて、しっかりと「マラソンイベント」になっていました。
そして、やはり嬉しいのは受付会場と荷物預かりが屋内であること。グランドを使えるようになったことで、グランドで受付や荷物預かりをしたくなるところですが、過去2回の大会で雨を経験しているので、おそらくこれからも、特別な理由がない限り、屋内での受付と荷物預かりに対応するはずです。

ただ、屋内エリアは限られていて、アップや飲食、待ち合わせなどがNGとアナウンスしているのにもかかわらず、屋内エリアに留まったり、更衣室外で着替えたりするランナーも目立ったので、そのあたりは参加者側がマナーを守る意識を持つ必要がありそうです。
マラソンに限らず、参加者のマナーが悪くて、利便性が落ちていった大会やイベントはいくつもあります。少なくともレースに出るランナーであれば、スポーツマンシップを忘れず、決められたルールやマナーを守る。それを広めるのがメディア側の役割でもあるので、そこはあえて厳しくお伝えしておきます。
いずれにしても、会場の規模や雰囲気は年々向上しており、種目の多様化も進んでいます。これで天気が良ければと言いたくもなりますが、足りないものがあるくらいが翌年に繋がるもの。ランナーだけでなく、大会そのものも新しい可能性に挑戦している。それこそが、「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」最大の魅力かもしれません。
チーム戦が「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」を盛り上げる

「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」の第1レースは、リレーマラソンの「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」。1チーム5~8名で、制限時間内(アディダスアスリートである新谷仁美選手のマラソン記録 2:19:24)に何km走ることができるかを競います。
1周1kmですので、トップチームは1周を3分以内で回ってきます。ただ、8人1チームだとしても1人あたり5km走ることになり、1kmのインターバルをしてるようなもの。後半は疲労が蓄積してきそうですが、時間の経過とともに参加者が盛り上がり、それに合わせるかのように雨脚が弱まっていきました。
早い段階で2:19:24でのフルマラソンの距離が無理だとわかったチームも、それぞれのベストを尽くして走り続けます。そして走り終えたあとはチームメイトと喜びを共有する。そのことで会場全体のボルテージが上がっていくのを感じます。

まさに場の空気を変えるような力強さがあり、その空気感を次の種目である「EKIDEN 5K RACE」へと引き継いでいきます。「EKIDEN 5K RACE」は、リレーマラソンの熱気が冷める前にスタートしたのですが、こちらは1人1kmの駅伝になります。
リレーマラソンでは少なくとも1人5km走ることになるのを前提にペース配分されていましたが、「EKIDEN 5K RACE」は1人1kmで終わり。1滴もエネルギーを残す必要がありません。すべてのランナーが鬼気迫る表情で走ることで、会場の熱気に緊張感が加わります。
また、「EKIDEN 5K RACE」では井上咲楽さん、和田毅さん、松山恭助さん、髙木菜那さん、神野大地さんがチームを組み、走りで大会を盛り上げてくれます。芸能人やトップアスリートと同じレースを走れる。これも「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」の魅力です。
誰もがチャレンジャーになれる「ADIZERO 5K RACE」

そして「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」のメインは、なんといっても「ADIZERO 5K RACE」です。「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」と「EKIDEN 5K RACE」で完全に仕上がった会場の空気感の中、集中力を高めて待機していた一般のランナーが自分の可能性に挑戦します。
ちょっと嬉しかったのはスタートエリアに待機用のテントがあって、狭いながらも雨を凌げるようになっていたこと。自己ベスト更新を狙うシリアスランナーほど体脂肪率が低く、寒さに弱いことを考えると、これは本当に助かります。
RUNNING STREET 365もメディアとして出走させていただいたので、第4レースまであるうちの第2レースに出場。1レースに300名近いランナーが出場するため、スタートしてから神宮外苑の外周コースに出るまでは混雑しましたが、あとはまったく問題ありません。

コースはほぼフラットであり、急なカーブは2ヶ所だけ。オーバーペースになりやすいといった悩ましい問題もありますが、自己ベスト更新を狙うランナーにとっては最高のコースとなります。しかも雨が体を冷やしてくれます。そしてこれは狙ったものではないのですが、国立競技場でJリーグの試合が開催されており、競技場から漏れてくる大声援もランナーのエネルギーになっていた’ような気がします。
自己ベスト更新できたかどうかは参加者ごとに違いますが、ゴールした参加者はみんな爽やかな顔をしているのが印象的でした。きっと私もいい顔をしていたのでしょう。すべてを出し切って、少なくともこの日のベストを尽くしたから達成感がある。
5kmというのは絶妙な距離で、勢いだけで乗り切ることはできず、それでいて少しでも気持ちを切らすと目に見えてタイムが落ちます。でも、「ADIZERO 5K RACE」なら、同じくらいのペースのランナーと競いながら走れるから、自分に負けることなく走りきれます。
シリアスランナーが限界に挑む「ADIZERO 5K OFFICIAL RACE」

「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」を締めるレースとなるのが、シリアスランナーのための日本陸連公認レースの「ADIZERO 5K OFFICIAL RACE」です。招待選手を含むトップアスリートとシリアスランナーが「1番速いやつ」を決めるために競い合います。
5kmの公認レースは日本陸連登録選手しかエントリーできないことがよくありますが、「ADIZERO 5K OFFICIAL RACE」は陸連未登録の選手も出場できます。走力さえあれば、箱根駅伝に出場するような大学生ランナーと競い合うことができるわけです。
これこそ「チャレンジの最高峰」ということもあり、沿道には走り終えたランナーや駅伝ファン、陸上競技ファンが詰めかけました。風を感じられるくらい近い場所をトップレベルの選手が駆け抜けていく。それは一般のランナーにとっても刺激になります。

一般のランナーが挑戦するだけで終わらず、トップレベルの走りを見せつける。これも「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」の魅力。自己ベスト更新できて満足したランナーも、最終レースを目にすると「もっと速くなりたい」となってしまいます。
そして、「ADIZERO 5K OFFICIAL RACE」を走った選手も、ゴール後にはテンションが上っており、降り続ける雨も気にすることなく、仲間と記念撮影を楽しんでいました。ハイレベルなランナーにとっても挑戦しがいのあるレースだったことがよくわかります。
ちなみに男子の優勝者のタイムはアモス ベット選手の13分43秒。女子は岡島楓選手が17分25秒で優勝しています。トップから途切れることのなく、次々と選手がフィニッシュしてくる光景は圧巻。誰が勝利してもおかしくない、好勝負が繰り広げられました。
会場で存在感を示すADIZEROシリーズ

「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」はその名前からわかるように、アディダス ジャパンが主催する大会です。このため、ランナーの多くがADIZEROを中心としたアディダスのランニングシューズを履いて走っています。
もちろんアディダス以外のシューズで走るランナーもいますが、「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」はADIZEROのトライオンをしており、試し履きしたシューズでレースに出場できるようになっていました。こういうチャレンジ系のイベントにしては珍しく、試し履きブースは長蛇の列。
人気が高かったのは「ADIZERO ADIOS PRO 4」。なかなか手に入れることができず、しかも価格が安くないので「とりあえず履いて走ってみたい」と考えたランナーが大勢いたのでしょう。そしてきっと驚いたはずです。その走りやすさに。

おそらく、「ADIZERO ADIOS PRO 4」を借りて走ったランナーの多くが、来シーズンの勝負レースとして「ADIZERO ADIOS PRO 4」を選ぶことになるはずです。「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」のような大規模なイベントでプロモーションができるのは、アディダスならではかもしれません。
「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」は、ADIZEROのトライオンイベントでもあるわけです。そして、すでにADIZEROを履いているアディダス好きのランナーが全国から集まります。他のメーカーのシューズを履いているランナーには肩身が狭いかもしれませんが、もし来年も開催されるなら、トライオンでシューズを借りてみることをおすすめします。
私は今回、ADIZERO BOSTON 12を履いて走りましたが、2023年に発売されたモデルながら、しっかりと走りをサポートしてくれました。ただ、少し古いモデルだからこそ、普段履いている「ADIZERO ADIOS PRO 4」のすごさを感じることになったのも事実。そういうシューズに関する新しい発見があるのも、このイベントの面白いところです。
「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」は真剣に走る楽しさを与えてくれる

閉会式では「あいにくの雨」という言葉が何度も出てきましたが、もしかしたら「ADIDAS TOKYO CITY RUN」にとって雨は「恵みの雨」などではと感じるシーンがいくつもありました。雨だから走ることに集中できる。雨だから挑戦する気持ちが盛り上がる。そういう参加者も多かったはず。
取材する側としては晴れたほうがいい写真が撮れるので嬉しいのですが、雨でなかったら、ここまで素敵な笑顔を見られなかったかもしれません。厳しい環境を乗り切ったからこその、達成感や熱狂がそこにはあったような気がします。
ランニングの楽しみ方はいくつもあります。ゆっくりのペースで風景を楽しみながら走るのもランニング。自己ベスト更新を狙うだけがランニングというわけではありません。でも、競技と真剣に向き合うことでしか得られないものがあります。
努力する楽しさ、真剣に走る楽しさを与えてくれるのが「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2025」です。それはときとして厳しい現実を突きつけてくることもありますが、そこを乗り越えるためにまた努力するきっかけにもなります。
今回参加するかどうか迷って見送ったという方も、来年「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2026」が開催されるようであれば、ぜひ参加してください。きっと満足して、そして「来年はもっといいタイムで走ろう」というモチベーションを抱いて帰路につくことになるはずです。