
高層ビルの階段を駆け上がるステアクライミングレース「STAIRCLIMBING CHALLENGE」が四国に初上陸。舞台は四国最高層の高松シンボルタワー。高層ビルの階段を駆け上がる、たった数分のために全国各地から250名を超えるステアクライマーが集結しました。
高松シンボルタワーの階段は792段、高さ150m。体力とテクニックだけでなく、戦略性が求められるこの高さで、どのような戦いが繰り広げられたのかを現地からレポートします。他の大会とどんな違いがあるのか、ステアクライミングの世界をお楽しみください。
四国の最高層「高松シンボルタワー」が舞台

ステアクライミングチャレンジ2024-2025シーズンの最終戦となる「STAIRCLIMBING CHALLENGE 高松大会」が2025年3月15日に開催されました。舞台は高松のランドマークでもある「高松シンボルタワー」。四国で最も高い高層ビルです。
ステアクライミングチャレンジが四国で開催されるのは初めてのことで、昨年までは「シンボルタワースカイラン」としてスカイランニング四国地域シリーズとして開催されていましたが、今年からステアクライミングの年間シリーズにも組み込まれた形になっています。
そもそも、ステアクライミングチャレンジって何?という方もいると思うので、簡単に説明しておきます。ステアクライミングレースというのは、世界中で楽しまれているイベントで、高層ビルの階段を駆け上がるレースです。会場となる大会や走力によりますが、レースは3〜20分程度で終わります。

そして「ステアクライミングチャレンジ(SCC)」というのは、エリートのステアクライミングレースのシリーズ戦である「ステアクライミングジャパンサーキット(SJC)」に合わせて開催される階段レースになります。
少し複雑に感じるかもしれませんが、スカイクライミングのエリートとは別に、誰でも挑戦できる階段レースだと考えてください。エリートの部門に選ばれるために全力で駆け上がる人もいれば、自分の健康維持のため、自分の体力を確認するために出場する人もいます。
そんなステアクライミングチャレンジが、四国初上陸したのが今大会というわけです。でも150mだと大したことないのでは?と思う方もいるかもしれません。もちろん高松シンボルタワーよりも高い高層ビルは国内にいくつもあります。でも、この高さならではの難しさ、楽しさがあります。
限界を超えて150m792段を駆け上がれる

私にとって高松シンボルタワーでのステアクライミングレースは初めてですが、ちょうど1ヶ月前にステアクライミングチャレンジ大阪大会に出場しており、そのときの会場はツイン21 MID タワーて、段数は739段で約150m。高松シンボルタワーの792段150mとほぼ同じです。
大阪大会は全力で走ったフルマラソンの1週間後ということもあり、レース結果は散々なものでしたが、この高さのレースがどのようなものなのかを把握しています。体が動く前半は1段飛ばしで、脚に乳酸が溜まり始めたら1段ごと。あとは集中して最後まで走り切ること。
もっと低い段数のレースであれば勢いだけで押し切ることができますが、この段数になると20階くらいで確実に苦しさが襲ってきます。そのときに、スタミナが残っていることが大事。ただペースを抑えすぎると、達成感を得られません。

逸る気持ちを抑えつつも、チャレンジする気持ちを持たないと792段で自分の限界を超えていくことはできません。これがミドルクラスの高層ビルを駆け上がるときの難しさになります。ただ、集中さえ切らさなければ、他では味わえない達成感を得られます。
階段そのものはかなり不規則。段数が揃っていないので、リズムに乗りにくいのですが、逆に考えれば、シンプルな体力や筋力だけでなく、「どう走るか」も求められるのが高松シンボルタワーの面白さでもあります。そういう意味では初見だと難しい階段でもあります。
もちろん初めて駆け上がった私はかなり戸惑いましたが、階段の幅も広すぎず、いつも以上に集中力を高めて駆け上がることができました。その結果、ステアクライミング歴10年の中で最も苦しんだレースになりましたが。きちんとオールアウトできた。その気持ち良さは格別です。

ひとつ気になったのは、表彰式が終わるまで自分のタイムがわからなかったという点です。他の大会では速報タイムがすぐにわかりましたが、今回はステアクライミングチャレンジの表彰式が終わってから公開で、自分のタイムをわからないまま帰途についた人もいたはずです。
順位が事前にわかるのを避けたかったのかもしれませんが、大会としてのホスピタリティを考えれば走り終えたらタイムがわかるようにしてもらいたいところです。自分で測ればいいという考えもありますが、オールアウトした場合、ストップウォッチを止める余裕もありませんので。
少なくとも種目が終わったら公開されるのが理想です。今回のように気温が低くなった状況で、走り終えた参加者が数時間後の表彰式まで会場で待ち続けるのは少し無理があります。入賞したのに表彰式にいない人も、他の大会よりも多かったように感じました。
地元での知名度アップが今後の課題か

今回のステアクライミングチャレンジ高松大会の参加者数は280名以上となっていますが、目標とする人数には少し足りていなかったそうです。土曜日開催ということもありますが、地元の方に大会の存在が知られていないことも影響しています。
前日に高松の繁華街にある個人経営の小さな居酒屋でお店の方と話をしたのですが、高松シンボルタワーを駆け上がる大会に出ると伝えたところ、そんな大会があるなんて聞いたこともないとのこと。情報が集まる居酒屋の方が知らないなら、一般の方はなおさらです。
ステアクライミングレースというのは、誰もが気軽に参加できる競技です。普段は野球やサッカーをしている人でも参加できますし、ほとんど運動をしないという人でも参加できます。小学生から高齢者まで幅広く参加できるので、知っていれば参加したという方もそれなりにいるはずです。

そういう意味では、高松ではこれまでの他の大会とは違ったアプローチが必要になるのかもしれません。ランニングのコミュニティはもちろんのこと、スポーツジムやヨガのスタジオなど、健康に対して高い意識を持っている層にもアプローチするなど、やれることはあるはずです。
もっとも、今回はステアクライミングチャレンジとして高松での実績がないところでの開催でしたので、「参加してほしい」とお願いしたところで、ふたつ返事でOKしてくれるわけではありません。継続して開催してこそ拓ける道もあるわけで、これからゆっくりと根付いていくはずです。
もしステアクライミングチャレンジが高松に根づくことができれば、これは今後につながるモデルケースにもなります。150mくらいの高層ビルでも注目されるイベントを開催できる。そうなれば広島や福岡などでの開催も視野に入ってきます。だからこそ、ステアクライミングファンとしては焦らず粘り強く成功させてもらいたいところです。
数分で終わるから観光も楽しめる

私のステアクライミングチャレンジ高松大会は5分59秒で終わりました。6分に満たない時間のために関東から高松まで遠征する。それはかなり贅沢な遊びです。ただ、階段を走るためだけにやってきたわけではありません。
今回は土曜日のやや遅い時間にスタートしましたので、土曜の朝の飛行機に乗って会場入りし、午後は観光してから後泊。高松のグルメを楽しんで、翌日も観光してから戻るなんて楽しみ方もできます。地方での開催の場合、「観光」と結びつけられるのはステアクライミングの魅力のひとつです。
フルマラソンの場合、3〜7時間も走っていて、しかも体力を消耗しているので人によっては、レース後に食欲もなくなってしまうことも珍しくありません。ステアクライミングチャレンジは、走り終えた後の苦しさは絶望的なものがありますが、30分もすれば多少の筋肉疲労を除いて回復します。

レースだけじゃなく観光もできるから、私は今回の開催を楽しみにしていました。そして実際に素敵な居酒屋さんに出会えたり、運命的な出来事が起きたりして、旅とステアクライミングチャレンジの組み合わせを満喫することができました。むしろ、時間が足りなくて「また高松に来たい」と思えるくらい充実していました。
今回は高松だから参加を諦めたという人もいるかもしれませんが、高松でしか体験できないこともあります。それとステアクライミングチャレンジを組み合わせれば、充実した休日になります。階段を駆け上がるだけじゃない自分なりの楽しみ方をプラスできる。それがステアクライミングチャレンジです。
そういう意味では大会そのものが、地元の飲食店や観光スポットと提携して、割引サービスを受けられるなどの特典をつけてくれると参加者も大会の楽しみが増え、地元にも還元されるといったWin-Winの流れができるかもしれません。

ちなみに、ステアクライミングチャレンジはすでに2025-2026シーズンの開幕戦である、名古屋大会がエントリーを募集しています。翌朝に名古屋城や熱田神宮まで走る大会主催のランイベントなどがあると面白そうなのですが、あまり要望を出しすぎると自分でやらなくてはいけなくなりそうなのでこれくらいにしておきます。
いずれにしてもステアクライミングチャレンジ高松大会は楽しかったですし、来年も開催されるならもちろん参加します。今度は小豆島や屋島、金毘羅さんにも足を伸ばしたいところです。翌日に金比羅さんの階段を……いえ、何でもありません。
ステアクライミングチャレンジ名古屋大会:https://sjc-kaidan.jp/scc/nagoya/