日本一早いマラソンレポート「Wings for Life World Run 2025」

参加費の全額が脊髄損傷治療の研究資金として寄付されるチャリティラン・イベント「Wings for Life World Run 2025」が、2025年5月4日に開催されました。アプリを使ったオンラインランイベントではありますが、日本では東京、福岡、広島、大宮で参加者が集まって一緒に走ることができるイベントが開催されました。

東京会場には昨年に引き続き、レッドブルアスリートやインフルエンサーが集結。他の会場もレッドブルがサポートするトップアスリートが登場し、会場を盛り上げました。RUNNING STREET 365では、今回も東京会場を取材してきましたので、その内容をレポートしていきます。

目次

全世界同時開催「Wings for Life World Run 2025」とは

まずは簡単に、チャリティラン・イベント「Wings for Life World Run 2025」について説明しておきます。このイベントは脊椎損傷の治療法研究のために開催され、全世界のランナーが同時にスタートします。日本では夜中の20時にスタートしますが、国によっては日中の明るい時間に開催されます。

12回目の開催となった「Wings for Life World Run 2025」は、世界170カ国・310,719人のランナーが同時スタートしました。2024年は過去最多となる265,818人が参加しましたが、それを大きく上回る数のランナーが参加し、その勢いは留まるところを知りません。

「Wings for Life World Run 2025」一般的なマラソン大会と違い、走る距離も走る時間も決まっていません。参加したランナーは、スタートから30分後にスタートし、徐々にペースを上げてくるキャッチャーカーに追いつかれるまでの間に、できるだけ遠くまで走って逃げます。

キャッチャーカーに追いつかれなければ、どこまでも走り続けることができ、2024年は世界記録となる70.09kmで日本人ランナーが男子の世界チャンピオンになっています(女子チャンピオンは55.02km)。

難しいのはペース設定をどこに置くかということで、前半に貯金を作りすぎると後半に失速してしまい、後半に体力を温存していると、思わぬところでキャッチャーカーに追いつかれて、オールアウトする前に走り終えてしまいます。

アプリを使ったオンラインランイベントですので、基本的にはどこで参加しても構いません。ただ、これだけ多くのランナーが同時スタートするなら、一緒に走ったほうが楽しく、そして力を出し切れるということで、日本では東京、福岡、広島、大宮の4ヶ所に参加者が集結して走りました。

「Wings for Life World Run 2025」は折り返しのない高速周回コースへ

「Wings for Life World Run 2025」の東京会場は昨年と同じ明治神宮外苑でしたが、昨年はいちょう並木を含めた折り返しのある周回コースだったものが、折り返しのない1周1kmの周回コース(外苑南側の半周コース)に変更されていました。これにより、東京会場はフラットで距離を伸ばしやすい高速コースになりました。

折り返しがあるとコース全体をコンパクトにできますが、折り返すたびに減速と加速をすることになります。このため、タイムロスになるだけでなく、足への負担も大きくなるといった欠点があります。新コースはその心配もなく、参加者は思う存分、キャッチャーカーから逃げられるようになりました。

チャリティランイベントであっても、参加者がベストを尽くせる場を提供する。それはイベントをサポートするレッドブルらしい配慮であり、このイベントがただのファンランではないことを意味します。チャリティだから楽しく走れればいいというのではなく、自分を超えていくチャレンジの場にもなっているわけです。

ただし、走りやすいコースにはなっていますが、ランナー同士がすれ違うことがなくなってしまいました。それにより、ランナー同士が向き合って声をかけたり、ハイタッチしたりできなくなっていたため、個人的には少し物足りなさがありました。

もっとも、ランナーにしてみれば「昨年よりも走りやすくなった」わけで、昨年よりも距離を走りたいランナーにしてみれば、今年のコースのほうが好みかもしれません。ただし、キャッチャーが出発するまでは、参加者に対してコース幅が足りていないところもあり、少しだけキャパオーバーしているようにも感じました。

とはいえ、昨年と今年でどちらのコースが優れているという話ではなく、少なくとも今回は「東京会場をもっと走りやすくする」ことを優先したのでしょう。もしくは、20時という遅い時間にスタートすることになるので、近隣で暮らす人に迷惑をかけないための配慮だったかもしれません。

「個」が強調された「Wings for Life World Run 2025」

昨年のイベントを象徴する言葉があるとすれば、それは「一体感」でした。参加者全員がひとつになってイベントを楽しみ、盛り上げていた印象があります。マラソン大会にはない雰囲気で、とても興味深かったのですが、コースが変わったこともあって、その「一体感」よりも「個」が強調されることになりました。

折り返しがなくなってスピードを出しやすくなったことと、すれ違いがなくなったことで、ランナーはそれぞれが自分の世界に入りやすく、自分のポテンシャルを引き出すことに集中しているように見えました。

今年からアディダスのTシャツの提供がなくなったのも、「一体感」よりも「個」が強調された要因のひとつになっているように感じます。それは意図したものなのか、それとも結果的にそうなったものなのかはわかりませんが、昨年よりはマラソン大会に近い雰囲気が漂っていました。

コースも1周1kmで、スタートエリアは声援もあるのですが、その他の場所では応援があまりなかったので、自分と向き合う時間が長くなります。必然的に前へ進む気持ちが大きくなるわけです。もっとも、一体感が完全に失われていたわけではありません。

ラン仲間とグループで参加して、エールを送り合うようなシーンも何度も見かけました。ただ、個人として淡々と走る方や、恋人同士や友人同士の2人組も目立っており、「Wings for Life World Run」の多様化が進んでいるように感じました。

さまざまな属性の参加者が集まるというのは、チャリティラン・イベントとしては理想の形です。誰でも気軽に参加できるイベントになっている証拠であり、おそらく「Wings for Life World Run」に参加するランナーが、これからも増え続ける兆候でもあります。

ベストを尽くすことが誰かを支えることになる

「Wings for Life World Run 2025」はチャリティラン・イベントであり、参加することに意義があります。ただ、参加して走るだけなら、他のマラソン大会と変わりありません。本当に大事なのは、誰かのことを思ってベストを尽くすことです。

今年のコースでは自分の走りに集中できるので、たっぷり時間をかけて自分自身と向き合うことができます。そのときに、自分のことばかり考えるのではなく自分以外の誰かのことを考える。それは脊髄損傷により思うように動けなくなった方でもいいですし、家族や大切な人でも構いません。

個人的なことであるランニングに、誰かを支えるという意味を持たせることで、ランニングの可能性はもっと広がり、しかも走り続けるためのモチベーションにもなったはずです。「Wings for Life World Run 2025」は誰かを支えつつも自分自身をさらに成長させてくれる特別なイベントでした。

「Wings for Life World Run」は、おそらく2026年以降も引き続き開催されます。

今回の盛り上がりを考えると、国内ではさらに会場が増えて参加しやすくなるはずです。オンラインイベントですので、もちろん会場以外で走るのもOK。ちょっとでも興味が湧いたなら、来年のGWは自分の参加しやすい方法で「Wings for Life World Run 2026」に挑戦してみてはいかがでしょう。

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