日本一早い大会レポート「UTMF/STY」

トレイルランナーのあこがれの大会であるUTMFの会場にて

トレイルランナーのあこがれの大会であるUTMFの会場にて

A4富士山こどもの国エイドは夜明けを待っていたかのように振り続けていた雨が一時的に止み、続々と現れるトレイルランナーたちを迎え入れている。ここで半分、そしてここはSTYのスタート地点でもある。

今年のコースは反時計回りに設定されているため、雨が降り続く初日に本栖湖方面に向かい、竜ヶ岳、雪見岳に向かうことになる。この雨への対応がレースの展開を分けるのは間違いない。

幸い気温は想定していたほどは低くない。ぬかるんだ足元をどう克服するか。トップ争いをするランナーにしても完走を目標とするランナーにも共通した課題だろう。

ただし「無事A4エイドまでたどり着ければ」だ。

A4エイドではすべてのランナーが泥だらけでやってきた

A4エイドではすべてのランナーが泥だらけでやってきた

ぬかるんだ坂道の影響で下り坂で大規模な渋滞ができてしまいA3富士宮エイドですでに700人ものランナーがリタイアとなっている。この時点で完走率は50%以下になることが確定した。

無事A3エイドを通過できたランナーも脚に不調を感じA4エイドまで来たところでそこから先に進むことを断念している人が少なくない。それも朝の7時の段階でだ。残り時間はたっぷりあるのにこれ以上先に進むことを諦めるしかない状況にまで追い込まれている。

期待されていたララムリの1人はA3エイドで、もう一人はA4エイドでリタイアしている。

UTMFは雨に弱い。第4回大会にして表面化した大きな問題だ。

アップダウンが激しいコースは天候が良ければ苦しみと喜びを生みだすトレイルとなるのだが、一度雨が降ると追い抜きが出来ない下り坂で、下りが苦手なランナーがボトルネックになる。

衝撃のA3エイドリタイア700人を伝えるホワイトボード

衝撃のA3エイドリタイア700人を伝えるホワイトボード

大会側としては危険な箇所をコース変更したり、関門時間を遅らせるなどの配慮を行ったが効果があったとは言い切れない。いや効果はあったのだろう。もしそれらの対応をしてないければA3エイドで1000人近くがリタイアしていただろう。

このレポートはトップがゴールした後、残り22時間もある状態で書いているのだが、おそらく今回の完走率は30%程度になるのだろう。このあと天候がもう一度悪化すると完走率はさらに下がるだろう。

そんな状況の中、19時間2分14秒でトップでゴールしたリトアニアのジェディミナス・グリニウスの走りは見事というしかない。彼は少し前に開催されたUTMBをゴール手前20km時点でリタイアしているそうだ。

優勝者のジェディミナス・グリニウス選手のゴール直前

優勝者の

それぐらい自分をコントロールできなければワールドクラスのトレイルレースでは勝てないのだろう。どんな状況でも安定して自分の力を発揮し、異変を感じたときは迷いもなく身を引く。

それはまるで雪崩を察知する登山家のようでもある。自然の中を駆け抜けるトレランと歩き続ける登山は結局のところ求められるのものは同じのなのかもしれない。一流のナチュラリストでなければ山は制せない。

並走者はライバルでもあり、仲間でもある

並走者はライバルでもあり、仲間でもある

どんな悪天候だろうと山に適応する力があれば走りきれるのだと彼は証明した。今回のレースで求められるのは速く走る技術ではなく、状況に適応することのできる技術だった。この結果をわたしたちはどう受け止めるべきなのだろう。

今回の結果を受けてUTMFの事務局はどのような対応をするのか、そしてトレイルランナーは来年に向けてどんな準備をするのか。トレイルを愛する者のひとりとして、今後の展開が楽しみな大会となった。

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