日本一早いマラソンレポート「第65回勝田全国マラソン」

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日本のマラソンブームはようやく10年というところで、だいぶ成熟してきたように感じていますが、勝田全国マラソンのような大会に足を運んでみると、マラソンが日本の文化になるにはまだまだ時間がかかるのだと知らされます。

ひたちなかの勝田には文化としてのマラソンがあり、街をあげての大イベントとしてのマラソン大会というのはこういうものなのだと教えられます。

もちろん、ひたちなかでも走らない人はいるのでしょうが、おそらく勝田全国マラソンを知らない人はいないのでしょう。地元の夏祭りの開催を住民のほとんどが知っているように、勝田全国マラソンも誰もが知る冬の風物詩として開催されています。

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そういう状態になって初めてマラソンは文化になるのでしょう。東京マラソンはメディアの影響もあって注目度は高いですが、マラソンに関係のない東京の人たちにとっては、都内で開催される数多くのイベントのひとつに過ぎません。東京マラソンですら、文化としてのマラソンには遥か遠いというのことがわかります。

65年の歴史がつなげてきたものは、決してブームなどに左右されるものではなく、ブレることなく自分たちのスタイルを貫き通しています。フルマラソンの参加費が6000円、高校生は3000円。

驚くことは高校生が参加してもいいというそのスタンスです。ほとんどのマラソンは18歳以上からしか参加させてもらえません。高校生にはフルマラソンは負荷が大きすぎるからという理由があるのですが、勝田全国マラソンではそんなことは関係なく、走力があるなら走ることを認めてもらえます。

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参加費の安さもマラソンはビジネスではなく、市民の健康を守るために行っているのだという思いが伝わってきます。最近は参加費が1万円を超える大会が増えてきましたが、マラソン大会は本来これくらいの費用で走れたはずです。

それほど高くない参加費は、「出てみようかな」という気持ちを促し、そのために参加する人は練習をして健康になる。その結果として医療費や介護費などの削減を期待できます。市が市民に走るきっかけを与える。それが勝田全国マラソンです。

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その証拠にこの大会の10kmの部は、なんと1万人の参加があります。10kmの部にわざわざ遠征してこようというランナーはかなり少数派ですから、1万人近いランナーがひたちなか市周辺から集まってきたわけです。

ひたちなか市の人口は15.7万人で、隣の水戸市の人口は26.9万人。それに比べると1万人なんてほんの少しと思うかもしれませんが、10kmとフルマラソンを合わせて2万人なら、東京23区の930万人のうちの3万人よりは、かなりの比率で知り合いの誰かが出場している状態です。

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もちろんマラソン大会の参加費が安ければいいというものでもありません。ただし、走ることがあたり前であればわざわざ完走メダルを用意する必要はありません。参加する人たちは、完走できる力があることを確認するために勝田全国マラソンを走るわけです。

勝田全国マラソンは4時間半を超えると交通規制が解除されて、信号待ちをする必要も出てきます。でもそれも含めて勝田全国マラソンですので、毎年出ている人にしてみれば、別に不満に感じることもなく、「4時間半を超えたから当然」と思えるわけです。

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この文化を知らないランナーが、勝田全国マラソンを走ると不満を感じることが多いかもしれません。新興の華やかなマラソン大会に比べるとあれもこれも足りないし、もっと改善すればいいのにと思うかもしれません。

でも勝田全国マラソンはそもそもの、スタンスが違うわけです。ブームに乗っかって始まったマラソン大会ではありませんから、そこには一本筋の入った歴史と文化があります。

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そしてそれらをサポートする企業の本気度も、やはり他を圧倒するものがあります。日立のお膝元ということもあり、日立がかなりの負担をしているのでしょう。読売新聞もとても力を入れています。他の地元の大きなお店から小さなお店魔まで、ほとんどのお店が大会に協力的です。

勝田全国マラソンが描くマラソン大会の理想像に賛同し、自分たちの利益を地元に還元することでより暮らしやすい街づくりに協力しています。その結果として若い人たちがひたちなか市を離れていくことを防ぎ、良い人材を企業や地元に残すことができるという良い循環を生み出しているように感じます。

最近はスポンサーを集めきれずに苦労しているマラソン大会が多いようですが、目先のことばかり考えるのではなく、10年後20年後のビジョンを持って運営を行えば、スポンサーというのは自然とついてきてくれるのかもしれません。

完走メダルがあって、たくさんの警備を雇って、交通規制も最後まで行う。そこまでしているのに参加者の評判がいまいちの大会の関係者は、一度勝田全国マラソンを視察されるといいかと思います。

マラソン大会に本当に必要なものに気づかせてもらえるはずです。

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とても走りやすいコースで、力のある人は自己ベスト更新を狙いやすい大会ですので、全国各地から勝田全国マラソンにランナーが集まってきますが、勝田全国マラソンの本質はやはり地元重視ということに尽きるのではないでしょうか。

もちろん全国に門戸を開き、フルマラソンとしては珍しい10時30分という遅い時間でのスタートをすることで、関東各地から参加しやすくしています。ただそれは、まずは地元を大切にするというベースがあってのこと。

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その上でひたちなか市という街を全国の人に知ってもらいたい。マラソン大会を活性化させるためにも遠征してくるランナーをしっかりと受け入れて、大会をマンネリ化させないという長期的なビジョンも見ることができます。

大都市マラソンもとても華やかですが、勝田全国マラソンのような歴史のある大会もランナーなら一度は体験しておくといいかと思います。マラソン大会とはそもそも何のためにあるのか、ランナーはなぜ走るのか、そのひとつの理由に触れることができるはずです。

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足りないものを感じるかもしれませんが、本当に足りないものはなにもない大会。勝田全国マラソンはコンパクトでしっかりとした運営が行われています。器をやたらと広げるのではなく、身の丈を知り、自分たちができることをきちんと行う。

50年後、こういう大会が日本の各地で開催されるようになったとき、マラソンは本物の日本の文化になっていくのかもしれません。そんな未来を一足先に体験できる大会。それが勝田全国マラソンです。

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