今年、大きな地震のあった台湾の花蓮。そこで暮らす人たちの生活は落ち着いたと聞いていますが、ランナーとしてできることがないだろうかということで、RUNNING STREET 365ではスタッフが花蓮太平洋縦谷マラソンを走ってきました。
今回記事にすることでことで、来年以降に行ってみようかなというような日本人ランナーが増えることを願って、花蓮太平洋縦谷マラソンのレポートを仕上げます。先に結論だけを書いておくと、旅ランとしてとても充実した時間を過ごすことができ、来年も参加したいと考えています。
花蓮太平洋縦谷マラソンそのものは、とてもシンプルな大会です。ハーフマラソンを走ったのは1134人、フルマラソンで410人で定員を大きく割り込んでいます。ハーフマラソンの募集人数が2000人で、フルマラソンが1000人であることを考えるとかなり少なめです。
ただ、例年これくらいの参加人数なのか、それとも今年は自身の影響があったからかは分かりません。とはい、今年の開催日も数日前から少し大きな地震が数回発生しており、エントリーはしたものの、参加を見合わせた台湾人ランナーも多かったかとは思います。
しかもスタート時間は雨。気温は19℃くらいありますので、それほど冷たさは感じませんが、フルマラソンのスタート時間は6時30分。会場までの送迎バスが市街地から出ているのですが、そのバスの最終が5時20分ですので、外はまだ暗い状態です。
12月の台湾というのは乾季にあたりますが、台湾北部は雨になりやすい時期らしく、今年は台北マラソンも雨でしたので、おそらく花蓮太平洋縦谷マラソンも雨になる確率が高いのかもしれません。雨を想定して荷物預けのテントが用意されていましたし、運営もしっかりしています。
逆に晴れてしまったときに、かなり気温が上がりやすい大会になりそうではあります。26℃くらいになることもあるはずです。ただ、晴れたら青空と太平洋のコントラストを楽しむことができますので、それはそれで見事な大会になるはずです。
自転車道の一部を使うなどしますので、コースのほとんどは海岸線沿いです。おそらく日本が統治した時代に開拓された道がベースになっているのでしょう。前日に89歳になる台湾人のおじちゃんに話を聞いた後でしたので、感慨深いものがあります。
とはいえ、コース上で声援を受けることはほとんどありません。民家がある場所では応援しえくれる人もいますし、ランニングウェアに日の丸をつけていれば、多くの台湾人ランナーが声をかけてくれます。それでも、日本でこれだけ声援のないマラソン大会はないかもしれません。
街には花蓮太平洋縦谷マラソンの広告は出ているものの、ランナーでもないかぎり基本的には大会に興味もないといった雰囲気があります。そのわりには、花蓮の街にはスポーツショップが多く、ミズノやアシックスなどの日本のランニングシューズも売られています。
走る文化はあっても、応援するという文化はそれほどないのかもしれません。もっとも花蓮太平洋縦谷マラソンには5kmや10kmもありますので、応援よりも走ることを選ぶのかもしれません。
コースは前半と後半にフラットな部分がありますが、フルマラソンは折り返し地点の標高がやや高めで、ハーフマラソンの折返しを過ぎて川を渡ってから緩やかに上り続け、折り返してからは下り基調になりますので、前半はやや押し気味に入って、後半に粘るとタイムが出ます。
ただし、歩いてしまうととにかく退屈になるので、できるだけ集中力が続くうちにゴールするのを目指したいところです。フルマラソンの制限時間は6時間30分ですが、最後まで歩かずに走りきれる走力がないのであればハーフマラソンがおすすめです。
そうでないと孤独さを感じながら走ることになり、ただただ苦痛にしかなりません。
ハーフマラソンよりもフルマラソンのほうが景色もいいのが間違いありませんが、「走れる」ことがやはり重要です。まわりに誰もいないような状態でゴールを目指すというのは、かなりの精神修行になります。
ハーフマラソンはフルマラソンよりは参加者が多く、最後まで気持ちよく走れますし、ゴール後には大会会場で振る舞われている豚の丸焼き料理もいただけます。フルマラソンで比較的上位でゴールしたRUNNING STREET 365スタッフは、豚の丸焼きにはありつけず……
ただ、ハーフマラソンのゴール時にはとても混雑するようで、お土産のお菓子をもらうにしても、お弁当をもらうにしても行列になっています。また、チップは回収され100台湾ドルのデポジットが戻ってくるかランニングソックスと引き換えてもらえますので、忘れないようにしてください。
日本の大会のように動線がしっかりしているわけではありません。ゴール直後には完走メダルをもらえますが、それ以外はすべて自分で判断しなくてはいけません。ただ、ゴール付近にいるスタッフの台湾人はとても親切で、写真を撮ってくれたり、水をもってきてくれたりします。
こういう親切に触れられるのが台湾の素晴らしいところであり「また来なくては」となる理由でもあります。とにかく日本人に対して優しく、積極的に日本語で話しかけてくれます。現地の人ととの距離の近さは台北マラソンの比ではありません。
とはいえ、総合的に考えればマラソン大会そのものは凡庸です。東京マラソンのような華やかさは一切ありません。42.195kmのほとんどを自分と向き合う時間に使います。でも、RUNNING STREET 365としておすすめしたいのは、花蓮の街が魅力的だからです。
花蓮には台湾東部最大の夜市である、花蓮東大門国際観光夜市があります。自然美が美しい太魯閣峡谷(タロコ峡谷)やエメラルドグリーンの海が広がる七星潭もあります。日本統治時代の建物や、当時の歴史にふれることもできるので、観光地としての楽しさもあります。
ただ、それ以上にすごいのは食べ物が美味しいということです。食べ物の美味しいというのは人それぞれですので、絶対に美味しいとは言いませんが、ほとんどの日本人はそのクオリティの高さに驚くはずです。台北も美味しいものが多いのですが、花蓮は美味しいものしかない感じです。
しかも、台北と違ってなぜか洋食系が多く、朝ごはんにはサンドイッチや紅茶を口にしますし、イタリアンのお店もたくさんあります。おすすめしたいのは、カフェでのコーヒーとケーキ。これはもう絶品で、このためだけに花蓮に来てもいいと思うほどです。しかも台北よりも安いわけです。
観光スポットもあり、美味しいものもあって、そのうえでマラソンも走れるわけです。苦しいレースになりやすいのですが、雨が降れば自己ベスト更新も狙うことができます。でも、前日にお腹いっぱい食べてしまうでしょうから、やっぱりランはおまけくらいに考えておきましょう。
花蓮太平洋縦谷マラソンは走ることよりも、食べることをファーストチョイスになってしまいますので、どうしてもフルマラソンを走りたいのでなければ、ハーフマラソンがおすすめです。
でも、ここだけの話ですが、今年の36〜45歳の優勝タイムは3時間25分23秒。46〜55歳は3時間23分10秒ですので、その気になれば優勝争いが出来てしまいます。今年は参加者が少なかったからかもしれませんが、これってちょっと魅力的じゃないですか?
ちなみにRUNNING STREET 365スタッフはフルマラソン年代別8位です。88人しかいないんですが……。でもサブ3.5を狙えるランナーなら表彰台に上がれる可能性は大いにありますので、ぜひ人生初のフルマラソン表彰台を狙ってみてはいかがでしょう?(来年のレベルが高かったらごめんなさい)