ランニングショップに行くと、ものすごい数のランニングソックスが並んでいます。アディダスやナイキといったスポーツブランドのソックスだけでも数種類あり、R×Lやtabioといった最新機能が詰まったソックスもあります。
これだけソックスがあると悩んでしまいます。よく分からないけど高機能なものを選ぶという人もいますし、こだわりがあって選んでいる人もいますよね。でも、ランニングシューズと比べるとやや軽視されている感は否めません。
ところがランニングソックスは、レース結果を左右する大きなアイテムのひとつです。アトランタオリンピックで、小出監督が素足でシューズを履きたいと言った有森選手にソックスを履かせて3位に導いたのは有名な話です。
ただ、アトランタオリンピックのときとは時代が大きく変わり、今はソックスを履くか履かないかではなく、どのソックスを選ぶかという時代になっています。そんな時代にあって、ランナーはどんなソックスを選べばいいのでしょう。
基本となるのは薄手のラウンドタイプ
ソックスを選ぶときに基本となるのは、薄手のスタンダードなラウンドタイプです。アーチサポートも必要ありません。五本指ソックスである必要もありません。特に練習で履くシューズには機能性を持たせないものをおすすめします。
練習はレースのためのカラダづくりをするためにあります。アーチサポートなどに頼っていたのでは、いつまで経っても走れる足を作ることができません。
ただし、足裏に滑り止めはあったほうがいいかもしれません。これはソックスにもよりますが、薄手のラウンドタイプの場合、滑りやすい素材を使っていることもあり、シューズの中でブレてしまうことがあります。
これは走りのロスに繋がりますし、ケガを誘発する可能性もあります。しっかりと足にフィットしつつも、シューズ内でぶれないソックスが理想です。
五本指ソックスを履くときの注意点
基本は薄手のラウンドタイプとお伝えしましたが、最近は多くのランナーが五本指ソックスを選んでいます。地面をしっかりつかめる。足が蒸れにくい。いろいろ理由はあるのですが、五本指ソックスには大きなデメリットがあります。
もし手元に五本指ソックスがあったら、それを履いて前屈してみてください。次に裸足で前屈をしてみると、多くの人はその違いに驚くはずです。裸足のほうが明らかに下まで手が届きます(個人差があります)。
これは五本指ソックスを履くことで、足の指が浮いてしまうことが原因です。
五本指ソックスを履くときは、指の根本までしっかり入れるのではなくある程度の遊びを作っておくと足の指が浮くのを防ぐことができます。地面をつかめているつもりで、実は全然つかめていないことが多いので注意してください。
もし前屈をして裸足と同じように下まで手が伸びるなら、その五本指ソックスとの相性がいいのでしょう。気にせず履き続けても構いません。遊びを作ってもまだ裸足との差が大きいという人は、五本指ソックスが向いていません。
本当に五本指ソックスのほうが走りやすいのか、足の指の感覚を確かめてみて、できればラウンドタイプに戻すことをおすすめします。
ロングソックスを選ぶときの注意点
最近は、マラソンでもロングソックスを履くランナーが増えてきました。ふくらはぎに圧がかかって、疲労が溜まりにくいというのがその理由ですが、タイムを追うのであれば、ロングソックスはあまりおすすめしません。
少し前に、ランニングタイツの話(「ランニングタイツはどのレベルに到達すると不要になるのか」)をしましたが、ふくらはぎの筋肉をポンプにして血液を心臓に戻しているランナーがふくらはぎに圧を掛けると、上手く血液を送れなくなることがあります。
ロングソックスを履いたほうがいいタイムが出ると分かっているなら、ロングソックスを履いてもいいのですが、フルマラソンで4時間を切るようなタイムで走るなら、ふくらはぎを露出しておいたほうが走りやすく感じるはずです。
ゆっくりと長い距離を走る場合にはロングソックスもいいのですが、ある程度スピードを出す場合には、あまり機能性に頼らずに、自分の体の機能をフル活用にして走るようにしましょう。
ソックスは同じものを揃える
ソックスの選び方について少し触れましたが、身も蓋もないことを言えば、ソックスは何でも構いません。実はどのソックスを選ぶかよりも、もっと大事なことがあります。それは、常に同じソックスを履くということです。
練習用もレース用も同じ。1足である必要はありません。同じメーカーの同じモデルを数足分用意しておきましょう。
なぜなら、ソックスの厚みの違いでシューズのフィット感が変わるためです。薄手のソックスは厚みが1mm程度です。ところが厚手のソックスの場合には2mm以上になっていることもあります。
厚みが1mm違えば、履いたときには左右と上下でそれぞれ2mmの差ができます。これでもかなり大きな差ですが、ラウンドタイプと五本指ソックスとなると、さらに差が大きくなります。
仮に五本指ソックスの厚みが1mmだったとしても、指の間が4ヶ所ありますので、8mmも指先の幅が広がることになります。それだけ違ってくるとランニングシューズの最適な幅も1〜2サイズ違ってきます。
ラウンドタイプのソックスでジャストサイズだったシューズを、五本指ソックスで履くと、やや窮屈に感じるはずです。反対の場合にはフィット感が下がります。
本来はソックスごとにフィッティングをやり直す必要がありますが、そこまでしているランナーさんはほとんどいませんよね。「ちょっとブカブカ」「ちょっときつい」と思ってもそのまま走り続ける。
結果的に、フルマラソンを走ると爪が真っ黒になってしまうこともあります。窮屈な走りが膝などに負担を掛けることもあります。そして、後半の失速につながるわけです。
同じメーカーの同じモデルを揃えておけば、その心配はいりません。常にベストのフィット感で走ることができます。
できることなら、薄手のラウンドタイプで揃えるのが1番ですが、足底筋膜炎気味でアーチをサポートしないと走りきれないというランナーさんもいると思います。だったら、アーチサポートのあるソックスを選んでも構いません。
大事なのは、そのソックスだけを履くということです。色違いで揃えるのは問題ありませんが、違うメーカーの似たようなソックスではなく、すべて同じにしておくことが重要です。
ソックスは重要視されていないアイテムですが、安定していい走りをしたいのであれば、せめて揃えることから始めてみましょう。もちろんシューズを選ぶときには、そのソックスを履いてフィット感を確認してくださいね。