最近はファストファッションもランニング業界に参入しており、安価で高性能を売りに様々なアイテムを販売しています。大手アウトドアブランドで数万円するようなジャケットが5〜6千円で売られているようなこともあります。
自由に使えるお金に限りのある市民ランナーにとって、そうした安価で高性能なウェアの存在はとてもありがたいものですが、トップアスリートが利用しているアイテムへの憧れもありますよね。
その最たるものがGORE-TEX ファブリクスを利用したアイテムです。「防水・防風・透湿」機能を持たせたウェアやシューズの多くに使われているのがGORE-TEX ファブリクスですが、「これいいな」と思って商品を手にとって、値札を見てそっと棚に戻したことのある人もいますよね。
でもトップアスリートの多くは、迷うことなくGORE-TEX ファブリクスを使ったアイテムを選んでいます。特にトレイルランニングをしているトップランナーで、GORE-TEX プロダクトを使っていないという人はほとんどいないはずです。
なぜトップアスリートはGORE-TEX プロダクトを選ぶのか。ここではGORE-TEXの基本的な知識や彼らが選ぶ理由についてわかりやすくご紹介していきます。
GORE-TEX ファブリクスとは
GORE-TEXって名前は聞いたことがあるけど、実はよく知らないという人がほとんどかと思います。まずは基本的なところとして、GORE-TEXがどのようなものなのかについてご紹介していきます。
W. L. Gore & Associatesが製造・販売しているのが「GORE-TEX ファブリクス」と呼ばれる特別な生地です。この生地を使用した製品をGORE-TEX プロダクトと呼びます。少し複雑ですが次のように覚えておきましょう。
GORE-TEXの生地:GORE-TEX ファブリクス
GORE-TEXの製品:GORE-TEX プロダクト
GORE-TEX ファブリクスのもととなるテクノロジーが誕生したのは1969年のことで、ちょうど今年(2019年)で50年ということになります。実際にGORE-TEX ファブリクスを使ったウェアが登場したのは1976年のことです。
この生地には大きく分けて3つの機能があります。
・防風性
・防水性
・透湿性
世の中には、この機能それぞれを持った生地というものはいくつもあります。例えばコンビニなどで売られている透明のレインコートの生地は防水性がありますよね。でもレインコートには透湿性はありませんので、内側に湿気が籠もってしまいます。
湿気が籠もらないようにするには、透湿性を上げる必要がありますが、透湿性を上げようとすると防風性や防水性が下がってしまうという問題があるのですが、GORE-TEX ファブリクスは防風性や防水性を下げずに、高い透湿性を実現しています。
そのような生地で作られたアイテムは、内側に湿気がこもることなく快適に運動を継続できるというわけです。
GORE-TEX プロダクトテクノロジーの鍵はGORE-TEX メンブレンにあり
「防風性・防水性・透湿性」の3つの機能をもたせることができる理由は、GORE-TEX ファブリクスの構造にあります。通常のGORE-TEX ファブリクスは3層構造になっています。
表層:表生地
中間層:風や水を通さず水蒸気を通すGORE-TEX メンブレン(膜)
裏層:裏地
ここでポイントになるのが中間層に使われているGORE-TEX メンブレンです。GORE-TEX メンブレンは無数の小さな穴があいている素材で、その穴のサイズが水の分子よりも小さく、水蒸気の分子よりも大きいため、物理的に水の浸入を防ぎ、水蒸気だけを通すことができます。
通常の防水生地はコーティングをすることで防水性を高めていますが、コーティングは時間とともに劣化していきます。古い傘は雨の日に傘の内側が湿っていますが、これはコーティングが劣化したことによって起こります。
ところがGORE-TEX メンブレンは形状によって水の浸入を防いでいるため、破れたりしない限りは水を通すことはありません。それでいて、ランニング中にかいた汗による水蒸気は外に逃してくれるので、いつも快適な状態を保てるというわけです。
トップアスリートがGORE-TEX プロダクトを選ぶ理由
ゴア社は生地としてのGORE-TEX ファブリクスを、製造メーカーに提供しています。そうして作られたアイテムをGORE-TEX プロダクトと呼びます。通常の生地メーカーは素材を売って終わりなのですが、ゴア社は生地を提供するだけでなく、製品としての機能、品質にまで関わります。
GORE-TEX プロダクトとして用途に応じた、防水耐久性、防風性、透湿性を備えていることを証明するタグをつけられるのは、ゴア社の基準に合わせて行う厳しいテストを通過したものだけになります。
例えばウェアにしたときに、素材そのものは水を通さなくても、縫い目などから水が染み込んでくることがあります。このようなアイテムはGORE-TEX プロダクトとしては認められず、製品になっても「防風性・防水性・透湿性」を維持できているものだけを商品化しています。
ここまで徹底した管理を行っているため、自分を限界まで追い込むトップアスリートはGORE-TEX プロダクトを信用し選んでいるというわけです。
世の中には「防風性・防水性・透湿性」をアピールするアイテムは無数にありますが、その多くが素材として「防風性・防水性・透湿性があります」としているだけで、製品になったときの保証まではおこなっていません。
1分1秒を削り出すトップアスリートにとって、「雨が染み込んできたらどうしよう」といった不安を抱えて競技を行うのは賢明な判断でありません。価格は多少は高くとも不安のない状態でレースに挑みたいランナーなら、GORE-TEX プロダクトというのは当然の選択になるわけです。
GORE-TEX プロダクトはお手入れをすれば長く使える
GORE-TEX プロダクトを使い続けていると徐々に機能性が下がってきたという口コミもありますが、正しくメンテナンスを行えば、GORE-TEX製品はとても長く使い続けることができます。
すでにお伝えしていますように、他社の生地のように表面にコーティングをしているわけではなく、GORE-TEX メンブレンの構造によって水の浸入を防いでいるため(表面には撥水加工をしてあります)、生地が破けたりしない限り、半永久的にその機能が維持されます。
GORE-TEX プロダクトのメンテナンスとして大切なのは、汚れを放置しないということにあります。ウェアにしてもシューズにしても、使ったら洗濯したり、汚れを拭き取ったりすることで長く使うことができます。
ウェアは、基本的に家庭用の洗濯機で洗えるので、洗濯表示に従ってこまめに洗濯するだけで機能性を維持できます。
洗濯をすると防水機能が落ちると思っている人もいるかもしれませんが、それはコーティングタイプの防水ウェアの場合です。GORE-TEX プロダクトはとにかくお手入れが大切で、洗濯をしても防水機能が落ちることはありません。むしろ洗濯をしないでいると快適性は低下することもあります。
このあたりを理解していないと、せっかく高いお金を払って購入したのに「寿命が短い」となってしまいます。寿命だと思っていたGORE-TEX プロダクトを初めて洗濯したら、購入時と変わらない撥水性を取り戻したなんてこともあります。
長く使えるということは、買い替えのサイクルが長くなるということですので、トータルコストはそれほど高くないというメリットもあります。
ランニングアイテムとしてGORE-TEX プロダクトを選ぶときの注意点
とても高機能なGORE-TEX プロダクトですが、ランニングアイテムとして利用するときにはいくつかの注意点があります。
・高負荷でのランニングでは熱がこもることもある
・シューズは靴下から浸水することがある
・伸縮性を考慮してアイテムを選ぶ
この3点がGORE-TEX プロダクトを選ぶときの注意点です。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
高負荷でのランニングでは熱がこもることもある
GORE-TEX ファブリクスは透湿性がありますが、心拍数が上がって大量の汗をかくような場合には、発生する水蒸気の排出が間に合わなくなり、GORE-TEX プロダクトといえども熱がこもることもあります。
GORE-TEX プロダクトなら何でもランニングに適しているというわけではなく、きちんと用途を考えて製品を選ぶ必要があります。値段や着心地、デザインだけで決めるのではなく、ランニング用途に適したGORE-TEX SHAKEDRY™テクノロジー搭載の製品を選びましょう。
シューズは靴下から浸水することがある
GORE-TEX ファブリクスを採用したランニングシューズがあります。小雨の中を走るときや水たまりに足を突っ込むという場合には、GORE-TEX シューズは内部に水を通さないため足が濡れるのを防いでくれます。
ただし、靴下から染み込んだ雨水によって、シューズ内が浸水することもあります。GORE-TEX ファブリクスの生地は水を通さないため、シューズ内部に水が入ってしまうと、そこから抜けないという弱点もあります。
靴下が濡れるような強い雨の日には、ゲイターや防水ソックスと組み合わせるのがおすすめです。シューズの内部に雨水が入ってくるのをそれらによって防ぐことができれば、シューズ内が浸水して不快な思いをすることがなくなります。
伸縮性を考慮してアイテムを選ぶ
GORE-TEX ファブリクスの一般的な生地は伸縮性がないため、商品によってはランニングの動きを阻害することがあります。それを避けるためには、伸縮性の高い生地を使ったアイテムを選びましょう。
これは実際に商品を試着してみるのが1番です。可能であれば少しだけでも走ってみるといいかもしれません。走ってみて自分の可動域で引っかかりを感じる場合には、あまりランニングには適していません。
せっかく高いお金を出して買うのですから、伸縮性の部分も妥協せずに、自分の走りを阻害しないだけの伸縮性を持たせたアイテムを選ぶようにしてください。
GORE-TEX ファブリクスのおすすめアイテム
GORE-TEX ファブリクスを使ったアイテムといっても、かなり種類がありますので、最後にランニングに最適な3つのアイテムをご紹介しておきます。
ミズノ「WAVE RIDER GTX」
ミズノのWAVE RIDER GTXは、人気モデルのWAVE RIDERをベースにGORE-TEXを搭載したフルマラソン対応ランニングシューズです。衝撃吸収性に優れており、フルマラソン後半の失速を回避したいランナー向けの1足です。
サイズ:MEN’S 25.0-28.0cm / WOMEN’S 23.0-25.0cm
価格:15,900円(税抜)
SALOMON「SENSE RIDE2 GTX INVISIBLE FIT」
サロモンのSENSE RIDE2 GTX INVISIBLE FITは、他のシューズとは違い、アッパー素材にGORE-TEX Invisible Fit テクノロジーを組み込んだ、快適性の高いトレランシューズです。クッション性も高く、初めてのトレランシューズとしてもおすすめです。
サイズ:MEN’S 25.0-28.0cm / WOMEN’S 23.0-25.0cm
価格:19,000円(税抜)
mont-bell「ピーク ドライシェル」
モンベルのピーク ドライシェルは、GORE-TEXメンブレンをウェア表面に配置したモデルで、軽量かつ速乾性が高いという特徴のあるウェアです。モンベル独自のカットパターンにより、激しい運動でもストレスを感じることなく体を動かすことができます。