昨年に続いて、今年も花蓮太平洋縦谷マラソンに参加してきました。今回は連載中の「ハダシスト重松・サブ3への挑戦」も絡めているので、レース中の写真がまったくないのですが、この大会の楽しさを伝えられたらいいなと。そして、できれば来年にはもっとたくさんの日本人に走ってもらいたい。
花蓮太平洋縦谷マラソンとは
まずは花蓮太平洋縦谷マラソンについて、少し簡単に説明しておきましょう。花蓮には大きなマラソン大会が2つあります。太魯閣峡谷マラソンと花蓮太平洋縦谷マラソン。太魯閣峡谷マラソンは峡谷を走るのでかなりハードな大会と聞いています。
花蓮太平洋縦谷マラソンは、花蓮の海岸沿いを走る大会です。晴れていれば絶景なのですが、12月の台湾北部は基本的に雨。今年の天気予報は晴れマークでしたが、スタート時には曇り。晴れたのはスタートしてから4時間が経過したくらい。
ただ、晴れることが必ずしもいいことではなく、レースとしては薄曇りもしくは小雨がベストコンディション。12月とはいえ晴れると台湾は暑くなり、20℃を超えることもあります。この日は18℃程度でギリギリ走りやすいコンディションでした。
海岸沿いですが、小さなアップダウンが続くコースで、太魯閣峡谷マラソンほどではありませんが、走りごたえのあるコースがランナーを待ち受けています。
フルマラソンの定員は約800ですが、エントリーがあったのは500人程度、男子は415人です。花蓮はそれほど大きな街ではないというのと、ほとんどのランナーはハーフマラソンを走ります。これは台北マラソンの構造にも似ています。日本はフルマラソンに参加者が集中しますが、これは世界的にも珍しいことです。
いずれにしても花蓮太平洋縦谷マラソンは、台湾の地方都市で開催されるお手頃サイズのマラソン大会です。ただし、運営はしっかりしていますので、安心して参加できる大会です。とはいえ、海外マラソンならではの難しさもあるので、その点も含めてレポートします。
外国人は前日受付でゼッケンを受け取る
花蓮太平洋縦谷マラソンの参加者は郵送でゼッケンやTシャツを受け取ります。ただし、海外への発送をしていないので日本人などの外国人は、大会前日もしくは当日に受け取ります。このアナウンスがフェイスブックページでのみ行われており、少し分かりづらいのが難点です。
受取場所は花蓮駅近くにある観光案内所の前。テントを張っているのですぐに分かります。屋外でものすごく寒そうでしたが、雪山に行くかのような防寒着で、参加者を待ってる姿にグッときます。スタッフが一生懸命になれる大会は街がなくいい大会です。
大会会場へはシャトルバスで向かいます。市内のいくつかの場所から出ていますが、スタートは花蓮駅。満席だと乗れないので、宿は花蓮駅周辺がおすすめです。ただし、観光を考えると花蓮駅周辺はやや不便です。タクシーを使えばどうということはないのですが。
シャトルバスの最終は5時に花蓮駅出発します。このため、日本人が大会に出場するなら前泊が必須条件になるので注意してください。
花蓮太平洋縦谷マラソンの会場ですべきこと
マラソン大会の会場は陸上競技場で、スタンドの一部には屋根もありますので雨でも濡れることはありません。ただし、人が密集しますが。今年は曇り空ということもあり人が分散しましたので、スタンドは快適。
競技場のトイレが半分ほど改修中というのもあり、仮設トイレが10−15基ほど用意されていたので、少なくとも男子トイレに行列はありません。台湾の大会に共通しているのですが、仮設トイレが臭くありません。香りのついた消臭剤を大量に使っているのでしょうが、これは地味に嬉しいポイントです。
会場でするのは着替えと荷物預けだけです。台湾では共通の荷物預け専用のバッグがあるのですが、今年の花蓮太平洋縦谷マラソンでは、参加賞に専用バックがついていました。一緒に行った2人の日本人は専用バックを持ってなかったので、かなり助かったとのこと。
昨年はこのバッグがなく、参加者には地元のお菓子がついていました。地震の影響で参加者数が少なくて、バッグを作れなかったのかもしれません。そのときのベストを考えてくれている感じが伝わってきます。
更衣室もありますが、上に羽織っているウェアを脱ぐだけですので、ほとんど誰も更衣室を使いません。フルマラソンのスタートは6時30分なのですが、それまでステージでダンスや体操があり、あっという間に時間が過ぎていきます。
陸上競技場なので、トラックを使ってアップもできます。スタート前に荷物預けをしたら、競技場外のスタート地点に移動します。動線がいまいちですが、誰も文句を言わないのが台湾らしくて素敵です。
ちなみにスタートブロックはありません。このため、上位入賞を狙う人や目立ちたい人が前に行きます。500人ですから、ブロックはなくても問題ありません。ただ、入賞を狙いたいなら前側に並びましょう。横から入っても誰も怒ったりはしません。
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2019年大会は強風が難敵に
2018年大会しか知らないので例年がどうなのかはわかりませんが、2018年は雨が降ってはいましたが風はほとんどありませんでした。2019年は雨がやんだものの、かなりの強風が吹き荒れます。大会の旗がバタバタと音を鳴らすくらいの風。
風の向きは往路が追い風、復路が向かい風という難しい展開。しかも35m程度の高低差があります。海岸線でも緩やかに上っているか下っているかのどちらか。風の影響もあって、ペースがまったく安定しません。
ペースを維持することが難しいので、もしかしたらGPSランニングウォッチなどなかったほうがよかったかもしれません。いつもの感覚で走ろうとした人の多くが、後半に失速していきました(もちろん私もです)。
行きはよいよい帰りは怖い。22kmの折返しを回った瞬間に、吹き飛ばされるかのような強風と向き合うことになります。「ここはがまん」としたいところですが、風に関してはここから41km地点までがまんです。
とにかく心を折らずに耐えるしかありません。
景色を眺めている余裕などありません。ただ、ときどき横目にちらりと海を見ると大荒れになっている太平洋が視界に入ってきます。昨年は「この先に日本がある」とか「日本統治時代はこの海を日本人が行き交ったんだな」なんて思う余裕がありましたが、今年は風に飛ばされないようにするしかありません。
ただ、そういった難しさがあるのもマラソンの醍醐味です。簡単ではないから自分の弱さを知ることになり、簡単ではないからまた挑みたくなる。花蓮太平洋縦谷マラソンはそんな気持ちを思い出させてくれる素敵な大会です。
ただ距離表示だけは残り5kmからのカウントダウン以外は適当です。2kmぐらいズレている場所もあり距離表示の意味をなしていないので、自分のでGPSランニングウォッチを信じてください。来年は改善されているかもしれませんが。
帰ってきたらお弁当と豚の丸焼き
強風に負けずにゴールをしたら(もしくはDNFしたら)、フィニッシュエリアで完走証を受け取ります。昨年は競技場内だったような気がしますが、芝生エリアを使わないようにしたのか、会場内のレイアウトがいろいろ変更されており、結果的にゴールしたらすぐに、自分のタイムがわかります。
競技場に戻ってきたら、預けた荷物を受け取ります。その後にチップを返却します。チップを戻すと100台湾ドルが返ってきますが、ソックスや石鹸などと交換することもできます。何も考えずに返金を選びましたが、石鹸にしておけばよかったとちょっと後悔しています。
チップを返したら、水とお弁当を受け取ります。そして希望者は豚の丸焼きをカットしてもらいます。昨年は1匹だけでしたが、今年は参加者が増えたのか3匹も丸焼きされていました。でも、最後には足りなくなりそうで……台湾人の食欲がすごい。
戻りは花蓮駅までシャトルバスが出ています。14時まで出ているので帰りは余裕があります。ただし途中下車ができないので、夜市近くに宿をとった人はタクシーを使って戻るのがベストです。私は昨年、歩いて戻っていたら目の前に車が停まって、地元のおばちゃんが「乗っていきなさい」と……
そういう経験をしたので、また花蓮太平洋縦谷マラソンに戻ってきたわけです。花蓮はとにかく人が優しくて、居心地がいい街です。何もない街なので観光スポットも限られていますが、私たちが手放してしまった日本人の心が花蓮には残っています。
日本人がこんなにも歓迎される街というのは、そうは多くありません。タクシードライバーも小籠包屋さんのおばちゃんも、みんな日本人だというだけで、笑顔になってくれる街。タクシーの運転手さんが「もっと日本人に来てもらいたいな」とこぼしていました。
花蓮太平洋縦谷マラソンがそのきっかけになるといいのですが。RUNNING STREET 365はもちろん来年も取材予定です。昨年に続き沖縄の八重山から数名のランナーが派遣されていましたが、一般のランナーが増えることを期待しています。
来年の募集が始まったら、また詳細をご紹介します。台北も素敵な街ですが、花蓮は本当に居心地がよくてマラソンも走り応えがあります。台北マラソン以外にも台湾のマラソンを走ってみたいというランナーさんは、ぜひ来年のスケジュールに加えておいてください。