世間で何かと話題になっている厚底シューズ。マスコミが面白おかしく取り上げて、薄っぺらい情報を流すので「ピンクのシューズを履けば自分も速く走れる」と思って購入する人もいるようですが、ちょっと待って下さい。
ナイキのヴェイパーフライは確かに速く走れるランニングシューズですが、誰にでも合うわけではありません。実際に、大阪国際女子マラソンでは薄底シューズの松田瑞生選手が優勝しました。そして、何よりも速いタイムで走れることと、速く走れるようになることは違います。
そんなことは中級者以上ならみんなわかっているかと思いますので、ここではまだランニングに関する情報がそれほど多くない、初心者のためにランニングシューズの選び方について解説していきます。
速いタイムで走れることと、速く走れるようになることは違う
まずとても大事なことをお話しておきます。マラソンにおいて速いタイムで走れることと、速く走れることは同じ意味ではありません。この部分を勘違いする人が多いので、まずはこの点について解説していきます。
そもそもランナーは、過去の自分を超えていくことを目標に頑張っていますよね。初マラソンが4時間10分だったから、次はサブ4を狙いたい。そういうとき、サブ4を達成することが目的になりがちですが、本質の部分でいえばサブ4で走れる自分に成長したいはずです。
だからサブ4を達成するのに、いわゆる速く走れるシューズを履くというのは、まったく意味がありません。シューズのおかげで速く走れたのか、それともトレーニングの積み重ねで速く走れたのか見えなくなってしまいます。
もしシューズのおかげでサブ4を達成して、それを心から喜べますか?速く走れるシューズを選ぶことは悪いことではありません。でも、それで速いタイムを出せても心にモヤモヤが残るだけです。
トップアスリートは命を削って1秒を縮めています。そういう領域の人たちは結果がすべてですので、使えるものは何でも使います。でも、わたしたち市民ランナーはそうではないはずです。使えるものは何でも使っていいのですが、その結果、自分が成長していなければ満足できないはずです。
まずはこの考え方をしっかりと頭に入れておいてください。
長い距離を走りたいなら厚底シューズがおすすめ
厚底シューズはスピードが出ることばかり話題になっていますが、実際には疲れにくいという部分に大きなメリットがあります。それはナイキのヴェイパーフライに限らず、他のメーカーのランニングシューズでも同じです。
十分なクッション性があり、さらにシューズが吸収した衝撃を推進力に変えられるような構造になっているので、ランニングエコノミーが高く、これまでよりも小さな力で同じスピードを出せるようになります。
小さな力で走れるので足にかかる負担が軽くなり、後半で失速しにくく、さらに翌日にも疲労が残りにくいというメリットがあります。これはそのまま、ケガを回避することにつながります。多くのランナーがケガを経験しているわけで、それを回避できるというのは大きなメリットです。
このため、走力がまだ足りてないけどフルマラソンにエントリーしてしまったというランナーは、厚底シューズでレースを走るのがおすすめです。
足を鍛えたいなら薄底シューズがおすすめ
RUNNING STREET 365ではこれまでも、マラソンとの向き合い方としてゆっくりと時間をかけて走れる体を作れるようになることが大事だと伝えてきました。厚底シューズが主流になった今でもその考え方は変わりません。
ですので、初心者のトレーニングで履くシューズは、衝撃吸収性が劣る薄底のランニングシューズを勧めています。衝撃吸収性が低いので、最初は長い距離を走ろうと思っても、足が痛くなって走れません。そこで無理に走るとケガをしてしまいます。
だからみんな厚底シューズを選ぶわけですが、本当は走れなくなったところで、トレーニングを終了させるのが正解です。最初は5kmが限界かもしれません。でも、そこでしっかりと休養を取れば、次は5km以上走れるようになっています。そうやって徐々に走れる距離を伸ばすのが、正しい成長方法です。
厚底シューズほど足を守ってくれないから、それだけ足を鍛えやすく、そして何よりも足を守るために着地が上手くなります。厚底シューズは雑な着地でも衝撃を吸収してくれますが、薄底シューズはそうもいかないので、足を守るために自然と柔らかい着地を身に着けられます。
ソールの厚さよりもフィット感が大事
ランニングシューズを選ぶ基準が、いつの間にか「厚底」「薄底」になっていますが、本当に大切なのは自分の足にフィットしているかどうかです。どんなに素晴らしいシューズでも、足に合っていないといい走りはできませんし、悪いクセがついてしまいます。
大阪国際女子マラソンで優勝した松田瑞生選手は外反母趾で、ナイキのヴェイパーフライが合わないということで、ニューバランスのオーダーメイドシューズを着用していました。それくらいランニングシューズのフィット感というのは大切です。
試し履きをしてみて、親指や小指の付け根が圧迫されていないこと。爪先に少し余裕がある状態で、アッパーが足を包み込むようになっていること。この2点を確認してください。窮屈なものやブカブカしすぎているものはNGです。
ちなみに試し履きするときには、普段使っているランニングソックスを持参してください。ランニングソックスの厚みが少し変わるだけで、フィット感は大きく変わります。特に五本指ソックスを履いている人は、ラウンドタイプと足幅が大きく異なるので注意しましょう。
ランステでレンタルしてから決めるのがおすすめ
ランニングシューズをお店で買う場合、実際にシューズに足を入れることができますが、そのランニングシューズで気持ちよく走れるかどうかは、走ってみないことには分かりません。でもお店で走るわけにはいきませんよね。
そこでおすすめしたいのが、シューズレンタルをしているランステです。MARUNOUCHI Bike&Runならリーボックの最新シューズを借りられますし、都内ならジョグリスでアシックスのランニングシューズレンタルができます。
ランステとレンタルシューズメーカーの組み合わせ
ASICS RUN TOKYO MARUNOUCHI:アシックス
ジョグリス:アシックス
ラフィネランニングスタイル:ナイキ
MARUNOUCHI Bike&Run:リーボック
ラフィネではなんと話題のヴェイパーフライも借りられます。実際にいくつか試してみて、気持ちよく走れるシューズを選んでください。このとき厚底と薄底の違いについて頭に入れておくと、より選びやすいかと思います。
まとめ
初心者にとってとても重要なランニングシューズ選びですが、ほとんどの人が店員さんに勧められるまま購入しているかと思います。ランニングシューズに詳しい人がいる専門店の店員さんならいいのですが、ランニングをほとんどしたことのないアルバイトさんが対応するようなこともあります。
そういう人が必ずしも正しい知識を持っているとは限りません。初心者にはメーカーが決めた初心者用シューズを勧めておけばいいと思っている店員さんもいるので、本当に信頼できる人なのか見極めなくてはいけません。
そのためには、自分なりにきちんとランニングシューズに関する知識を入れておく必要があります。とはいえ、そんなに難しいことはありません。ここでご紹介した内容をもとに、ランステでシューズレンタルをして試してみる。
それで気持ちよく走れれば、それでOKです。
大事なのは流行りや他の人の意見に流されないことです。自分なりの考え方をしっかりと持っておけば、シューズ選びを失敗してもそれがいい経験になり、次につながります。最初は周りの人に相談するのもありですが、最終的にシューズを選ぶのは自分です。自分の足のために、自分で責任を持って選びましょう。