今年でなんと50回目の開催となる洞爺湖マラソン。参加者の多くが自分の生まれる前から開催してることになるわけですが、ここまで続いてきたのには理由があるはずで、その理由を知りたくて、大会にエントリーして走ってきました。
大会当日は快晴。風景としてはやや霞がかかっている状態でしたが、強い風もなく、気温がやや高いのを除けば絶好のコンディション。まるで50回の記念大会を祝うかのような天候のもと、全国から集まったランナーとともに走り出しました。
アナウンスが少ないけど困ることはない
今回は前日に札幌でRed Bull 400に出場したのもあって、札幌から洞爺湖まで早朝に出発するバスを予約しました。受付時間が5時10分から20分ということで、起床時間は4時30分。Red Bull 400の興奮が残っているのか、それとも寝坊できないプレッシャーからか、1時間おきに目を覚ますという……
とはいえ会場までは2時間半以上かかるので、バスで移動しながら寝不足は解消。正直いえば、洞爺湖に前泊するのが理想。なんだったら後泊もして、洞爺湖温泉を満喫してもらいたいところです。ただ、それが難しい人はツアーバスがあることを知っておくといいでしょう。
バスは8時10分に大会会場へ到着(スタート時間は9時)。昨年はほとんど準備時間がなかったとのことなので、今回は運が良かったのかもしれません。ただ、バスを降りてどこに向かえばいいのかわかりません。事前に調べておけば済むことですが、生まれついての面倒くさがり屋なので。
とはいえ、参加者の多くが常連さんなので、とりあえず流れについていけばOK。まずは着替えて、荷物を預ける流れですが、着替えは脱ぐだけにしておいたので、更衣室には行かずにその場で抜いて荷物を預けました。その後、スタート会場に向かいますが、これもアナウンスはありません。
とりあえずついていくというスタンスで乗り切れますが、都市型の至れり尽くせりタイプの大会に慣れていると、アナウンスされないこと、誘導が足りてないことに対して物足りなさを感じるかもしれません。アナウンスが足りてないから、どこから並べばいいかもわかりません。
トイレも自然と行列になっていましたが、列をコントロールしていないから、Eブロックの待機場所と重なって、少しカオスな状態に。でも、多くの参加者はそれを当たり前のようにしているようで、もしかしたらアナウンスが多くないほうが、地元の人にしたら「普通」なのかもしれません。
自分と向き合う時間が90%以上
洞爺湖マラソンは洞爺湖をぐるっと1周走るマラソン大会です。ただ1周は37kmくらいしかないので、スタートから時計回りに2.5km走り、そこで折り返してスタート地点でもある洞爺湖温泉エリアに戻って、反時計回りに走ります。
洞爺湖温泉エリアは沿道の声援がありますが、その他のエリアは一部を除き、緑のトンネルを走り続けます(空が開けているところも多々ありますが)。ここが洞爺湖マラソン最大の特徴になります。洞爺湖マラソンは東京マラソンのような途切れない声援を期待できません。
その代わり、ひたすら自分と向き合う時間になります。大自然に囲まれてるとはいえ、感動するほど美しい場所は限られていて、そのようなエリアでは、自分の体の声を聞き、微調整をしながら走ることになります。もしくは自分と向き合う時間になります。
これを退屈と感じる人もいるかもしれませんが、これだけスピード化や効率化が進んだ時代において、数時間ずっと自分のことを考える時間にできるのは、かなり贅沢なことです。そこで新しい気づきが生まれる人もいるはずです。
コースはやや狭く、最初の4kmくらいは無理な追い抜きができません。歩道を上がって追い抜きをしている人がいますが、応援の人や、地元の人たちとの接触リスクがあるので、洞爺湖マラソン以外でも絶対にやらないようにしてください。
コースは湖畔を走るため小さなアップダウンが繰り返されます。そのアップダウンと変わっていく景色により、退屈さを感じないのも洞爺湖マラソンが人気の大会になっている理由のひとつなのかもしれません。ただ気温が高くなると、タイム狙いをするのが難しいコースでもあります。
欲しいところにエイドがあるのは経験値の高さのなせるわざ
洞爺湖マラソンのレポートをする上で欠かせないのがボランティアスタッフの存在です。コースの折り返し部分の切り替えや、エイドなどで、かなり大きな声で声援を送ってくれます。その声に背中を押してもらった人もおおいはす。
そのエイドですが、この暑さを最初から想定していたかのような配置で「そろそろ給水したい」と思うところに、きちんと配置されているのは、50回の歴史がなせるわざ。これまで、暑かった日も雨の日も何度も経験してきたのでしょう。
5月とは思えないような気温の高さだったにもかかわらず、おそらくエイドでコップ不足やドリンク不足も起きていません。部分的にドリンクを注ぐのが間に合っていない場所もありましたが、その後ろのテーブルにはちゃんとドリンクがあったので問題ありません。
ただ「後ろにもあります」の声かけが足りてなかったのは、やはり先述のアナウンス不足につながります。さらに最初のエイドが折り返した後にあるのですが、往路で撮りにいく人がいて、折り返してきた先頭グループに接触しそうになっていました。
それもやはりアナウンス不足。「このエイドは復路用です」と言えばそういうことも起きませんでしたし、アナウンスできないならロープを張るなどしないと安全を守ることができません。そういうことを積極的にできる現場監督のような立場の人が不足しているように感じます。
もっとも、今でも上手く回っているとも考えられます。50年も問題なくやってきたのであれば、何かを変える必要がないと思って当然です。でも、変わっていかなければ生き残れないのも事実。第50回の記念大会を経て、これから洞爺湖マラソンがどう変わっていくのか、楽しみです。
強烈な個性はないけどまた走りたくなる
忖度なしでレポートすると、洞爺湖マラソンには景色以外の魅力が少なく、同じ景色を売りにしているオホーツク網走マラソンと比べると、景色の変化という点では軍配はオホーツク網走マラソンに上がります。アクセスのしやすさ、飲食店の選択肢という点では北海道マラソンのほうが上です。
他のマラソン大会と比べて「洞爺湖マラソンじゃなきゃいけない」が弱く、ランナーの「どうしても走りたい」を掻き立てることができません。でも、マラソン大会として魅力がないかというとそうでもありません。万人向けではありませんが、走ることを純粋に好きだという人ほどリピート率は上がるはず。
そう、洞爺湖マラソンには走ることの本質が詰まっているのです。無駄を削ぎ落とし、42.195kmという距離を走ることに集中できる環境があります。コマーシャルのないテレビ番組みたいなもので、走ることを高い密度で楽しめるわけです。
また今回は最後尾ブロックからスタートしましたが、夫婦や友人同士で走っている人を多く見かけました。そういう楽しみ方ができるのも、洞爺湖マラソンの魅力です。大切な人と、一緒の時間を過ごすために、思い出に残る旅ランにするのに、洞爺湖マラソンはちょうどいい大会なのでしょう。
ただ制限時間は5.5時間と短く、きちんと練習していないと簡単に関門に引っかかってしまいます。コンディション不足なのか、10km手前で走るのをやめ、自力でスタートラインに戻ってきた人も少なくありませんでした。そういう意味では難易度はやや高め。
逆に考えると、そこそこ走れる人向けの大会とも言えます。アナウンスが足りないのも含めて、自分で判断できる大人が集まる大会。本来のマラソン大会というのはこういう大会なのかもしれません。至れり尽くせりではなく、みんなで作り上げていく。
そんな大会が減ってきたからこそ、全国から洞爺湖に多くのランナーが集うといのが私の考察なんですが、当たらずとも遠からずといったところでしょうか。とりあえず私は次回参加するなら、ゆっくりマラソンを楽しむためにも、洞爺湖温泉に泊まろうと思います。
洞爺湖マラソン:https://www.toyako-marathon.jp