日本一早いマラソンレポート「第22回弘前・白神アップルマラソン」

2024年10月6日に青森県の弘前市と西目屋村で、「第22回弘前・白神アップルマラソン」が開催されました。種目はフルマラソンとハーフマラソン、10km、3kmがあり、弘前市民を中心に地元に根づいた大会となっています。ただ、フルマラソンの参加費が7,000円と安いこともあり、全国各地からランナーが集まる大会でもあります。

今回はサブ3.5を狙うシリアスランナーとして(自分で言うのは恥ずかしいですが)フルマラソンに参加しましたので、写真は少なめですが、どのようなコース設定になっているのか、どんな雰囲気の大会なのかをランナーの立場としてレポートしていきます。

目次

岩木山に見守れながら走る高低差約100mの折り返しコース

「第22回弘前・白神アップルマラソン」のコースは弘前市役所の裏側にある道路からスタートし、序盤は民家やリンゴ畑を縫うようにして走り、そこから岩木川に沿うように西目屋を目指して、弘前の大手門広場に折り返してくるコースになります。

スタートとフィニッシュの部分だけコースが異なりますが、ほぼ全域で往路と復路が重なります。フルマラソンの募集人数が1,850名ですので、規模は小さいものの、折り返しコースにしていることで、前方でも後方でも「みんなで走っている」感がありました。

コースはスタート直後に大きく下ってから、小さなアップダウンを含みながらも約100mの高低差を駆け上がっていきます。ただし、上りが強烈な部分はそれほどなく、緩やかに上り続けることになります。このため、ペース配分が難しいところ。

私はスタート直後の1kmが4分27秒で次の1kmが4分18秒でしたが、ここで自重。自分のコンディションがいまいちだったので、このペースで走ったら潰れると感じたので、4分30秒〜4分40秒に設定しました。とはいえ、場所によって傾斜が違うので、ペースに厳密さは求めませんでした。

淡々と同じペースで走っている人もいましたが、そういう人はおそらく弘前・白神アップルマラソンを知り尽くしているからできるのでしょう。ただ私は、初見ではコースに合わせてペースを変えていくほうが、消耗しすぎないで済むと判断しました。

結果的にはその判断でよかったのですが、実際にはもっと抑えるべきだったかもしれません。レースとしては残り5km、37km地点でグリコーゲンが尽きて、そこから失速してしまいました。帰りは下りだからと思っていたのですが、上りで消耗して下りでペースを上げる余裕がありませんでした。

地元の人たちの温かい応援が足取りを軽くしてくれる

弘前はそれなりに大きな都市ですが、弘前・白神アップルマラソンのコースは市街地から郊外に向かっていくということもあり、住宅地を除いて沿道の声援は途切れ途切れになります。それでもおばあちゃんやおじいちゃんが家の前に出てきて選手に声をかけてくれるのは、地方の大会ならではの魅力です。

ボランティアスタッフさんもずっと声を出していて、ランナーを支えたいという気持ちが伝わってきます。エイドも若い子もいればベテランのボランティアスタッフさんもいて、水分やエネルギーの補給だけでなく、気持ちもしっかり補給できます。

エイドは水とポカリスエットが必ず置いてあり、気温が24℃近くまで上がったこともあって、スポンジや氷なども置いてありました。暑かったという声がSNSでも聞かれましたが、個人的には涼しくて走りやすかったのですが、冷静に考えれば24℃は涼しくないですよね。なぜ涼しく感じたのかはよくわかりません。

食べ物はパンとドーナツ、そしてリンゴやバナナもありましたが、リンゴ以外は特色があるわけではありません。参加費7,000円の大会ですので、それで十分です。ただ、ネタとして天童ラ・フランスマラソンの「すべてのエイドにラ・フランス」みたいな感じで、すべてのエイドにリンゴがあると県外のランナーは喜びそうです。

もっとも地元の人にとってはリンゴは珍しいものでもありませんし、エイドにあっても食べたりはしないのかもしれません。遠方から参加しているランナーの独り言としては「参加費を500円上げてもいいから、アップルパイがあるといいかも」なんて思ったことだけ書いておきます(前日、街のあちこちでアップルパイが売り切れ)。

私設エイドもいくつかありました。折り返し直後のコーラエイドは気持ちの切り替えになりましたし、スイカやリンゴを並べてくれていた地元の方のエイドは、立ち止まっていただきたくなるほど嬉しかったです(立ち止まらずリンゴだけいただきました)。

細かなところまで丁寧に作り込まれている大会

弘前に来て感じたのは「神は細部に宿る」を体現しているかのような街だということ。街もサービスも、細かいところまで作り込まれていて、滞在期間中にストレスを感じることがありませんでした。弘前・白神アップルマラソンもまったく同じで、とにかくよく考えられてデザインされています。

参加者が多くないのもありますが、スタートブロックは目標タイムのブロックに自己申告して入ります。嘘をついて前に入ることができますが、青森の県民性でしょうか、むしろみんな遠慮して前に行こうとしません。仕切りは何もないのに、まるでそこにロープでも張っているかのように。

そして、スタート直後に岩木山。初青森の人間にしてみれば、これだけでノックダウンされます。そして、その岩木山が折り返したらまた目の前にいます。そして、真っ赤なリンゴが実ったコース脇のリンゴ畑。こんなコースは弘前にしかできません。ちなみにコースには1kmごとの距離表示があります。

ペースランナーは3時間30分から30分ごとにいるのですが、最終は5時間50分設定。これってなかなかできない発想です。6時間のペースランナーでもいいんです。でもあえて5時間50分にしている。6時間だと抜かれた瞬間に終わってしまいますが、5時間50分なら気持ちが続けば完走できます。また、完走証はWebでダウンロードするタイプですが、ゼッケンにQRコードが付いているので、すぐに確認できます。

驚いたのはゴールテープをランナーごとに張り直していたということ。人数が少ない上位だけかなと思っていましたが、残り10分になってもテープの張り直しをしていました。ということはほぼすべてのランナーがフィニッシュラインでゴールテープを切っていることになります。おそらく1500回以上も(ギネス記録とかにならないですかこれ?)。

完走メダルはありませんが、完走者には大きなリンゴが1個用意されています。「完走リンゴ」とでも命名してもいいと思うのですが、これもやはり地元の人が喜ぶかどうか次第ですが。そしてフルマラソンの参加賞はお米かタオルか選べます。Tシャツは欲しい人だけ有料販売。これだけでもよく考えられていることがわかります。

最も嬉しかったのは、走ったあとに少し離れた桜温泉まで送迎があり、ランナーは無料で入浴できます。当日の夜行バスで戻るので利用させてもらいましたが、ものすごい気持ちいいお湯。このようなサービスを特別感を出すことなく用意してくれるのが弘前・白神アップルマラソンのすごいところです。

弘前・白神アップルマラソンは42.195kmがあっという間に終わる

今回はサブ3.5をノルマとしてスタートラインに立ったわけですが、こんなにも42.195kmを短く感じたことはありません。実は弘前が楽しすぎて、前日に2.4万歩も歩いてしまっていて、その前日も2万歩以上歩いて、体内のエネルギーが不足している状態で走り出しました。

それもあって37kmで失速してしまいましたが、その残り5kmもキロ5分ペースまで落ちましたが、景色がどんどん変わっていくので長く感じることがありませんでした。適正体重をはるかにオーバーしてしまったのもあり、久しくサブ3.5をしていませんでしたが、3時間20分を切ってのゴール。

それくらいのタイムで走ったからあっという間に感じたのもありますが、1kmをあっという間に感じられたからいいタイムになったというのもあります。岩木山に見守れながら走り、リンゴ畑と地元の方の応援に応えるだけで距離がどんどん増えていきます。

初見の人は折り返しまでかなり抑え気味に走るなどのコツがありますが、足が止まらなければタイムはともかく走ることの楽しさに浸れる42.195kmになるはずです。ただ、次回走るならペースを気にせずカメラを持って撮影しながら走りたいところ。

本当にいたるところに絶景があって、なんだったら走らずに撮影だけしていたいと思うくらい、映えるシーンを何度もまぶたに焼き付けました。どこを切り取っても画になる。第22回弘前・白神アップルマラソンはそんな素敵な大会でした。

全国的にアクセスが難しく宿の確保が大変というのもありますが、それを走らない理由にするのはもったいない。自然を感じられるコースが好きな人なら間違いなく満足できる大会ですので、迷っているなら思い切ってエントリーしてみてください。ただ、前日歩きすぎないように、前泊だけでなく観光用に後泊するのをおすすめします。

弘前・白神アップルマラソン:https://applemarathon.jp

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