日本一早いマラソンレポート「TOKYO ROKUTAI FES 2025 1日目」

東京マラソン、東京レガシーハーフマラソンへと繋がる東京マラソン財団主催のランニングイベント「TOKYO ROKUTAI FES 2025」が味の素スタジアムで開催されました。開催日は10月4日と5日の2日間。個人種目は10km と5km(女子のみ)、1マイル。チーム種目として3つのリレー種目を実施。

昨年はメインイベントである「TOKYO ROKUTAI RELAY(6時間リレーマラソン)」が行われた2日目を取材しましたので、今年はフルマラソンの距離をリレーする「TOKYO RELAY MARATHON 」が行われた初日を取材してきました。種目が増えて規模が大きくなった今年の「TOKYO ROKUTAI FES」がどのようなイベントになったのかレポートします。

目次

学園祭のようなランニングイベント

昨年までのTOKYO ROKUTAI FESは2日間で約3,000人が参加するランニングイベントでしたので、かなりコンパクトな大会でした。ただ1日あたり約1,500人の参加者に対して、味の素スタジアムを使用するだけでなく、豪華ゲストが集結。知名度は高くないものの、とても贅沢な大会になっていました。

しかも、リレーマラソンに参加したチームのメンバー全員が東京マラソンを走れる抽選会も実施。そこまで充実していたのに、参加人数がそれほど多くないので、味の素スタジアムという会場を考えると、もう少し参加者を増やしてもいいのではと感じたのを覚えています。

そして今年の「TOKYO ROKUTAI FES 2025」は参加人数が倍増。6,000人以上が参加する大会になりました。参加者の大幅増加により問題が発生しましたが、それについては後ほど詳しくレポートするとして、流石に2倍になると会場の熱気がまったく違ったものになります。

「TOKYO ROKUTAI FES 2025」のメインコンテンツは6時間リレーマラソンである「TOKYO ROKUTAI RELAY」ですが、このほかに次のような種目が用意されており、個人でもチームでも楽しめます。

10月4日(土)
・TOKYO WOMEN’S RUN 5K
・TOKYO 10K
・TOKYO RELAY HALF MARATHON (DAY1)
・TOKYO RELAY MARATHON

10月5日(日)
・TOKYO 1MILE
・TOKYO RELAY HALF MARATHON (DAY2)
・TOKYO ROKUTAI RELAY

すでにマラソン大会なを走っているランナーだけでなく、これまでマラソン大会を走ったことがない人にも参加してもらい、ランニング人口の裾野を広げることが、「TOKYO ROKUTAI FES」の基本コンセプトであり、実際に個人種目である5K(5km)も10K(10km)も初マラソンという方が大勢いました。

そのようなコンセプトということもあり、「TOKYO ROKUTAI FES」はマラソン大会ではなく、ランニング以外のカルチャーも取り入れた「フェス」として開催しています。たとえば会場内はMCによるトークや、ケツメイシの大蔵さんがDJとして音楽を流したりするなどして、お祭りのような空気感を作り出していました。

昨年よりもその感じが増しており、誤解を恐れずに表現するなら「学園祭のようなマラソンイベント」といったところでしょうか。それはポジティブな意味も、ネガティブな意味も含んでいるのですが、それがどういうことなのか、詳しくレポートしていきます。

肩の力を抜いて普段着で走れるマラソン大会

マラソン大会を走ったことがない人にとって、どのような規模の大会であっても、そのハードルはとてつもなく高く感じます。フルマラソンを100回以上走ったベテランランナーも、最初は不安を抱えながらエントリーし、緊張した面持ちで大会会場に向かったはずです。

私たちはそれを乗り越えてランナーになってきたわけですが、そもそもハードルなんて「ない」ほうがいいに決まっています。スッと入って、大勢で走る楽しさ、苦しみながらもオールアウトする気持ちよさを感じてもらい、マラソンを好きになってもらえれば、ランナーの裾野がどんどん広がります。

TOKYO ROKUTAI FES 2025 は、まさにそれを意識したランニングイベントで、まず参加費が令和とは思えないほど安く設定されています。5Kも10Kも参加費は3,850円。これにより、「マラソン大会の参加費」というハードルが大幅に下げられています。

そして5kmや10kmといった「これなら完走できそう」という距離設定(リレーマラソンは1周1km)になっており、リレーマラソンなら友人と一緒にランニングを楽しめます。そして、学園祭のような楽しそうな空気感があるから、走るだけのマラソン大会よりも緊張することなく、普段の自分を発揮できます。

面白いもので TOKYO ROKUTAI FES 2025 の会場では、あまり目立たないウェアのランナーが多く、「それって普段の練習着?」というようなウェアで走っているランナーも多く見かけました。それくらい気楽に参加できるのが TOKYO ROKUTAI FES 2025 というわけです。

そして、5Kも10Kもランナーの笑顔が印象的でした。とにかく楽しそうに走っている姿がファインダー越しに飛び込んできました。ちなみにリレーマラソンは「襷を繋がなくては」という思いと、周りのランナーのペースに巻き込まれたのもあって、笑顔よりも真剣な表情のランナーがほとんどでした。

初心者でなくても楽しめるのも TOKYO ROKUTAI FES 2025 の魅力です。オープニングセレモニーでは日本を代表するランナーでもある赤﨑暁選手と鈴木優花選手が、夫婦で登場しましたが、そこではありきたりの質問ではなく、ベテランランナーも参考になるような質問が2人に対して行われました。

さらに上位入賞には副賞があり、上位に入れない人にも抽選で豪華景品が当たるチャンスもあります。すでにお伝えしましたように、リレーマラソンでは東京マラソンや東京レガシーハーフマラソンの出走権が当たるなど、走るだけではない楽しみが用意されています。

東京マラソンクオリティに届いていない

よく見ると(よく見なくても)FINISHの面の左側が上がっているのがわかります

誰でも気軽に参加できる学園祭のようなイベントだった「TOKYO ROKUTAI FES 2025」ですが、東京マラソン系列の大会だとは思えない一面もありました。それを象徴していたのがスタート位置に立てられたゲートで、よく見ると建て付けが悪く、東京マラソンであれば絶対に起きないであろうクオリティになっていました。

そんなところ誰も見ていないと思うかもしれませんが、きちんとした業者であればそんなことは起きませんし、引き渡しチェックの段階で気付いて修正が行われます。実際には気付かなかったのか、これでよしとしたのかはわかりませんが、このクオリティでOKとしたことろ(しなくてはいけなかったところ)がさまざまなトラブルの根底にあるように感じています。

最初の違和感はスタジアム外で撮影するためにコース沿いを歩いているときで、どうも何かが足りていない気がしました。それが何かに気づいたのは5Kの選手がコースを逆走してきたのを目にしたときで、コース上に誘導するスタッフがほとんどいません。

10Kが行われているときに2.5kmのコース全体を歩いてまわりましたが、折り返し地点にもスタッフがいません。給水所にはさすがにスタッフがいましたが、これではランナーにトラブルがあったときにすぐに対応できませんし、不正もし放題です(誰も不正なんてしないと思いますが)。

そしてリレーマラソンは明らかにキャパオーバーでした。昨年は1種目300チームで開催されましたが、今年は2種目600チームが同時スタートしました。それだけなら、そこまで混雑しませんが、昨年の1周1.6kmが1kmになったことで、コース上のどこにも余裕がない状態が生まれていました。

集団がバラけるまでは、リレーゾーンで渡す相手を見つけられない人もいましたし、コース上での接触や無理な追い越しを何度も見かけました。小学生も一緒に走っているわけで、これに関してはどれくらい危険だったのか運営スタッフは把握できていない可能性があります。それを確認するスタッフがコース上にほとんどいないので。

しかも接触によりランナー同士でトラブルになっても、スタッフがすぐに駆けつけることはできません。もっといえば、1周1kmなので多くのランナーがとんでもないスピードで走っており、それにつられてオーバーペースになるランナーがAEDを必要とするような状態になっても、対応が遅れてしまいます。

もちろん運営側も混雑については把握していることなのでしょうから、2日目には同じことが起きないように、今頃ミーティングが行われていることと思います。ただ、実際にリスクの想定が足りていなかったというのは、東京マラソンクオリティに届いていないと言わざるを得ません。

まずはランナーの安全を確保することから

昨年のTOKYO ROKUTAI FESを取材して、素晴らしいイベントだと感じていました。そのうえで今後をとても期待していたため、かなり辛口のレポートになってしまいましたが、TOKYO ROKUTAI FESに期待していることには変わりありません。

それも私のようなマラソンに対する既成概念が抜けないランナーが思いつかないような新しい方法で、ランナーを喜ばせ、どんどんマラソンランナーを増やしてもらいたいところです。ただ、そのためにはやはり「基本」は大切にしてもらいたい。

たくさんのゲストを集めて盛り上げることも大切ですが、まずは「基本の基」としてランナーが安全に走れる環境を確保すること。古くからマラソンに関わっている人はそのための知恵を持っています(東京マラソン財団にはそのような方が大勢いるはず)。その人たちから学ぶのもいいですし、安全について徹底して議論するのもいいでしょう。

マラソン大会やイベントは、そうやって成長していくものですし、成長したの過程で失敗することなんてどんなイベントでもあることです。大事なのはそこから何を学び、次にどう活かすか。そんなことはレポートするまでもなく、運営は把握しているでしょうから、心配はしていませんが。

まずはランナーの安全に予算を確保し、そのうえ大会を盛り上げるために予算を配分する。そうでなければ、ランナーが離れていってしまいます。しかもランナー同士の接触により大きな事故が起きてしまったら、イベントそのものの継続も難しくなります。

「TOKYO ROKUTAI FES」はこれからもっと大きく発展していくランニングイベントですし、初マラソンのハードルを下げることでランナーを増やし、日本の市民マラソンの未来を担うことになる存在でもあります。だからこそ、あえて自分が目にしたこと、感じたことをレポートしました。

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