ベテランのランナーさんにとっては、ポイント練習はごくあたり前のトレーニング方法であり、多くの人がすでに取り入れているかと思います。でも、初心者ランナーの場合には、よく分からずに自己流のポイント練習になり、最適な効果を得られていないことが多々あります。
そこで、ここではポイント練習についての基本となる考え方や、どのように取り組むべきなのかについて分かりやすくご紹介していきます。
ポイント練習とは
マラソンは毎日何も考えずに走っているだけでは、タイムを縮めることができません。始めたばかりは、コツコツ距離を積み重ねるだけでも、それなりに成長していきますが、1〜2年程度で頭打ちになります。
例えば、毎日30分のジョギングをしていたとしましょう。最初は100m走るだけでも息が切れてしまっていた人も、それを1ヶ月、2ヶ月と続けていけば、余裕を持って30分間走りきれるようになります。
でも、そのジョギングを10年継続したところで、大きく成長することはありません。ほとんど走れなかった状態から、余裕を持って走れるようになる期間は体にとって30分のジョギングでも高負荷になりますが、慣れてしまえば負荷はほとんどありません。
そうなると、そこから速く走れるようになろうと思うと、これまで以上に高い負荷をかけなくてはいけなくなります。もっと距離を伸ばしたり、もっと速いペースで走ったりして、体をイジメて鍛え上げるわけです。
でも、あまりにも高負荷なトレーニングを連日行うと、体は壊れてしまいます。
人間の体は、負荷と休息を交互に与えることで成長していきます。超回復という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、負荷を与えたあとに休息をすると、体は元の状態よりもちょっとだけ高い負荷に耐えられるようになります。
その状態で負荷を与えて、また休息するということを繰り返すことで、ランナーは速く走れるようになるわけです。この高い負荷を与えるトレーニングがポイント練習」になります。
この説明では少し分かりにくいかもしれませんので、次章でもう少し具体的に説明します。
ポイント練習とつなぎの練習
超回復の考え方ですと、超回復をするタイミングに合わせてトレーニングを行うのがベストということになります。超回復の期間は人それぞれ違いますが、一般的には48時間で回復すると言われていますので、3日に1回のトレーニングで効率的に鍛えることができます。
でも、マラソンの場合には3日に1回のトレーニングでは、走行距離が不足してしまいます。例えば、ポイント練習で10km走ったとしたら、月間走行距離は100kmにしかなりません。
すでに走れる体がある人なら、それでもまだそこそこのタイムで走ることができます。でも、成長することを考えたり、体重維持を考えたりするなら、走行距離はもっと必要になってきます。
このため、ポイント練習の間は何もせずに回復を待つのではなく、ジョギングなどのつなぎの練習を入れることが一般的です。
1日目:ポイント練習
2日目:ジョギング
3日目:ジョギング
4日目:ポイント練習
5日目:ジョギング
6日目:ジョギング
このため、ポイント練習をするときには、このようなサイクルでトレーニングを行います。
実際には1週間は7日ですので、3日に1回のサイクルというのは、定着させるのはなかなか難しいところです。そこで、4日目の負荷をやや高めにしたり、5日目に筋トレを行うなどをして、1週間のサイクルになるように調整することもあります。
マラソン初心者にありがちなのが、ポイント練習のサイクルを短くしすぎて、オーバートレーニングでケガをするというパターンです。これは絶対に避けなくてはいけません。
マラソンは、頑張れば頑張るほど成長できるというものではありません。むしろ頑張らない日を意図的に作ることで、成長することができます。
他の競技をしてきた人は、この考え方が中々理解できないようですが、マラソンにおいてはとても重要な考え方であり、トップランナーでも同じようにポイント練習と回復のためのつなぎの練習を基本としています。
速く走れるようになりたいのであれば、3日に1回のポイント練習を意識してトレーニングメニューを組んでみましょう。
ポイント練習の種類
ポイント練習にはいくつもの種類がありますが、ここでは初心者でもすぐに取り組むことができる基本のポイント練習をいくつかご紹介していきます。
● ペース走
● インターバル
● 距離走
この3種類を覚えておけば、かなりのレベルにまで到達できますので、まずはこの3つを普段のトレーニングに取り入れてください。それぞれの特徴について見ていきましょう。
ペース走
ペース走は一定のペースで走り続けるトレーニングで、初心者が覚えておくべきトレーニング方法は2種類あります。
● 10〜15kmをマラソンペースよりも速いペースで走る
● 15〜20kmをマラソンペースで走る
短い距離をマラソンペースよりも速く走ることで、スピードと持久力を身につけることができます。15〜20kmをマラソンペースで走る場合には、持久力とレースに対しての自信をつけることができます。
トレーニングを積むときには短い距離、マラソン大会に向けての仕上げには長い距離でのペース走を行ってください。
最初は適切なペースが分からないかと思います。ですので、ペースを掴むまでは走行中に苦しくなってきたら、ペースダウンをしても構いません。ただし、決めた距離だけは必ず走り切るようにしましょう。
インターバル
インターバルはスピードをつけるためのトレーニングです。
「1km全力→3分ジョグ→1km全力→3分ジョグ」といったようにトップスピードに近いペースにまで上げて決められた距離を走るというのを、何回か繰り返すトレーニング方法です。
● 1km×3〜5本
● 400m×10本
初心者はこの2種類を覚えておくといいでしょう。大事なのは1本目から最後までペースを落とさないということです。
インターバルを行うことで、筋力アップにもつながり、より速いスピードを出せるようになります。スピードを出せればタイムに直結しますし、同じスピードで走るにしても、心拍数を上げずに走れるようになります。
距離走
距離走はロング走とも呼ばれ、レースの3〜4週間前くらいに30〜35km走ります。距離走はそれほどスピードを出す必要がなく、体に長い距離を覚えさせるとともに、毛細血管を発達させる役割があります。
ただし、あまり遅すぎるとランニングフォームが崩れますので、レースペースよりも余裕があるくらいで構いません。レースペースで走って自信を付けたい気持ちになりますが、それは負荷が高すぎるのでやめておきましょう。
レース前だけでなく、余裕があるなら毎月1〜2回距離走をしておくというのもおすすめです。30kmに慣れておくことで、レース本番に距離に対する不安が解消され、余裕を持ってスタートラインに立てるようになります。
まとめ
マラソンでタイムを縮めるためには、ポイント練習は必須のトレーニング方法になります。3日に1回のポイント練習と2日間のジョギングを繰り返すことで、ランナーとしてかなりのレベルにまで到達できます。
大事なのはやりすぎないことです。マラソンのトレーニングでは、休みすぎるよりもやりすぎるほうがNGです。体を壊してしまったら、取り返すのに長い時間がかかりますし、場合によっては元に戻らないこともあります。
追い込んだら2日間のリカバリー。もしリカバリーできていないと感じたときにはリカバリーをもう1日追加しても構いません。必ず回復させてから次のポイント練習を行いましょう。
そういう意味では、1回のポイント練習の量をきちんと見極めることも大切です。2日のリカバリーで回復できないくらい追い込んだのでは、効率が下がってしまいます。
頑張りすぎないで積み重ねる。ポイント練習を取り入れるときは、そのことを絶対に忘れないようにしてください。