第1回に5000人のランナーがスタートに間に合わないというトラブルのあった富士山マラソン。そのせいか、ランナーにとって避けたい大会のひとつというイメージが付いていました。
2回、3回と信頼を取り戻すために様々な工夫をしてきた富士山マラソン。第4回はいったいどのような大会になったのか。今回は沿道から声援を送りながら観戦。いつもとは違った視点からレポートします。
スタート時の気温は3℃。河口湖周辺はすでに冬の空気です。風は無風で最高のマラソン日和です。
多少のトイレの混雑が気になります。周辺の店舗もトイレの貸出をしているようですが、借りる側にしてみればお店のトイレは気が引けるのか、仮設トイレと公衆トイレに行列ができます。
スタート時間になってもまだトイレに入れない人がいて、ブロックごとに並んでいた人が全員スタートラインを超えた後も遅れてスタートにやってきます。
スタートラインで全員を見送った後は11km地点河口湖大橋の手前で観戦です。警備員の人数が少なすぎるため、ランナーが走っている最中に道路を渡る人が続出します。ラン仲間を全員見送ったあとにそこから逆走して21キロ地点にある名物の激坂で再度応援です。
この間に38km地点でトップランナーとすれ違います。最後方が11kmを通過した30分後ぐらいでしょうか。必至の形相で駆け抜けるトップランナーを見て「ここまで追い込むものなのか」と感心しつつ声援を送ります。
21km地点ではこれから激坂に挑むランナーたちの悲鳴の声が聞こえます。こういう名物があるコースは好きです。挑み甲斐がありますよね。「走って上りきった」ということが自信になったりもします。
最後尾のランナーは歩いて上るしかありません。途中で座り込んでしまうランナーもいます。
坂の上のトンネルをくぐれば西湖です。もっとも声援のない苦しい区間が始まります。それぞれのドラマが生まれやすい区間でもあります。10km近くただひたすらに自分と向き合うことになるので、激坂よりも苦しい区間だと私は感じています。
こういうコースで目立つのは台湾人ランナーの元気さです。彼らは私の声援に対して誰もが「加油!謝謝!」と返してくれます。どこの大会も最近は台湾人ランナーがいっぱいです。台湾のマラソン熱はすさまじいものがあります。
30kmを超えたランナーでも走力がある人はここからがマラソンとばかりに今度は逆に下り坂を一気に下ります。足を使いきってしまったらランナーは時計とにらめっこが始まります。そして走れなくなったランナーを苦しめるのが激坂の下りです。
使いきってしまった足をさらに酷使するわけですから、下りきったあとの約7kmはほぼフラットとはいえ、精神的な強さを問われるコースです。
走れば制限時間に間に合うけど、足が動かない。歩いては走り、走っては歩きを繰り返してみんなゴールに向かいます。とにかく目の前の関門を通過しよう。次の1kmを走り切ろう。頭の中にあるのはそれだけかもしれません。
ゴールゲート手前で残り1分。必死の表情でランナーたちがゴールに飛び込んできます。それとは対称に動かない足を恨めしく思いながら数m手前で6時間経過してしまったランナーたち。
あのとき数秒頑張っていればと思うと悔しさが湧いてくることでしょう。整列時に5m前にいたらゴール出来たかもしれない。ゆっくり整列してしまった自分の甘さを責めているかもしれません。でもその悔しさが必ず次に生きてきます。悔しい思いをした人ほど強くなれます。
ハードなコースと厳しい制限時間。相変わらず挑戦心をかき立てられる大会でした。
それとは反対にエイドの乏しさ、警備の少なさなど運営上の不備が目立った大会でもありました。もしかしたらこの大会、今後の継続が危ういのではないかと疑ってしまうくらいの経費削減ぶりです。
もしかしたら今回完走した人は次回以降の参加を検討しないぐらいの危うさがあります。少なくともこの2年で取り戻した信用はまたしても崩れてしまった可能性があります。その答えは1年後に出ることになります。さて実際に走ったランナーたちの気持ちはどうなのか、結果が楽しみです。