日本一早いマラソンレポート「横森製作所presents 中部電力 MIRAI TOWER ステアクライミングチャレンジ」

誰よりも早くテッペンに到達する。とてもシンプルな人間の欲望を形にした競技、それがステアクライミング(階段マラソン)です。世界レベルで人気の競技で、世界トップクラスの高層ビルでは、毎週のようにどこかでハイレベルな戦いが繰り広げられています。

日本でも定着しつつあるステアクライミングですが、文化として根付くために「速さ」ではない新しい試みが始まりました。それを形にしたのが「横森製作所presents 中部電力 MIRAI TOWER ステアクライミングチャレンジ(以下:SCC)」です。ここではそんなSCCをレポートしていきます。

目次

過去の自分を超えていくためのチャレンジ

誰が1番速くてっぺんに到着できるか。それを競い合う日本国内レースの最高峰となっているのが「STAIRCLIMBING JAPAN CIRCUIT(以下:SJC)」です。階段マラソンに特化したサーキットで、国内でいくつかのレースで順位を競い合い、年間を通じてのチャンピオンを決めます。

SJCに出場できるのは選ばれたランナーだけで、昨年までは「一般の部」という形でエリート以外も参加できましたが、どうしてもSJCに付随する形での開催という印象が付いてきました。でも、階段というのは日常生活の中にあたり前にある存在で、それを使うのにエリートも一般もありません。

むしろ、走らない人にすら身近な存在なのが階段で、ステアクライミング(階段マラソン)をもっと多くの人に、気軽に挑戦してもらう存在になってもらいたい。そのためには、SJCのように高みを目指している人たちが集まる大会と切り分ける必要があったのでしょう。

SJCは継続開催となり、同日開催ではあるもののSCCという新しいフィールドが用意されたのが、今大会の大きな変更になります。敷居が下がったことが要因とは言い切れませんが、実際に今大会では初めてステアクライミングに挑戦するという人も多かったのも事実。

SJCは1番を決めるという方向性なので、勝つことが大事です。ライバルに負けないために日々のトレーニングを積み重ね、勝っても負けても涙する。そんなスポーツの美しさが詰まっているのですが、SCCのライバルは自分。順位はそれほど重要ではありません。

初めての参加者は、まず自分の現在地を知ることになります。そして1年後に再挑戦して、1年間のトレーニング結果を確認する。目標は過去の自分を上回ること。そのためには、日常生活でエスカレーターを使わずに階段を選んだり、毎日5kmのジョギングを習慣化したりする。

そうやって自分なりの努力を積み重ねるきっかけになるのが「横森製作所presents 中部電力 MIRAI TOWER ステアクライミングチャレンジ」というわけです。別にトップレベルの選手のように速く走れなくてもいいんです。健康診断みたいなもの。

もちろん上を向いて「いつかはSJCの選手に」という人にとっても、SCCはとてもわかりやすい位置づけになっています。ここでSJCのエリートをはるかに上回る結果を出せば、SJCに挑戦できるチャンスもやってきます。違うフィールドだけどきちんと繋がっているので安心してください。

中部電力MIRAI TOWER の90m415段は絶妙な高さ

RUNNING STREET 365のスタッフは階段好きなのですが、昨年はどうしても参加できず。今年は2年ぶりの中部電力 MIRAI TOWERになりました。前回の記憶はまったくありませんが、思うように力を出しきれなかったことは覚えています。

今回は走り込み期間中ということもあり、結果は求めていませんでしたが目標はすべてを出し切ることに設定しました。絶対に途中で足を止めないこと。歩いても心拍数が下がったら、すぐに走るということを目標にスタートラインに立ちました。

眼の前には青空をバックにそびえ立つ中部電力 MIRAI TOWER。あべのハルカスのように途方もない高さでもなく、「あそこまで頑張ればいい」とイメージはできるのですが、先行している人たちの足はまったく動いておらず、手すりにつかまるようにして上っている人もいます。

ただ、スタートラインまで来たなら、あとはやるしかありません。2年前よりも走力も落ちているという認識なので、とにかく序盤に飛ばさないように気をつけます。かなり抑えて入ったつもりが、タワー側の階段まで上ったところで、すでに息が切れています。

そういえば、こういう苦しさだったと思い出しながら、リズムよくステップを踏むことに集中。ただ、気持ちのいい風が吹いてきます。心地よい風を感じられるのが、高層ビルのステアクライミングレースとこのレースの最大の違いになります。

上った分だけきちんと景色が変わる。ただ直視すると怖くて足が止まってしまうような気がしたので、目の前の階段に集中。それでも上に行くほど傾斜がきつくなり、「止まってもいいんじゃないか」「歩いてもいいんじゃないか」と弱い自分がささやきます。

でも確実にゴールは近づいています。これが中部電力 MIRAI TOWERの90m415段の面白いところ。1歩が前進に繋がっているという感覚が、自分自身に勇気を与えてくれます。だから歩いてしまっても、そこから「もう1度頑張ろう」となり、すべてを出し切れます。

結果は2年前よりも2秒ほど遅かったのですが、今回のほうが上手く走れた気がします。息切れはしていますし、足もパンパンなのですが、それでも「まだ30秒は縮められる」という感覚もあります。そうなると、当然のことながら来年も参加することになるわけです。

スポーツマンシップを備えたエリートたちの戦い

SCCというカテゴリーが誕生しても、ステアクライミングの本質は変わりません。やはり「誰が1番速いのか」は永遠のテーマであり、アスリートなら誰もが手にしたい称号です。そんなアスリートたちによる競い合いであるSJCのスタート時間は19時。

そんな遅い時間にもかかわらず、スタートエリアには多くの応援者が集まり、エリートランナーの背中を押していました。かつてSJC(当時はVJC)が始まったときには、ステアクライミングの世界ではまだ何者でもなく「エリート」という称号だけを背負っていたランナーたちを個人的に応援する人がいる。

そしてエリートだけに許されたユニフォームに身を包んだ誰もが、この日のために多くのものを犠牲にしてスタートラインに立っている。それだけで胸が熱くなります。同時スタートではないので、表彰式まで誰が勝者なのかわからないという演出も、応援する人をドキドキさせます。

ただ、結果として順位はついているものの、レース後はそれぞれが称え合うというのがSJCのスタイル。ただ速いだけでなく、スポーツマンシップを体現している。だからこその「エリート」なのかもしれません。その姿はとても美しく、それでいてほんの少しだけ羨ましく感じたのはここだけの話。

楽しさとは必ずしも「楽」であるとは限らない。エリートランナーの姿を見ていると、いつもそんなことを考えてしまいます。苦しさの先にしかない楽しさが必ずあって、エリートとして参加している選手はそれを知っている。だからどれだけ苦しくても練習を続けられるのでしょう。

このような学びができるのもSJCの素晴らしいところです。できればSCCに参加したすべての選手に見てもらいたいところです。彼ら彼女らと自分は何が違うのか。才能?それとも努力。それを考えるだけでも、SJCがスタートするまで待機する価値があります。

そして火花を散らしていたのはエリートランナーだけではありません。中部電力MIRAI TOWERを駆け上がるのが3回目となる松竹芸能の森脇健児さんがゲストランナーとして参加し、さらにはフルマラソンサブ3を達成したハリー杉山さんがランスマ倶楽部の取材で参加。

あの赤坂での激戦を彷彿とさせるライバル同士のつばぜり合いも行われていました。芸能界の階段マスターの森脇健児さんが勝ったのか、いま勢いに乗るアスリート芸能人のハリー杉山さんが勝ったのか、ぜひランスマ倶楽部でご確認ください。

ちなみにレース前のトークでは森脇健児さんがハリー杉山さんを圧倒していました。

ステアクライミングはもっと人気になる

エリートたちの戦いであるSJCの表彰式を待つ人が確実に増えていました。それはエリート選手の知り合いなのかもしれませんが、かつては1人だった人も家族や友人が本気で応援し支えてくれる。そしてその中の数人がステアクライミングに挑戦する。

そういう輪が確実に広がっているのを実感しています。2年前に中部電力MIRAI TOWERに集まった人たちは、まだステアクライミングに半信半疑だったはずです。でも、多くの人の情熱が周りの人を動かし、大会が成長していく。

少なくとも今は歯車が上手く噛み合っていて、さらなる成長する姿が容易に思い浮かびます。私が初めてステアクライミング(当時は階段垂直マラソン)に参加したとき、いずれクリック合戦になると予想しました。あれから8年以上の月日が流れ、まだその段階にはありません。

ただ、少なくともこの中部電力 MIRAI TOWERで開催されるステアクライミングは、来年からは早めにエントリーしないと、早い段階で枠が埋まってしまう可能性があります。なぜなら、今年初めて走った人たちは、間違いなく戻ってくるから。

どんな結果であったとしても、自分の可能性を感じたでしょうし、悔しさも残っているはずです。もし、来年分の受付を大会会場でしていたら、ほとんどの参加者がエントリーしたはずです。SCCはそれくらい魅力的で、何かに挑みたい気持ちを持った人たちを惹きつけます。

まだまだ伸び代があるのは大会も選手も同じ。でも、確実に軌道には乗っています。裾野を広げる活動も行われており、世界への扉も開かれていて、すでにその扉を開けている選手もいます。それでいて、日本国内には階段に適性のある人がもっといるはずです。

10年以内にはまったく無名の新星が現れて、過去の記録を大きく塗り替える可能性もあります。そして、それはあなたなのかもしれません。もちろん練習もせずに結果を出せるほど甘くはありませんが、挑戦してみないことには適性があるかどうかなんてわかりません。

そして適性がなくてもいいんです。大事なのは階段に親しむこと。日常生活にある階段から逃げることなく、むしろ積極的に階段を選ぶようになる。それが健康的なカラダづくり、健康寿命を伸ばすことにつながります。年齢も適性も性別も関係なく、ただ純粋に毎日をよりよくするためにステアクライミングの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

URL:https://sjc-kaidan.jp/scc/nagoya

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