日本一早いマラソンレポート「第2回東西対抗東海道53次ウルトラマラソン」

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RUNNING STREET 365主催で行われた第2回東西対抗東海道53次ウルトラマラソンですが、今年は東西各1名ずつの参加になりました。大規模なマラソン大会とは違う、手探りで10年後にメジャー大会になることを目指したこの大会の内容をレポートします。

本来であれば開催は12月27日〜30日でしたが、東軍の立野選手の仕事の都合により、急遽レギュレーションを変更して、東軍は23日、24日、29日、30日での開催となっています。

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東軍は東京日本橋から天竜川西側にある六所神社まで、西軍は京都三条大橋から同じく六所神社まで走ります。正確な距離を出すのは難しいのですが、両者ともに約250kmの距離を走ります。

正確な距離を出すのが難しい理由のひとつに、この大会はチェックポイントを通過すればどのようなコースを走ってもいいというルールがあるためです。エイドもありませんので、自分のタイミングで食事を行います。

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ルールとして決まっているのはあと、走行時間を5時〜23時(初日のスタートは7時、最終日のゴールは17時)までに限っているということです。冬のランニングということで、体を冷やしてしまうことを避けるためのレギュレーションです。

ただしこのレギュレーションが、ランナーを苦しめることになります。4日間で走りきる予定であれば、走行可能時間の都合で60km-65km-65km-60kmで走るのが理想ですが、例えば西軍の初日は26km地点から80km地点くらいまで宿になる施設がありません。

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東西対抗東海道53次ウルトラマラソン(以下EWTU)では、宿も自分で用意します。参加費の1万円に含まれているのは、スタートからゴールまでの荷物の運搬と、完走証、GPS端末の使用、そして4日間のサポートのみです。

サポートとしては宿泊先への誘導などがありますが、自分がどこまで進むかは自分で決めなくてはいけません。

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西軍はどうしても初日のうちに鈴鹿峠を越えて、亀山の手前まで行かなければ基本的に宿泊先がありません。初日に80km近くを走る必要があるのです。

一方の東軍は東海道随一の難所、箱根が待ち受けています。スタートから98kmで箱根の関所(芦ノ湖)ですが、これは箱根駅伝の往路を1人で走るのと同じですので、4日間のレースと考えたとき、走れても自重する必要があります。

もっと堅実に行く場合は、62.8km地点にある平塚宿泊まるという方法もあります。

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各自が自分なりの戦略を立てて、その日にどこまで走るかを決める。これがEWTUの面白さのひとつです。そして何事も思い通りに行かないのが250kmという距離です。

昨年の唯一の完走者、西軍の出口選手は50kmの日本代表として、世界との戦いを経験しての2年連続の参加です。目標は2日間での完走で、昨年の失敗を踏まえた上での、作戦をしっかり練っての挑戦でした。

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そんな出口選手がスタートした時点で、京都の空は強い雨模様。昼には止むという予報も、体を冷やすには十分過ぎる雨でした。そして鈴鹿峠の手前、50kmくらいを走ったところで、出口選手の右膝にトラブルが発生します。

強い痛みを伴う右膝痛。本来であればリタイアしてもおかしくない痛みをいきなり抱えてしまいました。

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一方の東軍の立野選手。自分の走力を考えて手堅く4日間で走りきる作戦ですので、初日から無理をすることはありません。仕事の都合で先行してのスタートになりますが、着実に距離を伸ばしていきます。

ただし、こちらは暑さとの戦いでした。東京から横浜を抜けるまでは信号も多く、しかも横浜は坂が多くアップダウンがあるため思うように進めません。ウルトラマラソンを完走できる走力があっても、思うようにはしれないのが交通規制をしていないロードの難しさです。

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日中の暖かさは日が沈むと一気に消え去り、寒さが立野選手に襲いかかります。夕方になると一気にペースダウン。それでも堅実に一歩一歩を重ねることで、初日は二宮まで走りきります。

二宮は大磯の約5km先ですので、初日は約70kmの走りです。

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西軍の出口選手は右膝の痛みに加えて、鈴鹿峠の寒さ、そして再びの雨に苦しめられることになります。リズムに乗りたい下り坂も歩くしかできません。それでも、関宿を通過して、そのまま前に進みます。

初日の目標は120kmだったのですが、たどり着けたのは昨年と同じ100km地点の四日市宿です。膝がまったく思うように動かないことを考えると、その走りは驚異的です。何よりも「絶対完走する」という思うを背負っている精神力の強さが伝わってきます。

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2日目のスタート前、強い寒気が流れ込んだことで、鈴鹿峠は真っ白な雪景色。京都にも雪が積もったとのことで、いかに寒い中での走りだったかがわかります。出口選手は少し長めに休憩を取ってからのスタートです。

目標は昨年と同じ豊橋ですが、膝の状態と相談しながらになります。

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立野選手は早朝からスタートして箱根越えを目指します。今後のことを考えると、なんとかして沼津までは行っておきたいところです。ただし天下の険、箱根の山はそう簡単には走れません。

小田原宿を通過したのが7時12分、箱根宿は13時6分、三島宿で17時です。箱根を越えるまでの30kmに10時間近くかかった計算です。それでもなんとか沼津宿に到達しての2日目終了です。

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西軍の出口選手は桑名以降の変わらない景色に悩まされながらも、着実に距離を伸ばしていきます。それでも膝の痛みは深刻で、とても豊橋までは走れそうもないとの判断で、2日目のゴールを岡崎に設定しなおします。

出口選手はその日にどこまで走れるかがわからないため、宿泊はすべてインターネットカフェを選びます。それに対して立野選手はホテルを事前に予約して、周到に準備している2人は対照的ですが、ただ同じ思いを持って天竜川を目指しています。

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3日目の出口選手は70kmを走り、3日で終わらす作戦に出ます。かなりリスクが高いのですが、昨年3日間で走ったというプライドと、東軍の立野さんが勝負を仕掛けてきたら、4日目の午前中の争いになり、今の足では不利になるという判断です。

スピードが出ない出口選手と休養明けて再スタートの立野選手。その差は60kmあったのですが、このあと何が起こるかわかりません。立野選手が100kmを走った場合は、4日目に20kmが残りになります。出口選手も浜松まで進んでおけば残り6kmですが、朝寝坊をするとあっという間にひっくり返る距離です。

それぞれの選手の駆け引きがあり、自分の中の最適解を目指します。

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結果的には立野選手が堅実に80km近くで終了したため、出口選手の心配は杞憂に終わりましたが、それでもなんとかして3日で走りきるという強い意志とともにゴールを目指します。

浜松宿を通過したのが21時35分。走行可能時間の23時まで、残り6kmちょっとを1時間25分で走る必要があります。通常であればなんともない距離ですが、膝の痛みはとうに限界を超え、1時間で4km進めればいいというくらいまでペースダウンしています。

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冷静に判断すれば間に合わない可能性もある時間です。それでもゴールを目指し、なんと制限時間いっぱいの23時にゴールの天竜川・六所神社にたどり着いて、無事3日目ゴールで連覇を果たしました。

疲労困憊でしたが、自分の目標を達成したことの充実感と、たどり着けたという安心感で満たされているのがわかります。

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もちろんレースはまだ続きます。立野選手は4日目の17時までにゴールしなければ完走になりません。ここまで来て完走できないというのは、悔しさしか残りませんので、しっかりとした足取りでゴールを目指します。

西軍の出口選手は並走を考えていたそうですが、立野選手が速すぎるため、並走は反対に足を引っ張る可能性があると自重します。それでも所々で応援をして、立野選手の背中を押します。

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敵同士ではあるものの、同じゴールを目指す者同士の一体感がそこにはあります。

レース終了の約40分前、東軍の立野選手が16時21分に無事ゴールしまし、250kmの旅に終止符を打ちます。スタートしたときには遥か遠くにあったゴールに、ベストを尽くしてたどり着く。

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ゴールに立つ2人の挑戦者は2016年のランを最高の形で締めくくれたのではないでしょうか。

ゴール後は昨年同様に浜松駅で、餃子を囲んでの打ち上げです。お互いの健闘をたたえ、そして苦しかった場所を振り返りながら、楽しい時間を過ごす。この時間のためにゴールを目指したという出口選手。

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来年以降はもっと多くのランナーにこの喜びを味わってもらいたい。RUNNING STREET 365として、もっとしっかりした体制で大会運営をしよう。そう感じた打ち上げでした。

ちなみに2017年の開催は12月28日〜31日になる予定です。大晦日にかかりますが、それでも走ってみたいという人は、来年のスケジュール帳に東西対抗東海道53次ウルトラマラソンと書き込んでおいてください。

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