春マラソンというのはつくづく難しいものだと思わずにはいられません。2週間前には雪でハセツネ30Kがコース短縮になっリ、1週間前には雨。ところが今年のかすみがうらマラソンは、予想気温が26℃。初夏の陽気です。
どれだけしっかり準備をしていても、この気温の変化には体がついてきません。しっかりと走りきれる準備をしてきた人ほど苦しいレース展開になったかもしれません。
自分の力を過信せずに、いつもよりもペースを落として、体との対話をしながらペースを変えていく。簡単なようでとても難しいことです。ただ、それができなければ30km手前で失速をして、苦しいだけのレースになります。
30kmまで行けばいいほうかもしれません、開始2時間も持たずにリタイアしてしまったランナーもいました。それは決して走力の低いランナーではなく、走れるからこそ飛ばしすぎてしまって、「これ以上は危険」と判断した人たちです。
かすみがうらマラソンはスタートが10時からと、一般的なマラソン大会よりも早い時間から始まります。このため、神奈川の小田原からでも日帰りで参加できる大会です。
すべての競技を合わせると、2万人を超える参加者がいます。春マラソンで競合がないというのも、多くの参加者が申し込みをする理由のひとつですが、春マラソンだから記録は無視して楽しく走ることを目標にしている人が多いのかもしれません。
もちろんそれだけではなく、土浦の街全体がこのマラソン大会を盛り上げようとしています。あまり知られていませんが、土浦は歴史のある観光地で、見どころがたくさんあるだけでなく、観光に力をいれているためガイド付きで観光を楽しめます。
お父さんはマラソンを走り、その間に土浦観光を楽しむことができます。そして土浦の美味しいものを食べ歩いたりしているうちに、ゴールの時間になります。
その反面、応援のしづらい大会です。ランナーが出発してしまうと、自転車でもないと選手を追いかけることができないコース設定です。しかも途中で道幅が狭くなるため、ランナーとすれ違えなくなり、それ以上進めなくなります。
スタート直後とゴール前でしか家族やラン仲間が応援することができません。もっともマラソン大会というのはそういうものであって、東京や大阪のように何度も応援できる方が珍しいのですが。
地元の人たちも応援してくれますが、いかんせん人の少ない場所を走ります。今回のかすみがうらマラソンのようなコンディションですと、どうしても自分と向き合う時間が長くなります。それを好むか嫌うかによって、かすみがうらマラソンの評価がわかれるかもしれません。
ただし、コンディションがどうであれ、かすみがうらマラソンがとてもよく出来た大会だというのには間違いありません。駅から会場までのアクセスの良さ。スタート直後に渋滞しますが、スタートから最後尾までのロスもものすごい多いというわけではありません。
できれば6時間制限ではなく6時間15分制限になると、もう少しランナーにも優しい大会になるのですが、こればっかりは道路事情もあるのでしょうから、仕方ありません。
土浦までのアクセスもよく、コースも走りごたえがあり、マラソン以外のイベントもしっかりしていて楽しむことができる。「ちょうどいいマラソン」というのが、かすみがうらマラソンを取材して感じたイメージです。
走ることを純粋に楽しむのであれば、ほどよい緩さのあるかすみがうらマラソンは、もっと人気になっていい大会です。ただし、春マラソンの難しさです。記録を狙えない大会に出ることに意味を見いだせないランナーには向いていません。
むしろシーズン最後にして、脱水症状になり大きな疲労を負ってしまう可能性もあります。これからウルトラマラソンやトレイルマラソンに出ようという人にとっては、避けるべき大会かもしれません。
最初から「ウルトラマラソンの練習」という位置づけにしておくと反対にとてもいい練習になると思うのですが、そのモチベーションでフルマラソンを走るのはなかなか難しいところです。
それでも走り終えたランナーたちの表情がとても晴れやかなのは、どんな結果であれかすみがうらマラソンを楽しめたからでしょう。暑さも苦しさも含めてマラソンです。簡単に走れなかったからこそ次につながります。
来シーズンは今シーズン以上に走れるようになるために、その気持を高めるために、かすみがうらマラソンを走るという選択肢はありかと思います。うまく走れた人も、うまく走れなかった人も、何かをつかんでシーズンを終えられる。素敵な大会かと思います。
ひとつだけ気になったのは救急車の出動回数の多さです。
これは大会側が悪いというよりは、わたしたち情報発信をする側が、もっと春マラソンの心得のようなものをしっかりと発信していかなくてはいけません。頑張ってはいけないコンディションがあるということを、きちんと伝えることがRUNNING STREET 365の役割のひとつです。
そして、今日のようなコンディションのときは、設定タイムよりもタイムを下げるという判断を当たり前に行えること。そして、タイムだけが自分の頑張りの判断材料にしないことを、もっと伝えていかなくてはと痛感しました。
多くの魅力的な大会が増えてきた中で、かすみがうらマラソンのような、じっくりと自分と向き合うことのできる大会の存在は貴重です。1年に1度くらいはそうやって自分と向き合うためだけにフルマラソンを走るというのもいいのではないでしょうか。
スポンサーリンク