今年も5月1日に北京の八達嶺古長城で万里の長城マラソンが開催されました。70人近い日本人ランナーと、130人以上もの世界中のランナー合わせて、200人以上が万里の長城を駆け抜けました。
さきに断っておきますが、RUNNING STREET 365は、万里の長城マラソン日本事務局を兼ねています。そのため、冷静な評価というものはとても難しいのですが今年は、これまでで一番成功した大会だったのではと感じています。
毎年、日本の大会では考えられないようなトラブルが発生しています。ところが、今年も課題は残ったものの、昨年のようにどのように手を打っていいかわからないというものではありません。
「こうすれば、もっと良くなる」日本のマラソン大会が当たり前に感じる、当たり前の状況にようやくたどり着いたといったところです。
今年の万里の長城マラソンの参加者には、大きなチャレンジをする人がいました。そもそも普通のランナーでも、万里の長城マラソンを走ることはチャレンジです。フルマラソンを4時間で走る人でも、完走するのが難しい大会です。
制限時間は10時間ありますが、10時間の制限時間内にゴールできたフルマラソンのランナーは、おそらく2割くらいです。
そんな大会に小さな鈴の音プロジェクトのメンバーが参加しました。小さな鈴の音プロジェクトは、日本と韓国、そして中国の視覚障がい者が世界5大陸の挑戦するプロジェクトです。
今回走った視覚障がい者が日本と中国の方でしたが、メンバーのサポートがあり、見事ハーフマラソンを走りきっています。普通に目が見える人でも厳しいコースを、視覚障がい者が走ることは本当に大変です。
それでも、彼らの挑戦は見事成功となりました。
それに刺激を受けるように他のランナーたちも、おそらくランニング人生で経験をしたことのないほどの苦しみを味わったかもしれません。天気予報では28℃となっていましたが、実際には30℃近い気温です。
乾燥しているため、意外と暑さが気にならないのですが、汗が流れないだけで、基本的は大量の汗をかいてます。無意識に脱水症状になるとても危険な状態です。
フルマラソンの場合は、片道7kmのコースを3往復します。昨年はその両端にしかエイドがありませんでしたが、今年はコース途中で数ヶ所、給水ポイントがあります。マラソン大会だからエイドは当たり前と思うかもしれません。
ただ、万里の長城の急な坂道で何十本ものペットボトルを運ぶだけでも一苦労です。
それでも十分な水を用意していたことで、軽度の熱中症になる人は避けられない気温でしたが、深刻な熱中症になる人も出ませんでした。過去、何年も5月1日の北京を訪問していますが、ここまで気温が上がったのは初めてです。
日差しがランナーを苦しめるため、途中でリタイアをする人も多かったのですが、それでも近年まれに見る天気の良い万里の長城の景色が、クレイジーなランナーたちの心を支えます。
とても苦しいはずなのに「楽しい」という声があちこちで聞かれます。参加人数も多くないため、国籍を問わず、そこにいる人はみんなファミリーのような雰囲気を共有しています。
お互いの苦しそうな顔を見て苦笑をしたり、声を出して励まし合ったりします。
この苦しさの共有と、日本では絶対に見ることのできない景色こそが、万里の長城マラソン最大の魅力です。そして、完走できなかったランナーたちは、その悔しさからリベンジのための参加をし、万里の長城マラソンにハマっていきます。
とにかくコースはタフです。だからこそしっかり練習を積んで挑戦する。練習量がそのまま結果となって現れるマラソン大会が万里の長城マラソンです。
これまで完走できていた人も、ちょっとした気の緩みではないですが、きちんと追い込んだ練習をしないまま挑むと、簡単に中国4000年の歴史に跳ね返されてしまいます。とても簡単とは言えません。それでも挑戦した人だけが感じられる何かが、そこにはあります。
もちろん短い距離を楽しみながら走るという参加者もいます。それでも決して楽なコースではありません。「私は10kmだから全然大変じゃない」と言っていましたが、10kmロードの20kmくらいの負荷はあります。
でも、とにかくこの大会の雰囲気が好きでリピートしてくれる人がいます。または、1年に1回ぐらいはバカになろうという気持ちで参加してくれる人もいます。
こんなクレイジーな大会に集まってくれる人は、リピーターでも初めての人でもやっぱりクレイジーで、一人ひとりがとても魅力的です。こういう人たちが集まってくる万里の長城マラソンは、運営側のひとりとして贔屓目かもしれませんが、世界に2つとない大会だと感じています。
まだまだいたらないところが多い大会であることは否定できません。社交辞令でもなんでもなく、本当に参加者に支えられながら、参加者が増えている大会でもあります。
そうやって支えてくれる参加者の人たちに報いるためにも、さらにいい大会にしていきたい。まだまだ伸びしろはあると感じている大会です。
コツコツと知名度を上げて、もっと多くのランナーに知ってもらいたい。多くのランナーと想像を絶する苦しみを共有したい。そんな思いで、RUNNING STREET 365は万里の長城マラソンの運営に関わっています。
普通の大会では物足りないランナーさん。万里の長城マラソンに求められるのは、走力ではなく、好奇心の高さです。ぜひ来年以降の万里の長城マラソンに参加してください。
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