人気のマラソン大会というのは大きく分けて2種類あります。ひとつは東京マラソンのような何万人も走るような都市マラソンで、もうひとつは、コアなファンのいる数百人規模の小さなマラソン大会です。
その小さなマラソン大会の中でも、おそらく日本で一番ではないかと思うくらい、リピーターの多い大会。それが飯能ベアフットマラソンです。
ランナーですと、名前からわかるかもしれませんが、日本で唯一の裸足ランナーのためのマラソン大会です。しかも大会名からはわからないと思いますが、この大会は裸足でトレイルを走ります。
昨年まではシューズの部もあったのですが、今年からは裸足の部しかありません。5㎞、10㎞そして、日本選手権となっている21.1㎞の3種目と、幼児の部、小学生の部の2種目です。
コースは飯能のトレイルですが、裸足のためにきれいに整備されているわけではなく、小さな石がゴロゴロ転がっている箇所がいくつもあります。もちろん大会側で、ある程度の掃除はしますが、石を取り除いたりはしません。
危険じゃないの?
そう思う人も多いかと思いますが、今回も合わせて6回の大会で、足の裏を切ったというようなことはまったくないか、ほとんど発生していません。人間の体は思った以上によくできています。
ただし、痛くないかというと、ものすごく痛いです。痛すぎて笑うしかないので、日本一笑顔の多い大会でもあります。
そんな大会も今回で6回目の開催になり、今年は飯能ベアフットマラソンを共済している日本ベアフット・ランニング協会の吉野剛さんが、ケニア裸足プロジェクトを行っている関係で、ケニアからランナーを招待しての開催となりました。
世界でもトップクラスのランナーが揃うケニアのランナーが、どのような走りを見せてくれるのか。そして日本の裸足ランナーたちは、どのような走りでケニア人ランナーに挑んでいくのか。とても興味深い展開となりました。
一方で初めて裸足で走るランナーというのも大勢います。裸足に興味を持って、普段からワラーチのようなサンダルで走っている人もいれば、裸足で走るというキーワードに反応した、裸足とはまったく無縁のランナーもいます。
最初にスタートしたのは小学生の部で、続いて幼児の部でした。本当に小さな子どもたちが、裸足でトレイルを駆け抜けます。トップのランナーは大人顔負けのスピードで走っています。
子どもの柔軟性や適応力の高さは、大人のランナーでも学ぶことがたくさんあるのだと気付かせてもらえます。
大人の部は21.1㎞からスタートです。
会場となっている広場からトレイルまでの数十メートルは、細い道ですのでスタート渋滞が起こりますが、よくあるトレランの渋滞とは比較にならないほどスムーズにメインのトレイルに出ます。
そして勢い良く飛び出したランナーたちは、アップダウンの激しいコースに挑むことになります。
21.1㎞は同じコースを3周するのですが、1周目はアドレナリンが出ているからか、ちょっとした岩場くらいなら、物ともせずに走っていきます。ただし、かなりの上り坂がありますので、そうなるとトレイル慣れしていない人は歩くしかありません。
トップランナーは上りも下りも、荒れ地もまったく気にすることなく走ります。
序盤はケニア人ランナーが飛び出す形でしたが、徐々に日本人ランナーたちも迫っていきます。周回コースで、なおかつ折り返しが2ヶ所あるコースですので、ゆっくり走るランナーも、トップランナーのとんでもない裸足の走りを見ることができます。
ただし、そこで刺激を受けてスピードアップしてしまうと、確実に後半に響いてしまいます。21.1㎞とはいえ、トレイルで裸足です。足裏の痛みは徐々に蓄積され、2周目の後半あたりから、多くのランナーはスピードが一気に落ちます。
それでも、ランナー同士で声を掛け合いながら、ゴールを目指します。
普通のマラソン大会では考えられないことですが、この大会ではランナー同士で声を掛け合ったり、ハイタッチをしたりする姿を目にすることができます。お互いがライバルでありながらも、同じゴールを目指す仲間。
1人ではとても走りきれそうにない21.1㎞の距離を、仲間と一緒になって走りきる。これが飯能ベアフットマラソンの魅力です。
とはいえ、この大会の雰囲気に馴染めない人が増えてきたかなという印象もあります。この大会が始まったころはほとんどのランナーが笑顔で走っていましたが、今年はしかめっ面で黙々と走っている人が増えてきました。
参加者が増えるというのは、そういうことなのでしょう。
大会事務局は「裸足を楽しんでもらいたい」という思いを込めて開催していますが、楽しむよりも修行僧のようにレースに挑み、そしてただ痛みに耐えているだけという人が目立つようになってきました。
この大会は、もちろん速さを競うレースでもありますが、その本質は裸足を楽しむことであり、競争相手は自分自身です。自分に勝ては必然的に順位もタイムも上がります。自分に負けないように裸足練習に取り組めば、ちゃんと結果が出ます。
でもそれは、裸足を楽しむということの先にある副産物のようなものです。
たくさんの裸足ランナーと、一緒に走ることを楽しみたい。そういう思いがありますので、最後のランナーが戻ってくるまで会場に残っている人がかなり大勢います。さらに、大会主催の打ち上げには、多くの参加者が申し込みをして裸足の交流を楽しみました。
裸足というとてもコアな大会で、本当に小さなコミュニティをベースとした大会だから、参加者同士の距離が縮まります。同じコースを走ったら、それはもう仲間です。
レースに参加して、ただ走って帰ってくる。そういう大会とは一線を画する大会。それが飯能ベアフットマラソンです。
裸足で走るというハードルを越えなくてはいけませんが、それでも裸足ランニングに興味がある人は、ぜひ参加してもらいたい大会です。裸足で走ったことのない人でも、5㎞なら問題なく参加できます。
ただし、5㎞でもかなりの痛みを感じるかもしれません。でも、その痛みは走り終えるとなぜか心地いいものに変わります。
向き不向きがはっきりするタイプのマラソン大会ですが、一度参加したらまた戻ってきたくなる中毒性の高い大会です。普通のマラソン大会では満足できない人は、ぜひ来年の飯能ベアフットマラソンに参加してみましょう。
RUNNING STREET 365では、2018年のエントリーが始まりしだい紹介します。
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