フルマラソンのペースは自分の感覚で決めるのが理想

マラソンを始めて、まだそれほど経験のないランナーさんは、フルマラソンの後半で失速するというのを何度も繰り返しているかもしれません。そこで、ラン仲間から「ネガティブスプリットで走ってみたら」と勧められたという人もいますよね。

ネガティブスプリットは前半抑え気味に入って、後半に力を温存しておくという走り方になります。この方法なら30kmでの失速を防げそうですが、ペースを上げられなかったらどうしようという不安もありますよね。

後半型のネガティブスプリットに対して、前半にタイムの貯金を作って計画的にペースを落とすのがポジティブスプリットです。ネガティブスプリットとポジティブスプリットの考え方については下記記事を参考にしてください。

ネガティブスプリットとポジティブスプリットどっちがいい?

確かにネガティブスプリットのほうがタイムを出しやすいのは事実です。でも、ネガティブスプリットは力を出しきれないというリスクがあります。フルマラソンで自己ベストを更新しようと思うと、100ある能力のうち100を出し切らなくてはいけません。

実際に100を出し切るのは現実的ではありませんが、どこまで100に近づけるかというのがマラソンでタイムを出すためのポイントです。ちなみに、後半に失速するというのは、途中で100を使い切った状態になります。

使い切ってしまうと、キロ5分で走っていたのがキロ6分、7分となり取り戻せないくらいのゆっくりペースになってしまい、タイムもひどいものになりますし、ゴールしたときの「やってしまった」感も高くなります。

キロ5分で42kmを走れば、3時間30分(210分)でゴールできます。ところが30kmで失速して、そこからの平均ペースがキロ6分になったら3時間42分(222分)、キロ7分になったら3時間53分(234分)です。

失速することがいかにタイムに響くのかが分かってもらえるかと思います。

10〜20秒/km程度の失速なら、トータルのタイムもそれほど悪くはありませんが、100を出し切ってしまったら、足はもう思うように動きません。下手すれば歩いてしまいますので、タイムはもっと悲惨なことになります。

だから、多少余力を残してでもネガティブスプリットで入って、後半も走り切ることで良いタイムを出せるというわけです。

でも、これが本当に良いのかというと、そうでもありません。マラソンの理想は、あくまでも最初から最後まで同じペースで走り切ることです。少なくとも自分がどのタイムなら、最初から最後まで同じペースで走りきれるかを知っている必要があります。

ただ、それはキロ何分なら、最後まで走りきれるというものではなく、「これくらいの辛さなら最後まで走りきれる」という感覚的なものでなくてはいけません。

なぜなら、マラソンは常に同じ気候で開催されるわけではありませんし、自分自身のコンディションも常に変わります。ですので、ある大会ではキロ4分50秒が無理のないペースだったとしても、次のレースではキロ5分が無理のないペースだったりします。

自分の体で「これくらいなら無理なく行ける」という感覚を見つけること。これがマラソンで成長するにはとても重要なポイントになります。

ランナーは目標完走タイムから、その日のペースを決めてしまいがちですが、そもそも目標完走タイムが適当に決めたものですので、「その日のペースで走れたら良いな」といった希望でしかありません。

無理なタイムを設定をしていれると、どうやったて後半に失速してしまいます。これではレース展開云々ではなく、レースが始まる前に失速が決まっているようなものです。

自分の感覚が分からないという場合は、先のリンク先で説明している心拍数を利用する方法がおすすめです。「これくらいの心拍数なら最後まで走りきれる」というのを覚えておけば、オーバーペースになることはありません。

しっかりトレーニングを積めば、それだけ心拍数が上がりにくくなりますので、ペースを上げても大丈夫ということになります。逆に、練習があまりできなかったときは、心拍数が簡単に上がってしまいますので、ペースを下げなくてはいけません。

ただ、心拍数を把握するには心拍測定機能のついたランニングウォッチが必要ですし、これまでペースを把握するのにランニングウォッチとにらめっこしていたのが、今度は心拍数を把握するために同じことを繰り返すことになります。

それではいつまで経っても機器に頼り続けなくてはいけません。ランニングウォッチを家に忘れてしまったときなどは、不安を抱えたまま走ることになります。それってもったいなくないですか?

ランニングウォッチを見ても構いません。でもそれは「これくらいなら心拍数が160くらいからな」という答え合わせをするくらいの感覚で使ってください。練習からそれを繰り返していると、いずれ手元を確認しなくても、きちんと自分のペースで走れるようになります。

そして、「今日はこのペースが理想」と判断できるようになるというわけです。

これができるようになると、しっかりトレーニングをして、いい準備ができれば自ずとタイムを縮めることができます。逆にコンディションが悪い日に無理をして、ケガをしてしまうというリスクを下げられます。

「今日はダメな日だ」と早めに判断できれば、必要以上に体に負担をかけずに済みます。もちろん、レースを放棄するのではなく、悪いなりにも無理のないペースで最初から最後まで走り切りますので、失敗レースですらその後の糧になります。

闇雲に走って、失速を繰り返していたのではいつまで経っても、自分の思うように走れるようにはなりません。

フルマラソンをうまく走れないと感じている人は、この自分の感覚を磨くということを意識してみましょう。すぐに結果はでませんが、1年2年と続けていけば、必ず自分の思い通りの走りができるようになります。

トップアスリートのように1分1秒を削りたいのであれば、設定ペースを頑張って維持する走りというのもいいかもしれませんが、市民ランナーであればタイムよりも、自分の感覚で走るということを重視してみるのはいかがでしょう。

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