舞台は高さ300mで日本一高い超高層ビル「あべのハルカス」。展望台までの1610段の階段を駆け上がるだけ。トップアスリートは10分以内にゴールする短時間勝負のレースがハルカススカイランです。
すでに今年で4回目の開催となり、世界の超高層ビルを駆け上がるVERTICAL WORLD CIRCUITの1つとしても、世界中から注目を浴びている大会です。
フルマラソンとは違った追い込み方をするので、ゴールしたランナーは尋常ではない疲労感と、達成感を得られます。
RUNNING STREET 365はこれまでプレスとして大会のレポートをお伝えしてきましたが、今年は参加者のひとりとして、客観的にハルカススカイランについてレポートします。
ハルカススカイランのレースは、あべのハルカスで行われますが、受付や着替えなどは、少し離れた天王寺公園エントランスエリア「てんしば」で行います。受付は9時から開始。
一般午前の部は9時から9時20分の受付となっており、9時過ぎには行列ができている状態。もう少しオペレーションを効率的にできるといいのですが、これくらいならどのような大会でもありえること。
更衣室は小さなテントが1つだけです。天気が良かったので更衣室を使わずに着替えをしている人がたくさんいましたが、雨などが降ったとしたら、ちょっと1つのテントでは心もとない感じ。
参加者という立場で見ていると、普段気づかない部分が見えてくるものです。
レースは「VWCエリートの部」「一般エリートの部」「団体の部」「一般男女の部」の順で進んでいきます。その後、親子や小学生などの部があり、1500人を超えるランナーがハルカススカイランに集結します。
ただ、それほど混雑した感じもなく、レースは4人ごとのウェーブスタートというのもあって、ほとんどストレスなく階段を駆け上がることができます。
ただし、前方のランナーを追い越そうとすると、階段の外側から追い抜かなくてはいけないので、かなりのロスが発生します。
今回ランナーを苦しめたのは、階段の室温でした。あべのハルカスの外でも20℃近くにまで気温が上がっており、密閉空間である階段エリアの室温もそれにつられるように上昇します。
止まらない汗。上がらない足。「もう十分に頑張った」と走るのをやめたくなる心。いや、ほとんどのランナーはとっくに走るのはやめています。人によっては10階も上がらないうちに心が折れます。
このまま階段が永遠に続くかのような錯覚があり、足を止める理由としては十分すぎるほど心拍数が上がっていきます。
そして階段が閉ざされた空間にあるため、心なしか酸素濃度が薄くなっている気がします。まるで富士山頂を走ったときのような酸欠状態になり、自分の判断力が鈍っていきます。
ロードレースでここまで自分を追い込むことは簡単ではありません。階段レースだからこその限界突破。ただ、この苦しみは中毒性があります。ゴールして「もう2度と走らない」と言っていても、数時間後には「もっと上手く走れたはず」なんて思い始めます。
苦しみが一気にやってくるので、回復するのも早い。これもハルカススカイランの面白いところです。
ゴールして息を整え、大阪の景色を一望したらレースは終了。完走証はデジタル発行で、スマホでQRコードを読み込み、自分のゼッケン番号を入力するとPDFをダウンロードできます。
記録証発行でプリンタが壊れるなどのトラブルを避けることができますし、発行待ちの行列もできません。こういう試みは他のマラソン大会でも増えていくといいですよね。必要な人だけ紙でもらうのでもいいので。
ただ、見てもらってわかりますように、ハルカススカイランのデジタル完走証はフォントの種類や文字のバランスが悪くてダサい。なぜこんなことになったのか不思議なのですが、参加者として残念に感じたのはこの点だけ。
デジタル化というのは先進的で面白い試みですが、こういうところの詰めが甘いと満足度が下がってしまうので、ちょっともったいないところ。
とはいえ運営も年々スムーズになっていますし、参加者は走ることだけに集中できる環境が整っています。今後、雨などが降ったときに、受付からあべのハルカスまでの移動などが課題になる可能性もありますが、これまでは天候に恵まれており、11月開催が続くならそれほど心配する必要はないかもしれません。
決して楽な大会ではありません。それなりのタイムを出したければ、それなりの練習も必要です。ただ、その練習結果がタイムというわかりやすい結果として現れます。いい準備をすれば過去の自分を超えることができ、そうでないなら悲しい結果に終わります。
競争相手は自分。そういう意味では、ハルカススカイランは常に成長していたいというランナーにとてもおすすめの大会です。
11月はマラソンシーズンですので、階段レースどころではないかもしれませんが、そこまで疲労は残りません。自分を追い込むのが好きなランナーさんは、ぜひ2020年大会に参加してみてください。