日本一早いマラソンレポート「Red Bull 400 2025」

Red Bull 400

札幌大倉山ジャンプ競技場を駆け上がる新感覚逆走レース「Red Bull 400」 が、2025年5月17日に開催されました。大会名からもわかりますように、走る距離は400m。陸上トラック1周分の距離でしかないのに、この競技ではトップレベルのランナーですら、3分以上かかります。

標高差約130m、最大傾斜は37度の急勾配。1人で400mを駆け上がるシングル部門だけでなく、4人の仲間でバトンを繋ぐリレー部門もあり、さまざまなスタイルで楽しめます。このため、全国各地から参加者が札幌大倉山ジャンプ競技場に集結。RUNNING STREET 365のスタッフもレースに参加させていただいたので、大会内容をレポートしていきます。

目次

過去最大の参加者数になった「Red Bull 400 2025」

Red Bull 400

昨年大会の参加者数は1,644名で、今年は1,798名がエントリー。過去最高の参加人数となっています。北海道の情報番組などで大会の映像が放送されるなどして、認知度が上がってきたのも影響していますが、何よりも参加者が「また走りたい」と思えるイベントになっていることが影響しているように感じます。

人生最大級の苦しさここにはあり、それに打ち勝つ気持ち良さ、打ち負かされた悔しさが磁力となって、リピートしてします。でも、参加者を惹きつけるのはそれだけではありません。Red Bullのイベントらしく、大音量の音楽と軽快なMCで、会場から過度な緊張感を消し去ってくれます。

Red Bull 400

さらに学生リレーの部門が用意されるなど、学生の参加者も多く、若いエネルギーで満たされています。そういう意味ではサブ3を狙うようなシリアスランナーだと、「Red Bull 400 2025」は勝手が違い、どこかソワソワしてしまうかもしれません。

Red Bull 400はマラソン大会ではなく、ランニングフェス。スタートラインで横に並ぶのはライバルではなく、「自分に打ち克つ」という同じ目的を持った仲間。だから大会会場は一体感が生まれ、タイムや順位に関係なく、全力で挑むランナーに惜しみない声援が送られます。

Red Bull 400

順位やタイムは出ますが、挑戦する気持ちに順位はなく、それぞれが自分という物語の主役になれるのが「Red Bull 400」という競技の面白いところです。自分を超えていくために苦しみに耐える。仲間のために1歩を踏み出す。まるで青春映画のワンシーンのような体験が「また走りたい」につながっている。

実際に、今回は「後でエントリーしよう」と思っていたら、早い段階で枠が埋まってしまい、残念ながら出られなかった人もいたようです。おそらくその勢いはまだ続き、そう遠くないうちにクリック合戦になる可能性すらあります。

走る前から絶望させられる大倉山の壁

Red Bull 400

「Red Bull 400 2025」の天候は、晴れのち曇り(最終的には小雨も)。第1ヒートがスタートする9時には汗ばむようなコンディションでしたが、徐々に風が強くなり、上空が雲に覆われていきます。ただ、風は札幌大倉山ジャンプ競技場らしく、麓から吹き上げる風。暑さもなくタイムを狙うには悪くないコンディションです。

実際にどのヒートでも気持ちの込められたいい走りをするランナーが続出。上位30名(各ヒート1位とタイム上位)が決勝レースに進出できるのですが、単純にタイムだけなら、5分を切らないと30位以内に入ることもできません。ちなみに予選1位は最年少16歳の鈴木選手が3分59秒56と4分切りを達成しています。

Red Bull 400

ただ、ほとんどの参加者にとって、札幌大倉山ジャンプ競技場は立ちはだかる壁。近くで見ると絶望しかありません。私は昨年に続き2回目の参加となりましたが、現地に到着して最初に思ったのは「こんな高さだった?」ということ。

自分の記憶では、もっと緩やかな傾斜のイメージがありましたが、あまりにも大変過ぎて記憶を捏造していたようです。初めての参加者の中には、上りきれるのか不安になっている人もいるほど。でも、思いのほか走れるものです。とんでもない苦しさを伴いますが。

Red Bull 400

これから参加するという方のために書いておきますが、体重がそれなりに軽い(適正体重以下)なら、運動習慣がなくても何とか上り切ることはできます。でも、絶対に上り切れるわけではありません。今回は途中で動けなくなりリタイアした参加者もいましたので、きちんとトレーニングを積んで参加することをおすすめします。

安全に走りきりたいなら、15分以上、傾斜が10度以上の坂道を走る練習を何度も繰り返す。それくらいのトレーニングをしても、札幌大倉山ジャンプ競技場はやはり壁に感じることになりますが、少なくとも跳ね返される心配はなくなります。

試走できない1発勝負だから面白い

Red Bull 400

初めてのチャレンジになった昨年は手元の時計で8分7秒。かなり残念な結果になりました。そのリベンジというわけではありませんが、少なくとも昨年のタイムは上回りたいところ。ただ、昨年は周りを見る余裕がまったくなかったので、今年はタイムよりも、もっと落ち着いて走ることを目標にしました。

1年目の経験から、自分なりの作戦も立てました。できるだけ手を使わずに上ること。そのために、小さなステップで、少しだけ左右にジグザグに進みます。昨年の経験だけでなく、階段マラソンや万里の長城マラソンなどの経験も活かし、自分の知識や経験をすべてを絞り出してたどり着いた答え。

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実際には200mくらいのところで手を使いましたが、1年前よりは手を使っている時間が短く、300mに到達したときには「え?こんなにも楽だったっけ?」と驚くことに。ただ、走りながら課題も見つかりました。昨年、今年とランニングシューズで挑みましたが、路面がフラットでないので上手くグリップしません。

「Red Bull 400」は軽量のトレランシューズで走る」がおそらく正解です。ただ、こういうのも経験を積むことでわかること。次回にトレランシューズで走ってみたら、「やっぱりランニングシューズのほうがいいかも」となるかもしれません。

Red Bull 400

1年に1回しか開催されず、しかもコースの試走ができませんので、毎回1発勝負になります。だから自分なりに仮説を立てて、それをレースで確認することも大切になります。1発勝負でありながらも、次回に繋がるチャレンジができる人が安定した成績を残せるようになります。

フィニッシュタイムは6分22秒。

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なんと昨年のタイムを1分30秒以上も短縮できました。自分なりの試みが上手くハマったのでしょう。ただ、ゴール地点に到着した瞬間に倒れ込んでしまいました。自分の中では少し余裕を持ってゴールしたつもりが、完全にオールアウトしていたのかもしれません。

呼吸が整うまでかなりの時間がかかり、さらに足裏の痛みが取れずになかなか立ち上がることもできず。ただ、そこまで追い込めたことに対して、胸の奥で小さくガッツポーズしている自分もいました。すべてを出し切れる走りができたなら、タイムも順位も小さなことでしかありません。

Red Bull 400

とはいえ、走りながら課題も見つかりました。フィニッシュエリアから降りてくるときには、オールアウトした気持ちよさはどこかへ消えていて、「あれとこれを改善したら、あと1分は縮められるかな」なんてことを考えている自分がいました。

実際にどこまで成長できるかわかりませんが、49歳でもまだ伸び代を感じられるのも「Red Bull 400」の魅力。テクニックや経験で、パワーの低下を補うことができる。どこまでレベルアップできるのかはわかりませんが、少なくとも自分の中に小さな炎が灯ったような気がします。

「Red Bull 400」が人生に輝きを与えてくれる

Red Bull 400

私は男子シングルに出場しましたが、ちょっと羨ましく感じるのがリレーで参加している人たちです。400mを4人で走るから、1人100mしかありません。でも第1走者を除き、とんでもない傾斜と向き合うことになり、しかも仲間が待っているから力を抜くこともできません。

だから苦しさはシングルよりも大きく、たった100mなのに、バトンを繋いだあとに倒れ込んで動けなくなる人もいました。そこまで出し切ると、また違った景色が見えそうな気がします。ただ、ラン仲間を誘うにしても「誰が第1走者になるか」問題があります。

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第1走者は100mですが、下りなのでトップと最下位でも数秒しか差がありません。しかも20秒もかからず終わってしまう。それを誰かにやってもらうのは心苦しいものがあります。札幌在住ならいいのですが、関東から100mを走るためだけに遠征のお誘いするのは無理があります。

ただ今回、シングルもリレーも出ている人たちが大勢いて、目からウロコでした。両方にエントリーすれば、ラン仲間の誰が第1走者になったとしても、そこまで引け目を感じる必要がなくなります(少しは申し訳ないと思いますが)。

Red Bull 400

リレーは個人以上の苦しみがありますが、達成感もあります。もちろん、個人は個人でも苦しむことになります。でも、それは嫌な感覚ではなく、むしろそれを体験したくてスタートラインに立っているところもあります。圧倒的な苦しみを与えてくれる。

それは日常生活では味わえないものであり、特別な体験だからリピートしてしまう。それでいて、走るたびに成長と伸び代を感じられる。それはモチベーションになり、「Red Bull 400」があることで人生がまた輝きだす。そう感じているのは、きっと私だけではないはずです。

Red Bull 400:https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-400

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