昨年のいわて奥州きらめきマラソンは気温が30℃近くまで上がったこともあり、コップ不足などで給水できない人が出るなどしたことが響き、RUNNETでの評価も伸び悩みました。
初回で80点を超えていましたので、決して悲観するほどでもありません。実際に2回目の今回、実際に参加してみて感じたのは、もっと評価されてもいい大会で、とてもおすすめしたい大会の1つだということです。
ただし、「記録を狙わないのであれば」という条件が付きますが。昨年はスタートから暑かったようですが、今年は朝の気温が8℃、スタート時には14℃。この時期としては絶好のマラソン日和かと思われましたが、この後一気に気温が上がります。
4時間経過の12時で24℃、おそらく5時間以上かけて走るランナーは26℃くらいの気温の中走ることになったのでしょう。スタート時には手袋をしているランナーもいました。
ただし、「気温が上がる」というアナウンスはされていましたし、スタート時には日差しも強かったのもあり、厚着をしている人はほとんどいませんでした。
いわて奥州きらめきマラソンのもうひとつ難しさはアクセスにあります。大会指定のホテルを予約した人は送迎バスがありますが、そうでないと数少ないローカル線に乗らなくてはいけません。都会のように何本も電車は来ませんので、遅刻は厳禁です。
参加者の数はフルマラソンで2700人くらい。これはかなり少ない数です。それでも片道通行の区間もあり、増やせてもあと1300人くらいでしょうか。最後尾がスタートするまで3分30秒くらいですので、記録狙いでなければ慌てて並ばなくても大丈夫です。ただ、スタートから3キロくらいまではほぼ追い抜きできません。
それでも最後尾のペースが6:30/km。これは明らかにオーバーペースです。いつも言ってることですが、前半に貯金を作ることに何の意味もありません。自分の走力を考えて、関門に引っかからないように注意しながら、無理のないペースで走ること。これがマラソンの基本中の基本です。
全体が速すぎるというのもあって、無理な追い抜きはほぼありません。そして、ランナーの数に対してエイドの規模が大きいこともあり、マラソン大会によくある、コップが散乱しているということはありません。これはこの大会だからというのではなく、岩手の県民性のようにも感じます。
岩手は雪国ということもあり、家の外に無駄なものがほとんどありません。そのため景色がとてもすっきりしています。もっと都市部に行ったり、家の中はまた別問題だったりするのかもしれませんが、私が見た範囲内はどこもきれいで、ゴミが出やすい私設エイドすら、きちんと片付けられています。
ゴミを捨てる側も、その場を管理する側も、それがきれいにするのが当たり前なのでしょう。当たり前すぎて、それを自分たちから誇ることもないと思いますので、ここでしっかり伝えておきます。エイドでの声援も含めて、いわて奥州きらめきマラソンのエイドは、全国でもトップレベルの完成度にあります。
ただエイドの内容というと、おそらく全国のマラソン大会を走っているランナーにしてみれば物足りなかったかと思います。りんごジュースはありましたが、他にここにしかないものが出てきません。羊羹とバナナとリンゴ。塩タブレットもありましたが、これはランナー側にしてみると、ややがっかりだったと思います。
地域の私設エイドで、そうめんが出てきましたが、あれくらいエネルギーになるものがあると嬉しいところです。
とはいえ、気温が30℃にもなるかもしれない大会で、エイドで何を出すのかというのはかなり難しい問題です。腐る可能性のあるものは絶対にNGです。クッキーなどは水分を持っていかれるので不評です。チョコは溶けますし……そう考えるとバナナというのは、賢明な判断なのかもしれません。
そうであっても、1ヶ所だけでも名物エイドがあれば、RUNNETの評価は5〜10は上がります。もっとも評価をあげるのが目的ではないでしょうから、リスクを取りすぎる必要もありません。美味しいものはゴールしてから食べればいいのですから。
ただ今年もコップ不足が起きたのではないかと心配しています。レース終盤のエイドで、他のエイドよりも並んでいるコップの量が少ないところがありました。2年連続で同じミスはしないと思いますが、そのあたりは今年の評価などをチェックしてみてください。
コースはフラットということですが、前半は小さなアップダウンに悩まされます。しかもこの日は北風が強く、いつものペースで走った人は、前半で潰れてしまったでしょう。後半勝負だと思うと、今度は一気に上がった気温に悩まされます。
要するに勝負ポイントがなく、いつもよりもややゆっくりのペースで淡々と走る精神力が求められます。
そういう時に沿道の声援はとても力になります。途切れない声援とは言えませんが、どんな区間でも地元の人が家の前に出てきて応援してくれます。そして大きな声で背中を押してくれます。
失礼ながら、東北の人でもあんなに大きな声を出して応援してくれるなんて、思いもしませんでした。
さらに奥州の風景が、元気を分けてくれます。どこを切り取っても絵になるのですが、37キロの折り返しは、つい立ち止まってしまいそうになるほどの美しさです。その瞬間は走っているというよりも、走らせてもらっているという気持ちになります。奥州の自然の中を縁あって走らせてもらっている。
それはとても気持ちのいいものです。
そしてその気持ちのよさを維持したままゴール…と思いきや、どことなく違和感が。フィニッシュゲートにはスタートの文字。完走して振り返るとそこにゴールの文字。変なところで、引っかかりました。
スタートとゴールが同じゲートの場合、どちら向きにどう表記すべきなんでしょう。少なくともランナー視点からすると、これはあまり気持ちよくありません。ただゴール写真、スタート写真を撮る側からすると絵になります。
さて、スタートゲート、ゴールゲートは誰のためにあるのでしょう。
個人的にはスタートゲートに向かってゴールするのは、どこか盛り上がりに欠けるのですが、他のランナーさんがどう思ったかが気になります。そして他の大会でどうしているのかも、これから気にして見ようと思います。
正直気になったのはそれくらいで、とてもうまく運営された大会だと思います。
指揮命令系統がはっきりしてますし、現場に任せるところはきちんと任せています。シャトルバスはとてもフレキシブルに対応して、ランナーの負担がほとんどありません。前夜の雨で水浸しになった完走証発行エリアでは、ブルーシートを敷くなどの対応をしています。
小さいところで「こうなればいいのにな」というのはあっても、少なくとも4時間くらいで完走したランナーなら、とても満足できたのではないかと思います。
この大会ならではの魅力という点では少し欠けていますが、それを補って余りある観光とグルメが奥州にはあります。平泉だけでも1日楽しめますし、美味しそうなお店ばかりで、1泊2日や2泊3日ではとても足りそうにありません。
だったら、また来年も走るしかないですよね。奥州の美味しいものを食べるために、いわて奥州きらめきマラソンに出るというのもいいのではないでしょうか。
仲間とワイワイとグルメ旅ランするのもいいですし、1人で歴史に浸るのもいいでしょう。その締めに奥州の自然を感じながら42.195キロの小旅行。記憶に残る旅ランになるはずです。
まだ奥州を訪れたことのない人は、ぜひエントリーを検討してみてください。ただ、暑さに負けないようにしっかり走り込んで準備してくださいね。