自分の走力を知りたいのであれば、陸上競技場のトラックを走ってタイムを確認するのが1番です。トラックは1周400mと決まっていますし、アップダウンもありません。路面もグリップしやすく、それでいて程よい反発力もあります。でも競技場を使った記録会はシリアスランナーが多くて近寄り難いですよね。
走力に自信はないけど、陸上トラックを使った競技会で自分の実力を知りたいというランナーのためにのマラソン大会「プロ・フィッツ杯 Presented by KYUMIN打破 」が開催されました。エントリーしたのは27名。多くの参加者が自分の力を出し切り、いい表情で走り終えている大会となりました。
プロ・フィッツ杯 Presented by KYUMIN打破 とは
「プロ・フィッツ杯Presented by KYUMIN打破 」は走力に自信がないランナーが安心して参加できる大会を目指して、スポーツケアブランドのプロ・フィッツと市民ランナーのための競技会を開催しているKYUMIN打破 がタッグを組んでスタートさせた大会です。
会場は東京都足立区にある舎人公園陸上競技場。当日の天気予報は雨となっていましたが、小雨がぱらつく程度で風もなく、気温も暑くもなく寒すぎもしないベストコンディション。自分を超えていくのにこれほどまでに恵まれた環境はなかなかありません。
他の陸上トラックを使った通常の競技会との違いは、初心者や走力に自信がない人のためのペースメーカーが付き、ポテンシャルを最大限に引き出してもらえるところです。そのペースメーカーはキロ8分30秒から用意されています。最も速いペースでキロ5分。フルマラソンサブ3.5ペースです。
種目は3km・5km・10kmで、第1レースが3km、第2レースで5kmと10kmの比較的ゆっくりペース、第3レースが5kmと10kmのやや速いペースという組分けになっています。エントリー数は27名で、最も参加者が多かったのが第3レースの10kmでした。
アドバイスを受けられるランニングクリニック
「プロ・フィッツ杯Presented by KYUMIN打破 」では、ただレースを開催するだけでなく、トレーニング方法などが分からず伸び悩んでいる初心者や中級者のために、アップ代わりにもなるランニングクリニックをレース前に開催しています(ランニングクリニック代は参加費に含まれています)。
とてもよく考えられたクリニックで、走力がそれほど高くないであろう3kmの参加者向けのクリニックではシューレースの結び方のコツから教え、ある程度走れる人たちには本格的なドリルを実践するなど、参加して良かったと思える内容になっています。
クリニックを受講することで、自然と体が連動するようにもなっており、キレがある状態でスタートラインに立てます。いつでも走り出せる最高の状態になるので高記録が期待できますし、一方で普段のトレーニングに役立つノウハウを知ることができるので、今後の練習の質も上がります。
もし今後「プロ・フィッツ杯Presented by KYUMIN打破 」に参加することを考えているのであれば、ランニングクリニックの参加はマスト。これを受講しないともったいない。自己流のアップをした時よりも、スムーズな走りを期待できますので、早めに会場入りしてご参加ください。
完璧なペースメーカーが好記録を導く
ペースメーカーがいる大会ですが、最初から最後までペースメーカーに着いていく必要はありません。競技会や記録会という色が強いものの、同時にマラソン大会でもありますので、ペースを上げられると感じたら、それぞれのタイミングで前に出ても構いません。
今回は参加者も少なく、種目やスタート時間が分散したのもあり、10kmのキロ 5分ペース以外は、1〜3人のランナーにペースメーカーが1人付く形になっていました。しかもそのペースメーカーが精密機械のように安定したペースを刻むので、参加者はついて行くだけ。
ちなみにちなみにペースメーカー1人は川内鴻輝さん。大きな背中は後ろについた時の安心感があり、まるでエスカレーターに乗っているかのような感覚で、引っ張ってくれて、後半まで体力の温存ができます。「プロ・フィッツ杯Presented by KYUMIN打破 」ではペースメーカーがいることで、前半飛ばしすぎて後半バテるという、初心者あるあるを回避できるのも魅力です。
実際に自己をベスト更新したという声が何度も聞こえてきましたし、ほとんどのランナーが終盤にペースメーカーを追い抜いて、ラストスパートをかけていました。前半に飛ばしていないから、後半にエネルギーが残っていて、すべてを出し切れたわけです。
もちろん苦しさはありますが、最後にペースアップしてオールアウトできると、苦しさを超える気持ちよさがあります。それを多くの体験したランナーが何人もいたというだけで、このマラソン大会は成功と言えます。
速すぎるランナーの参加をどうするか
大会の方向性もアットホームな雰囲気もとても良かったのですが、気になったのはキロ3分台で走る参加者がいたということです。参加者が少なかったので、追い抜きでトラブルになることもありませんでしたし、大会そのものを盛り上げてくれました。
ただコンセプトが「走力に自信がないランナーが安心して参加できる大会」ですので、キロ3分台のランナーがいるというのは、走力に自信がないランナーにとっては「話が違う」ことになります。速い人がいないから安心して走れると思ってエントリーするわけで、実際に会場に来たらキロ3分台の人がたくさんいると「次はもういいかな」となります。
開催回数が増えて、大会のコンセプトが広まれば速い人たちは自然と自重してくれるかと思いますが、しばらくは速い人が参加してしまうという課題に悩まされることになるかもしれません。手っ取り早いのは参加資格を付けることでしょうか。
- 5kmの自己ベストが24分以上
- 10kmの目標タイムが48分以上
こんな感じで明確化しておけば、想定しているよりも極端に速い人は参加せず、安心して走ることができます。もっとも、こういうことは大会事務局が今後検討していくでしょうから、何らかの対策がされていることを期待しましょう。第1回開催ですので、こういうことがあるのは仕方ないことです。
参加者がもっと増えてもいい大会
今回は27人のエントリーでしたが、内容から考えるとその10倍の参加者がいてもおかしくないイベントです。ただ、申し込み期間が短くて開催していることを知らないという人の方が多かったのでしょう。そもそもターゲットにした層のランナーが、1人で競技会に乗り込んでこないのかもしれません。
自ら競技会に来るようなランナーは、もっと速いペースで走れるようになっています。では「プロ・フィッツ杯Presented by KYUMIN打破 」が無駄なのかというとそんなことはもちろんありません。むしろここはブルーオーシャン。ライバルがほとんどいませんので、継続していけば参加者は自然と増えていきます。
コロナ禍が落ち着いて、マラソン大会が私たちの手に戻ってきて、ランナーの多くが悔しい思いをするようになったら、このような走力に自信がない人向けの競技会は必ずニーズが出てきます。まだ先行きが不安な状況ですので、今回は「まだランナーがその気になっていない」ことが分かっただけです。
実際に各地のマラソン大会も参加枠を埋めるので四苦八苦しているくらいですから、そこまでモチベーションが高くない層をターゲットにするのはちょっと早すぎたのかもしれません。ただすでに開催されたことであり、大事なのは次回に活かすこと。
開催内容もコンセプトも良くて、本音で参加をおすすめできる大会です。自分のポテンシャルを100%引き出してくれるので、「出場しないなんてもったいない」と声を大にして言いたいところ。ただ今は暖簾に腕押し状態。しばらくは寂しい感じが続くかもしれませんが、数年後には参加者で溢れている光景を目にしたいものです。