日本初の垂直階段マラソンサーキット「2022 YOKOMORI VERTICALRUNNING JAPAN CIRCUIT(以下 VJC)」の初戦となる名古屋大会が開催されました。VJCは選び抜かれたエリートランナーが競い合う階段レースですが、初戦となる名古屋大会と第3戦の大阪大会は一般の部も同時開催となり、小さな子どもや普段はあまり運動をしていない大人も出場できます。
RUNNING STREET 365のスタッフも階段垂直マラソンが好きなので一般枠でエントリーしましたが、メディア枠もいただけたので1本は全力で、2本目は撮影しながら走ってみました。大会の雰囲気が伝わるレビューと動画アップしていますので(動画は近日中に)、ぜひ来年の大会もしくは第3戦のエントリーを検討してみてください。
VJCは日本で初めての階段垂直マラソンシリーズ
まずはVJCについて簡単に説明しておきましょう。これまで国内ではあべのハルカスで開催されているハルカススカイランなど全国各地で階段レースが開催されてきました。ハルカススカイランはワールドサーキットに組み込まれており、世界につながる階段垂直マラソンとして人気があります。
ワールドサーキットがあるなら国内サーキットがあってもいいじゃないかということで、主催者の熱い想いにより、2022年から国内サーキットがスタート。まず初年度は名古屋、東京、大阪で開催され、今後さらに会場が増えていく予定とのこと。ちなみに東京はスカイツリーの階段を駆け上がります。
今回開催される名古屋大会は、中部電力ミライタワー(名古屋テレビ塔)が舞台。3大会の中では最も低いレース(90m・415段)ですが、低いから簡単かというとそういうわけではありません。短い距離の中で全てを出し切るスプリント力と強い心肺機能が求められるので、人によっては最も厳しい階段レースになります。
あべのハルカスや東京スカイツリーはフルマラソン。中部電力ミライタワーは10kmのレースみたいなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。それぞれに適性があるので、どちらも強いという選手はなかなかいないいわけです。そこがVJCの面白いところでもあります。
もっとも一般の部は1戦ごとの開催なので、順位やポイントなどは考える必要はなく、いかにしてオールアウトできるのかということが求められます。すべてを出し切る気持ち良さと、限界の向こう側に足を踏み入れることによる消耗。ここでしか体験できない喜びと苦しみが階段垂直マラソンにはあります。
程よい緊張感と盛り上がりに包まれた会場
さてVJC名古屋大会ですが、スタートは中部電力ミライタワーの正面から。そこからタワーの入り口までジョグで移動して、リストバンドで計測機器をタッチしたらスタートです。スタート地点からは階段を上がっている選手の姿が見えるので、自然とモチベーションが上がってきます。
ただ、階段垂直マラソンを走ったことのない人にはそれがプレッシャーにもなります。トップクラスの選手は軽々と登っていきますが、走力に不安がある人は走ることができず、歩いて階段を登ることになり、その姿までしっかりと見えてしまいます。
自分もそうなるのではないかという不安と、未知の領域に踏み込む緊張感。選手は1分間隔でスタートするので、自分の順番がどんどん近づいてきてナーバスになっていく。でもスタートラインでは1人ずつにインタビューがあり、気持ちをほぐしてくれたうえで走り出せます。
このようなご時世ですので、爆発的な盛り上がりというわけではありませんが、通りがかった人が「これは何ですか」と気になるくらいの熱気はありました。ただ「VERTICALRUNNINGって何?」となる人も多く、知名度を上げていくには伝わりやすさも必要になるかもしれません。
ただ、そうやって立ち止まって見てくれるのも屋外のコースだからこそ。東京スカイツリーもあべのハルカスも走っているところは見えません。そういう意味では地元の人たちに存在を知ってもらいやすく、中部電力ミライタワーはVJCの初戦にふさわしい会場でした。
想像以上の苦しさと達成感が得られる
名古屋大会は一般の部もありますが、一般とはいえ参加者の中にはスカイランニングのトップランナーも含まれており、上位はかなりハイレベルな選手が集まっています。もちろん、そのような競技志向の高い人ばかりではなく、会社の先輩に誘われて仕方なくという人もいてハードルはかなり低め。
また、親子の部や小学生、中学生の部もあり、老若男女が集うのかVJCの魅力とひとつです。階段は日常生活の中にある設備で、ほとんどの人が普段から昇り降りしています。ただ、90mもの高さを上ることは非日常。身近にある非日常だからこそ、1度走るとその魅力にハマってしまいます。
そういう私もそのひとりで、ハルカススカイランの前身となる大会に参加してからどっぷりとハマっており、関東から名古屋までたった数分のためにやってきたわけです(しかも2泊で)。ちなみにトップランナーは、中部電力ミライタワーを2分以内に駆け上がります。一般の部だと参加者のちょうど半分の順位の選手が3分13秒。
なぜハマるのかというと、マラソンと違って肺が千切れてしまいそうなくらい追い込み、自分の持っているものをすべて出し切れるから。走り終えたときに呼吸するのが困難になるくらい苦しくて、でもその領域に入ってしまうことには中毒性があり、またそれを体験したくなります。
もちろん、苦しいだけではありません。ただ、走り終えたときに「もっとできたはず」となります。オールアウトしたつもりでも、もっと上手く走れたと思うから、「また挑戦しよう」となり、階段垂直マラソンのループにハマってしまいます。
今回は十分なトレーニングを積めずにスタートラインに立ってしまったのもあり、かなり緊張してしまいました。開き直れるかと思ったのですが、むしろ場の空気に飲まれてしまいました。冷静にと思っていたのに、いざ走り出すと場当たり的な対応になってしまって、やはり後悔が残る結果に。
この悔しさが、さらに沼の深いところに引きずっていく要因になるわけでして……それと同時に限界の先に踏み込んだので、立ち続けることも無理だと思えるほどの疲労感と達成感はあります。マラソンではなかなかこの複雑な感覚は体験できません。
タイムはスマホですぐにチェックでき、現時点での順位も分かります。これは嬉しいサービスです。完走証もスマホで確認。これからの時代はこれでいいような気がしますが、やはり紙の完走証が欲しいという人もいるはずですので、ここは賛否が分かれるところかもしれません。
私の結果は2分56秒。真ん中よりも少し速いくらい。でも順位もタイムもそこまで大事ではありません。階段垂直マラソンで大事なのは、自分が納得したかどうか。もちろん満足していませんので、来年も挑戦することになるでしょう。今度はちゃんとトレーニングを積んでから。
真剣勝負の緊張感が漂うエリートの部
一般の部も上位は緊張感がありましたが、エリートの部は全体がピリついた雰囲気。VJCは選ばれた者だけがスタートラインに立つことができ、選ばれたということへの責任と初戦ということもあり、どのような結果が待っているのかわからない不安が入り混じっているのでしょう。
高い集中力でアップをしており、その目はまさにプロのアスリート。これを上手く配信できたら、注目のコンテンツになりそうな雰囲気が漂っています。ここにノミネートされるくらいの選手ですから、日々のトレーニングもストイックで、こういう人たちがもっと注目される存在になってもらいたいところです。
できれば一般の部の選手が会場に残って、結果を見守りたくなるような。そのためにはコース途中やゴールの映像を表示できればいいのですが、それをするとこういうご時世なので、人が集まりすぎてしまうというのもあるのかもしれません。そういう意味でも、どこでも観れる生配信があると大会の魅力を上手く伝えられそうです。
そのエリートの部は女子の2名がスタートした後に計測器トラブルが発生してしまうという波乱の幕開けとなりましたが、どの選手も集中力を切らすことなく、むしろリラックスした選手もいたようです。こういう経験も選手を強くし、いずれワールドサーキットの上位は日本人ランナーが占めるなんて未来が待っているかもしれません。
ただ、そのためには競技人口が増えていくことが大事で、一般の部からの押し上げがあっての未来です。とはいえVJCはここがスタート。エリートの部という特別な存在ができたことで、そこを目指す人も増えてきて、今後さらに盛り上がっていくことでしょう。
限界の先に到達したいなら大阪大会に参加しよう
階段垂直マラソンはやればハマる競技ですが、その最初の一歩を踏み出すための心理的なハードルが高い競技でもあります。マラソンをメインにしている人にしてみれば、たった数分〜数十分のために、それなりの参加費を払うのも躊躇するかもしれません。
でも、階段垂直マラソンの沼に完全にハマってしまった立場からすれば、ランナーなのにこの競技を体験せずにいるのはもったいないことです。速く走れるだけではタイムを出せませんが、それでもランナーが有利であることには違いありません。
ちょっと勇気を出せば、これまで経験したことのない領域に入り込めるのが階段垂直マラソン。そして、トップアスリートの走りに刺激を受けられるのがVJCの魅力です。階段垂直マラソンで結果を出すためにトレーニングを積むことが、フルマラソンにもフィードバックされます。
実際に私も階段垂直マラソンで良いタイムを出すために、トレーニングに筋トレやジャンプ、階段練習を取り入れたら、ずっとサブ3.5を突破できなかったのに、いつの間にかサブ3を狙えるくらいの走力にまで戻りました。それくらいフルマラソンと相性のいい競技です。
VJCの次回大会はエリートのみの出場になりますが、第3回の大阪大会は一般の部も用意されています。開催は11月6日で、まだエントリーは開始していませんが、今回注目されたことにより、思ったよりも早く参加枠が埋まってしまう可能性があります。
こまめのVJCのサイトやSNSをチェックしておき、エントリーは確定したら忘れずに申し込んでください。私と一緒に人生最大級の苦しみと達成感を体験しましょう。
YOKOMORI VERTICALRUNNING JAPAN CIRCUIT
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