誰が日本で1番早く階段を駆け上がることができるのか。VERTICALRUNNING JAPAN CIRCUIT(VJC)はそれを決めるためのサーキットレース(シリーズレース)です。階段を走るという、この上なくシンプルなこの競技は世界中で人気があり、ワールドサーキットとして世界大会も開催されています。
そんな階段垂直マラソンの国内最高峰の戦い、全日本選手権が東京スカイツリーで開催されました。通常のサーキットでは一般の部もありますが、今回はスカイツリーの10周年に合わせての特別開催ということで、選び抜かれたエリートのみがスタートラインに立ちました。
東京スカイツリー450m・2522段の戦い
VERTICALRUNNING JAPAN CIRCUIT 東京大会は、VJCの第2戦という位置づけですが、東京スカイツリーという特別な舞台で開催されるということもあり、第1回の全日本選手権も兼ねた大会になっています。東京スカイツリーの1階から展望回廊まで、高さ450m、2522段がその舞台になります。
階段垂直マラソンの聖地でもある、あべのハルカスで開催されるハルカススカイランが、高さ288m、1610段ですので、想像を絶する戦いになることは容易に想像がつきます。まさに日本一を決めるのにふさわしい会場です。
ただし、セキュリティの関係などで階段の内部での撮影はNG。ゴール地点も限られたメディアのみ開放でした。さらにスカイツリーの営業時間前の開催ですので、家族など身近な人だけが応援できるという環境です。
マラソン大会のように声援が届くこともなく、さらに選手は2分ごとのスタートになるので、スタートしたらゴールするまで孤独な戦いが続きます。誰も見ていないので、スピードを落としたり歩きたくなる気持ちを抑えて、ストイックに上へ上へと目指す。
途中に2ヶ所、ゴールに1ヶ所だけカメラがあり、選手が通過するときの姿をスタート地点で見れるようになっているのですが、とにかく苦しそうな選手もいれば、淡々と上っていく選手もいます。そしてゴールで倒れ込む選手たちの姿から、エリートランナーが特別な才能を持った人たちでないことが伝わってきます。
トレーニングを積み重ね、そして私たちが「ここが限界」と思っている領域を突き破っていける人だけが、階段垂直マラソンのエリートになれるわけです。後日、乙武洋匡さんと三津家貴也さんの解説によるレース動画がYouTubeが配信されるとのことなので、ぜひその姿もチェックしてみてください。
YOKOMORI VERTICALRUNNING JAPAN CIRCUITチャンネル
渡辺良治・立石ゆう子が初代全日本チャンピオンに!
階段での戦いについては見えない戦いでしたので、ここでお伝えすることはできませんが、男女上位3名のリザルトを掲載しておきます。
VJC 東京大会・男子
1位 15分39秒58:渡辺 良治
2位 16分25秒04:加藤 聡
3位 16分44秒70:遠藤 直弥
VJC 東京大会・女子
1位 19分10秒50:立石 ゆう子
2位 19分51秒66:沢田 愛里
3位 21分47秒80:陣在 ほのか
全日本バーティカルランニング選手権・男子
1位 15分39秒58:渡辺 良治
2位 16分25秒04:加藤 聡
3位 16分36秒91:高村 純太
全日本バーティカルランニング選手権・女子
1位 19分10秒50:立石 ゆう子
2位 19分51秒66:沢田 愛里
3位 21分47秒80:陣在 ほのか
VJCは選ばれたエリートのみが対象ですが、全日本バーティカルランニング選手権は、5月21日に開催された名古屋大会の一般の部で出場権が付与された選手(男子3名・女子1名)も対象となっており、男子3位に名古屋大会で結果を出した高村純太さんが入っています。
エリートだけでなく、一般のランナーにも門戸が開かれているのが全日本選手権の素晴らしいところ。今回のように一般の部からの入賞という流れがエリート選手の刺激にもなり、国内の階段垂直マラソンの底上げにもつながっていくはずです。
ただ男子も女子も優勝者は、実力者である渡辺良治さんと立石ゆう子さんという結果に。圧倒的王者感がありますが、そのことが他の選手にとっての目標やモチベーションになっているため、今後のワールドサーキットでは多くの日本人選手が活躍することが期待されます。
階段垂直マラソンはまだまだマイナーな競技ですので、世界で活躍するチャンスはすべての人にあります。マラソンのタイムが遅くても、淡々と上っていけるスキルが備わっていれば、エリートに負けないタイムで駆け上がれて、そして全日本選手権という舞台で競い合える可能性があります。
ほんの少しでも気になったなら、それもひとつの適性です。日々のランニングで手に入れた体力や忍耐力を活かすためにも、ぜひ階段垂直マラソンの世界に足を踏み入れてみてください。きっと想像以上の感動が得られるはずです。
苦しさを共有するから仲間になれる
VJCは選ばれたエリートランナーのための大会であり、多くの人にとっては「観る」競技になります。しかも選手は階段を走っているので、走っている姿を直接見れるわけでもありません。ただ、会場では緊張感や熱気のようなものを感じることはでき、名古屋大会と大阪大会は一般の部として参加できます。
この大会の最大の魅力は、苦しみを共有できるということ。エリートランナーはすでにひとつのチームになっており、ライバルでありながらも、想像を絶する苦しみを共有しているから、ファミリーとしての絆が生まれます。タイムや順位だけでなく、それぞれがオールアウトしたことを讃えあえる。
ただそれはエリートランナーだけに与えられた特権ではなく、私たちも一般の部に参加することで同じ体験ができます。一緒に出場する仲間がいれば、その苦しみを共有でき、それがお互いの関係をさらに密なものにしてくれるわけです。そんな経験ができるの競技はそう多くありません。
2022年のVJCはまだ大阪大会を残しており、一般の部も募集しています。ぜひ、仲間と一緒にエントリーしてみてはいかがでしょう。苦しいのは嫌かもしれませんが、それを上回る達成感や感動、そして仲間との大切な思い出ができます。
もちろん単身での参戦もOK。大阪大会はウェーブスタートになるはずなので、競い合いながらゴールを目指すことで仲間意識が生まれるかもしれませんし、それがなかったとしても、マラソンにはない短時間でオールアウトする気持ちよさを体験できます。ぜひ限界の向こう側に足を踏み入れてみてください。