日本一早いマラソンレポート「セプテンバーえきでん2023」

9月というのに一向に夏の勢いが収まらない大阪淀川の河川敷で開催された「セプテンバーえきでん」。RUNNING STREET 365でも何度か取り上げたことのある完走メダルを飾るアイテムを販売しているランレコードのチームで出店&参戦してきました。

とても厳しいコンディションではありましたが、鍛えられたランナーたちが大勢集まる駅伝大会ということで、参加者は暑さも含めて楽しみ、大会会場は終始活気に満ちていました。今日はそんなセプテンバーえきでんについてのレポートをお届けします。

目次

セプテンバーえきでんとは

大阪のランナーでも「セプテンバーえきでん」の存在を知らない人がいるかもしれません。セプテンバーえきでんはKBS京都などでラジオパーソナリティをしているフリーアナウンサーの若林順子さんが主宰するランニングクラブ「わかちゃんFRC」主催のマラソン大会になります。

今回の会場となったのは守口市を流れる淀川の河川敷。5人1チームで変速周回コースの5区間(1区5km・2区3km・3〜5区4km)を走ります。参加チーム数を正確に把握していませんが約60〜70チームが集う大会になります。

今年の大会には千葉ちゃんこと千葉真子さんもゲストランナーとして駆けつけ、自身も2区を走ってランナーに声をかけています。全体的に手作り感がある大会ですが、今年で19回目の開催ということもあり、手作り感があるけど運営はかなりしっかりしている感じが伝わってきます。

ゴールした後にチームメイトとウイニングラン&ゴールテープカットができるなど、「こうだったらいいのにな」という若林さんやわかちゃんFRCスタッフの想いが形になっていて、ただ速さを競うだけではないランニングを純粋に楽しめる大会となっています。

気温が35℃あるというアナウンスの意味

1区のスタート直前に「どうしようかな……」から始まる若林さんの言葉に、この大会のすべてが詰まっていたように感じます。スタートとなる10時の段階で気温が35℃あり、それを伝えるかどうかを迷っていたようです。

35℃というのはとてもレースに適した気温ではなく、場合によっては中止にしてもおかしくない状況です。それをランナーに伝えるリスクは大きく、もし熱中症で倒れる人が出て救急車騒動にでもなると、炎上する可能性もある告知です。

でも、若林さんは「ここの参加者なら伝えることでそれぞれ自制してくれる」と考えたのでしょう。私は初めての参加でしたが、多くのチームがリピート参加であり、若林さんやわかちゃんFRCとの信頼関係ができている。だから伝えることで参加者は無茶をしないでくれると判断したのだと思います。

実際に誰も倒れることなく、大会は無事に終わりました。100%手放しで称賛できるわけではありませんし、気温が高い中での開催をどうするかは、マラソン業界全体で考えていくことになる課題で、将来的には「開催してはいけない」ことになるかもしれません。

でも現時点では気温が高い中で開催するかどうかは主催者に委ねられています。今回は1人ずつの距離が短いというのもありましたが、ゴール後には1人ずつに氷の入った袋が用意されており、「開催できる」と判断したわけです。

ただ、気温を伝えることでリスクを下げる。それができる人たちが集まっているという信頼関係。とても愛されている大会、愛を込めた大会なんだということがしっかりと伝わってきました。当然ですよね19回も続いているわけですから。

35℃の気温の中を走るということ

そんな高温の中を走ることになったのですが、私に与えられた役割は第1走者の5kmという距離。いろいろあって体重が増えており、走力も驚くほど低下している状態で気温35℃。真夏の昼間に走るようなトレーニングもしていないので不安要素しかありません。

スタートから抑え気味に入ったのですが、それでも最初の1kmが4分ジャストくらい。思った以上に動けるのかもと思ったのもつかの間、体全体が痺れる感覚がありそこから思い切ってペースを落としました。先日開催された北海道マラソンで痙攣で倒れている人を救護しているのもあり、「これは危険」と判断したわけです。

もちろん若林さんが35℃もあることを教えてくれたのも影響しています。それを聞いていなかったら無理やりペースを維持していたかもしれません。チームメイトに迷惑をかけてしまうなという思いも頭をよぎりましたが、ここで倒れたらもっと迷惑がかかります。

そこからまずはキロ4分30秒まで落としたものの、心拍数がずっと180以上もある状態。なのでさらにペースを落として、最終的にはキロ5分までペースを下げたのに心拍数はむしろ上がっていきます。これが35℃の気温を走るということなのでしょう。

本来ならペースを落とせば心拍数は下がるものです。でも気温を高くて体温も上がりっぱなし。そういう状態だとペースを少し落としたくらいでは心拍数は下がりません。これが駅伝でなければ間違いなく歩いていました。

そして誓いました。気温が高い日には追い込むような走りはしないと。ただ、ここまで気温が高くなるとわかっていれば手のひらを冷やしながら走ったり、水を持って走ったりと対策はできたはずです。なのできちんと備えていなかった自分に問題はあります。

ランナーを過保護にしないけど参加者を大切にする大会

最近はどのマラソン大会も熱中症対策などを大会側がしていたりして、ドリンクを配ったり、エイドを充実させたりしています。ところがセプテンバーえきでんにはエイドもなく、ドリンクは自分ですべて用意しなくてはいけません(河川敷なので水道はある)。

ランナーを過保護にするならエイドがあったほうがいいですし、ここまで気温が高いならホースを使ってコース場に簡易シャワーを作るということもできます。でも、それをしないのは「ランナーたるもの強くあれ、賢くあれ」というメッセージが込められているような気もします。

確かに過保護な大会は大会全体の満足度は高くなります。それなりの規模のマラソン大会ですと、過保護でないと評価がとても低くなり、場合によってはSNSで炎上することもあります。だから過保護にしたほうが運営側にもメリットがあります。

でも、それってランニングの本質とは少しズレていると感じている人もいるはずです。私たちは自分を成長させたくて走っているはずです。これまで超えられなかった壁に挑むために走っているわけです(それだけではありませんが)。過保護な大会はその成長を阻害している可能性があります。

今回のようなコンディションでもみんなしっかり走り切れたのは、「セプテンバーえきでん」がこれまでランナーを過保護にしてこなかった結果ともいえます。偶然ではなく必然。過保護にしてこなかったからランナーがそれぞれ自分で考えられるようになっているわけです。

では「セプテンバーえきでん」が参加者を大切にしていないかというとそうでもなく、参加賞は充実していますし、飛び賞では1万円以上するようなアイテムが、チーム全員に配られるなど、誰にでも喜びのチャンスを与えてくれます。

すでに書きましたように、チーム全員でゴールできるようにしていたり、走り終えた人に氷を配っています。いろいろ配慮できるし、きっとこれまでに何度も議論されてきたのだと思います。それで今のスタイルが確立しています。

そういう意味ではとても稀有な存在なのかもしれません。きちんと自分たちのブレない軸があり、それでいて参加者には最大限の愛を注ぐ。理想のマラソン大会の姿のひとつがそこにある気がします。もちろん、これだけが正解というわけではなく、まだまだ完成形でもないのでしょう。

そういう意味では5年後10年後が楽しみな大会でもあります。正直なところマラソン大会に過保護さを求める人にはおすすめはしません。でも強いランナー、賢いランナーになりたいならラン仲間を集ってでも参加する意味のある大会です。

もちろん純粋に仲間との襷リレーを楽しむだけでもいいのですが、これから8月や9月に開催されるマラソン大会は気温が35℃以上になる可能性があり、とても楽しむだけでは済まないというのも事実。来年以降に参加を考えている人は、チーム全員で暑さ対策をしっかりと行うようにしてください。

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