日本一早いマラソンレポート「第61回 愛媛マラソン」

61回目となる愛媛マラソンが開催されました。昨年の第60回記念大会をひとつの節目とした感があり、ここからまた新しい歴史を刻むという強い意志が感じられる大会になっていて、受付会場を変更するなどの新しい試みも行われた今大会。

前日の愛媛新聞では雷雨や雹などの荒天が予想され、場合によっては中止するといった記事が掲載される状況の中で無事開催された第61回大会を実際に走ってきた内容をレポートします。参加を検討しているという人はぜひ参考にしてください。

目次

新しい一歩を踏み出した愛媛マラソンで変わったこと

大会の申込みをして、最初にいつもと違うことを感じたのが、受付会場を南海放送のホールから城山公園になっていたことです。これまで南海放送で受付をして、城山公園で参加賞をもらうという流れでしたが、今回はすべて城山公園で完結します。

これが今回だけなのか、それとも恒久的な変更なのかはわかりませんが、ランナー側にしてみれば、受付会場と参加賞をもらう場所が違うのは「なんで?」となっていたので、これで良かったのではないかとは思います。

動線など検討すべきポイントはありますし、雨が降ったときの本当に城山公園でいいのかという問題はあります。でも新しいことにチャレンジするときに、ある程度のリスクは当然ともないますし、それを新しい課題にすればいいだけのことです。

他にも日本初のタイム入りNFT完走証を発行・配布するという試みも実施されました。これに関してはそこまで周知されていなかったので、おそらくまだ存在について気づいていない参加者もいるかもしれません。NFT完走証はX(旧Twitter)でシェアできるようになっており、完走証明の新しい形として定着しそうです。

さらにSNSでの情報発信もこれまで以上にしていた感じがあり、一体感をとても大事にしているようにも感じました。受付票が届いていないというSNSの声に対して、1件ずつ対応するのではなく書き込み用のシートを作成して、そこ記載できる仕組みを作って発信するというのは、ランナーに寄り添う形で素晴らしい判断でした。

さらにゲストランナーも充実しており、今回はまったく新しい試みとして競歩の選手がリレーで42.195kmを最後尾スタートするといったチャレンジも実施されました。もちろん高橋尚子さんのハイタッチも健在で、例年は優しいタッチのハイタッチが定番でしたが、今年は高橋尚子さんから強めのタッチをしているようでした。

予報は外れたけど難易度の高いコンディション

いかに愛媛マラソンの事務局が新しいことをしても、マラソンそのものが魅力的でないと意味がありません。そういう意味では、今回の愛媛マラソンは天候に悩まされた1日となりました。そもそも前日に「落雷や雹のおそれがあり、中止するかもしれない」という記事が愛媛新聞に掲載されました。

しかもずっと雨が降らずに、渇水状態が続いて取水制限も実施される可能性があるなど、とにかく晴れが続いた松山市に雨が降るとのこと。ところが蓋を開けてみたら、スタート前の会場は太陽が顔を見せており、ポカポカ陽気の雰囲気が漂います。

これによって、防寒具を置いて走り出した人もいるはずです。それなのにスタートの号砲の直前になってポツポツ降りはじめて、号砲直後はしっかりとした雨になります。待機時間にレインコートやポンチョを脱いだ人は、想定外の寒さに体が動き出すのに時間がかかったかもしれません。

でも、そんな状況も長く続かず、今度は気温がどんどんと上がっていきます。ポンチョなどを着ていた人がゆでガエル状態になっているわけです。私もビニールの簡易ポンチョを着ていましたが、かなり汗をかいてしまいました。

脱げばいいじゃないかと思うかもしれませんが、12時以降に強風になるという予報で、後のことを考えると脱ぐに脱げないわけです。案の定、後半はかなり風が強くなってきて、体温を奪われた人も少なかったはずです。

実際に今回の完走率は86.75%で、この10年で最も完走率が低いレースになってしまいました。もちろんコンディションだけが完走率の低さにつながったわけではありませんが、まったく無関係ともいえません。それくらい、猫の目のようにコンディションが変わったわけです。

沿道の応援が途切れない理由

愛媛マラソンはもう10回以上参加しているような気がしますが、参加者にとって最大の魅力は沿道の声援が途切れないことにあると感じています。その中でもこれまで最大の声援だったのが川内優輝選手が走った年でしたが、もしかしたら今年はそれを超えたかもしれません。

コンディションが悪いにも関わらず、本当に途切れることもなく、しかもとにかく声が出ているわけです。声援があるマラソン大会は他にもいくつかありますが、愛媛マラソンがそれらの大会とまったく違うのは、知人以外に対しても声援を送ることにあります。

とにかく頑張っている人に対して、全力で声援を送る。その声援に対して「ありがとうございます!」と応えようものなら、後ろに続く人に対して、さらに大きな声で声援を送るわけです。そして学生ボランティアスタッフも全力で声援を送ってくれます。

そもそも愛媛マラソンの沿道に、これだけの人が集まるのは愛媛マラソンが松山を中心とした愛媛県内に文化として根付いているためです。知事や市長が自分たちもランナーとなって大会を盛り上げて、年に1度のお祭りにしたから、市民もみんな一緒になって楽しむわけです。

その結果、親族の誰かが走り、職場の誰かが走り、ご近所さんの誰かが走るという構造ができあがり、知っている人が走るなら応援に行こうかということになるわけです。そして知らない人に対しても声援を送るのは、お遍路文化が根づいているからなのかもしれません。

個人的な感想ですが、愛媛県の方は外から来た人に優しいように感じます。実際にお遍路をしたことがあるのですが、愛媛はとにかく居心地がいい場所だったのを思い出しました。本物のおもてなしがここにはあり、それが愛媛マラソンの魅力に繋がっているような気がします。

何度でも走りたくなるマラソン大会のひとつ

ちなみに愛媛マラソンのコースは難コースのひとつで、大きな坂が1箇所あり、さらには小さなアップダウンが続いて、ペースが安定しないといった難しさがあります。そして風に悩まされない年はないのではないかと思うほど風が吹きます。

愛媛マラソンの折り返しとなる北条地区は「風早」という地名が残っており、この時期に関係なく風が吹きます。そして実際に今年も風が多くのランナーの足を止めることになりました。そこにアップダウンが加わって自己ベスト更新を狙うには不向き。

さらにスタートしてから1.5kmくらいは道が狭く、ブロックによっては5kmくらいまで渋滞した状態が続きます。私は今回Aブロックでしたので、道が狭いエリアを通過後にはストレスなく走れましたが、スタートの渋滞が記録狙いの難易度を上げることになります。

ただ、先程もお伝えしましたとうに、とんでもないボリュームの声援に背中を押してもらえます。さらにホスピタリティに満ちていて、足りないところがひとつもないと思うほど満足度の高いマラソン大会になっています。

もちろん道後温泉や松山城といった観光スポットもあり、ちょっと足を伸ばせばしまなみ海道でサイクリングなんてこともできます。そして新鮮な魚介類が豊富で、都市部からやってきた人からすると、もうヤミツキになる要素しかありません。

だから地元の人も県外の人も1度走るとリピートしてしまうのが愛媛マラソンです。おそらく今回のリスタートにより、さらに高い評価を受けることになり、抽選の倍率が上がるはず。それでもランナーなら1度は走っておくべき大会のひとつです。まだ走ったことのない人は、ぜひエントリーしてみてください。

愛媛マラソン:https://ehimemarathon.jp

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