日本一早いマラソンレポート「静岡マラソン2024」

スタート直前の気温が6℃、ほぼ無風の快晴というナイスコンディションで開催された静岡マラソン2024。あまり天候に恵まれないイメージがあった静岡マラソンですが、今回の大会を観戦してみてわかりました。静岡マラソンは記録も狙えるし、ランナーなら応援ランも楽しめる魅力的なマラソン大会です。

ただ、声援が途切れないというわけでもなく、すべてのエリアで絶景が広がるわけでもありません。その代わり、マラソンの喜怒哀楽がすべて詰まっており、アクセスしやすい都市マラソンでありながら自然の雄大さも感じられます。そんな静岡マラソン2024がどんな大会だったのかレポートしていきます。

目次

コースはフラットで記録を狙うには最適な大会

静岡マラソン2024の観戦に行くと決めて、スケジュールを調べたところ、スタート時間が8時20分。気温が高くなりやすい海外の大会では6時スタートとかもよくありますが、国内の1万人規模の大会で8時台の前半にスタートする大会は珍しいところ。

ただスタートエリアが静岡駅から徒歩圏内ということもあり、しかもゼッケンは自宅に送付してくれるので、新横浜から始発に乗れば関東から日帰りでも参加できてしまいます。ただ、記録を狙っての参加なら静岡駅周辺に前泊したほうがいいかもしれません。1〜2時間多く寝れるのは大きなアドバンテージになります。

「記録を狙って」とお伝えしたのは、静岡マラソンのコースはかなりフラットで、コンディションによっては自己ベスト更新を狙える大会だからです。最大高低差は30m未満で、スタートエリアの標高が20mですので、全体としては緩やかな下り傾向にあります。

実際にスタート地点から27km地点までショートカットして、そこからコース沿いを走りながら観戦しましたが、感覚的にはほぼフラットです。実際には多少のアップダウンはありますが、ベタフラットは退屈になりやすく、集中力を維持するのにちょうどいいアップダウンになります。

そして今年は準ベストコンディション。スタート時の気温は10℃以下で無風。これで曇り空なら完璧でしたが、この日は雲ひとつない青空。2時間台で走るランナーなら太陽に照らされる時間が短いので、ベストコンディションだったかもしれません。でも4時間以上かけて走るランナーにとっては暑く感じたかもしれません。

とはいえ100点満点のコンディションというものはほとんどなく、今年の静岡マラソンは間違いなくナイスコンディションでした。もちろん、景色やエイドを楽しみながら走るという人にとってはベストコンディション。私も結局20kmくらい走りましたが、かなり気持ちよく走れました。

エイドと救護所が充実していて安心して走れる

静岡マラソンの名物は「イチゴ」です。静岡ってイチゴが名産なの?と思うかもしれませんが、マラソンコースにもなっている久能山エリアはイチゴの名産地のひとつで、沿道沿いはいちご狩りのできる農園がいくつもあります。私は応援ランしながらパックのイチゴを買ったり、イチゴのクレープを食べたり。

そんな静岡のイチゴは2ヶ所のエイドで出てきます。他にも静岡おでんのエイドもあり、静岡らしさを楽しめます。そして何よりも素晴らしいのが富士山と伊豆半島が目の前に広がる駿河湾の景色。これだけで走る価値があるくらい素晴らしい絶景がランナーを待っています。ただし、これも快晴だからこそ。

静岡はそもそも温暖な地域ですので、3月には春の訪れに合わせて天候が安定しにくい傾向にあります。せっかくのエイドも風景も、天気が悪いとまったく楽しめませんし、晴れると気温が20℃を超えてしまう可能性があります。今年は晴れていましたが気温は12℃ちょっと。

景色基準で考えれば、今後ここまでいい条件が揃うことはそうそうないかもしれません。景色は天気次第、天気は運次第ですので、ベストコンディションになるまで何度も挑戦しなくてはいけないかもしれませんが、そうしてでも快晴の静岡マラソンを走ってもらいたいところです。

そして、コース沿いを走っていて気付いたのは、救護所がかなり多いように感じたことです。後で調べたところ、スタートからフィニッシュまでに15ヶ所も救護所が設置されているとのこと。それに加えて10ヶ所にAEDが設置されており、もちろん自転車の救護部隊もいます。

過去に何があったのかはわかりませんが、この救護体制はかなり手厚いのも静岡マラソンの魅力かもしれません。フルマラソンは身体への負担も大きく、レース中に生死に関わるトラブルが起きることもあります。それを100%回避することはできなくても、ここまて救護体制が整っていれば安心して出走できます。

道を渡れなくて困っている人が多数いたのは心苦しい

静岡マラソンを観戦していて気になったのが、道路を渡れずに困っている人がかなりいたということです。これは静岡マラソンのようなワンウェイコースで避けることが難しい課題のひとつで、迂回するのに何キロも移動しなくてはいけなくなる場所もあります。

それがマラソン大会だと言うのは簡単ですが、地元の人たちの支持があってこそのマラソン大会。道路を渡れなかったことで取り返しのつかないことが起きないとも限りません。そうなってから議論するよりも、現状で何か手を打ったほうがいいかもしれません。

なぜそんなことが起きるのかというと、静岡マラソンがまだ静岡市内でそこまで認知されていない、もしくは受け入れられていないことが原因のひとつのような気がします。70万人都市なのですべての人に大会開催を知らせるのは難しいのはわかりますが、もっと多くの人に「今日はマラソン大会」を認知してもらう必要があります。

それに合わせて、本当に今のコースでいいのかという問題もあります。ワンウェイコースは長時間広範囲にわたって道路を封鎖します。コースは考えに考えて決めたこととは思いますが、渡れない人に対する何らかのフォローはあったほうが親切です。

たとえば大阪マラソンや東京マラソンは自転車で道路を渡れない人に対して、自転車を運んでくれるスタッフを配置しています。そもそも歩道橋や地下道が少ない静岡マラソンのコースで同じことが有効かどうかはわかりませんが、「道路を渡れない人ゼロ」に向けて何らかの動きをすることで、もっと良い大会になる気がします。

折りたたみ式の簡易歩道橋みたいなものがあって、全国のマラソン大会で共有できるのが理想なんですが、そんなに簡単な話ではないでしょう。ですのでとりあえずランナーとしては、多くの人に迷惑をかけていることを忘れてはいけないと改めて思わされた1日でした。

天気に影響されない大会になれるかどうか

沿道沿いを走りながら「こんなコンディションなら走ってみたい」となりましたが、「これが冷たい雨だったら」と想像すると、少し寒気がしたのも事実です。大抵のマラソン大会は天候で印象が変わるものですが、静岡マラソンは景色のよさが大きな魅力のひとつなので、雨が降ると大きなマイナスになります。

声援も静岡駅周辺や清水駅周辺では多くの人が沿道を埋め尽くしていましたが、海沿いなど応援に行きにくい場所はひたすら自分と向き合うことになります。それもマラソンの一部なので、ベテランランナーなら黙々と集中して走れますが、そうでないとさみしく感じるかもしれません。

沿道の人がまばらというのも、やはり静岡マラソンがまだ市民権を得ていないということが背景にあるような気がします。とはいえ第1回大会が2014年で、コロナ禍があって今年は5年ぶりの開催。まだ文化として定着するには歴史が浅いわけで、定着していくのはきっとこれからです。

今年は静岡市長もフルマラソンを走ったようで(以前がどうだったかはわかりませんが)、地元をあげて大会を盛り上げていく覚悟も感じられました。ただ、ここから先は景色以外の魅力も充実させて、もっと個性のある大会になる必要があります。

おそらく大会事務局は現時点でも「静岡らしさ」を考えに考えて、限られた予算の中で大会を作り上げたこととは思いますが(それはしっかり伝わってきます)、今シーズンは多くのマラソン大会が「過去にとらわれないチャレンジ」をしており、ワンランク上の魅力を提供しようと試行錯誤しています。

そんな中で静岡マラソンが選ばれる大会になるには「現状維持」では足りません。大きな魅力と可能性を感じた大会だからこそ、そこからさらに飛躍するために、次の一手に期待したいところです。少なくとも来年は快晴を期待して、静岡マラソンにエントリーしてみようと思います。

静岡マラソン:https://www.shizuoka-marathon.com

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